読書とかいろいろ日記

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『和僑』 安田峰俊

2013年07月19日 | 読書日記
和僑  農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人
安田峰俊
角川書店(角川グループパブリッシング)

¥1,800+税 角川書店 2012/12/15発行
ISBN978-4-04-110305-0

「中国の田舎に住んでるけど質問ある?」

2チャンネルに投稿されたスレッド。
雲南省の少数民族自治区で暮らす日本人からの投稿だった。
閉鎖的でよそ者を拒絶する辺境の村で、妻の家に暮らし、ふたりの子をもうけて幸せに暮らすという日本人をさがして、著者は中国に向かう。

ほかに、マカオをはじめ世界をまたにかけた風俗嬢、上海日本人街のビジネスマン、その上海で日系暴力団を組織するやくざ、etc...

在中日本人たちを取材することで、日本以上に(古き)日本的な社会の存在を浮き彫りにする。

なかなか読み応えありました。
ただ、ひとつ不満なのは、「和僑」の定義。

> この単語がもともと「華僑」という単語をもじって発明された以上、特に中国に渡った日本人を指す言葉として使うのがより妥当な用法とも思える。(27頁)

いや、世界中に散らばる中国人を華僑と呼ぶんだから、中国に限らず地域限定なしで海外に暮らす日本人を和僑と呼んでいいでしょう。
そのなかで特にこの本では中国大陸をターゲットにしてます、ってだけでいいと思うんですけどね。

 

マカオの金持ちも、風俗嬢も、上海ビジネスマンも、やくざも、どの章を読んでも興味深いけど、なかでもいちばんおもしろいのはやっぱり、「中国の田舎に住んでるけど質問ある?」のヒロアキさんだな。

> 「現地の生活者として正直に言うなら、都会の学生とか海外の人間とか、事情のわかってない連中が余計なことを煽るんじゃねえ、と思いますよ。[…]ひとまず平和な現状が維持されていくためには中国は一党独裁体制のままの方がいいと思います」(311頁)

> 「正直なところ、日本よりも中国の方が自由で暮らしやすいんですよ。のびのびとできて」(317頁)

うううーん。
そんなものかもしれないなあ~~。

あと、目を引かれたのが以下の言葉。

> 「日本でワーキングプアやフリーターだった人は、上海に来てもやっぱりワーキングプアで不安定なんだ。でも、それでも上海でなら、日本人である限りは何となく生活できちゃうのも確かだし、一概に悪いとは言い切れないけどね」(160頁)

日本語フリーパーパーなど日本人向けのビジネスを営む現地企業の営業職、コールセンターの日本語担当スタッフなど、日本語能力が必要だけれどそのほかのスキルはほとんど必要なく、中国語の会話能力すらさほど要求されない、だから身につかない。雇用環境は不安定。
そんな日本人も、中国にはいっぱいいる。

日本以上の格差社会。
そりゃまあ、中国という国自体が格差の国なんだから、そこに住んでりゃそうなるよな。
それでも本人がそれなりに満足できてるならそれでもいいかも。
「海外で働いてる」ってだけで、実態を知らない人たちは感心するだろうし。

そして実際のところ、私の関心はどっちかっていうと、こういう人に向かう。
格差の上じゃなくて、下の方の人たち。
彼らがどうやって暮らしているのか。どういうコミュニティで、どんなコミュニケーションをとっているのか。
……が、知りたい。


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