対話と傾聴を通じた経営力再構築伴走支援を推奨していますが、「傾聴型ギャップアプローチ」ではなく「問題点検型アプローチ」を使わなければならない場面もあるのです。
どうもkurogenkokuです。
たくさんのご相談を受けていますが、スポットで終わるものもあれば、相当力を入れて踏み込まないと経営破綻に陥ってしまうような案件もポツポツ寄せられます。ポスコロや405事業を活用し、経営改善が図れる見込みがあればよいですが、kurogenkokuのところにいらっしゃるのは、ポスコロや405事業の自己負担分すら賄えず、支援が受けられない先です。
先日、「経営改善計画の策定希望」の相談があり、さすがに無償とは言えないので、ポスコロ事業の活用など検討しようか迷いましたが、決算書を見て、支援施策を使うのは辞めました。無償でやります。
多額の借入金があるにもかかわらず、営業キャッシュフローは大きくマイナス。この3年で手元資金を大きく減らしていました。
前期決算から3か月経ちましたが、融資も受けられないのに、まだ事業を続けられていた。常識的に3か月持ちこたえることが不可能なのに、いま目の前の相談にいらっしゃるのが不思議に思い、「すみません、どこからか資金調達していないと、会社が存続できていないと思うのですが」と問いかけると、親族外の元役員から「絶対に返済する」という条件で借入をしていました。
このような状態ですから、落ち着いて「経営改善計画をつくりましょう」なんて言っている場合ではありません。金融機関に条件変更の申し込みをするにも、営業キャッシュフローのマイナス分をプラスにもっていかないと、その交渉すら無理です。ですからまずは社長に倒産する可能性が高いことをお伝えしたうえで、生きるか死ぬかの覚悟を決めていただきました。
数字が読めない社長です。でもいまさらそんなこと否定したって仕方ありません。数字が読めないなら、こちらから説明していくしかないです。
「社長、御社が生き抜くためには、年間●●●●万円のキャッシュを止血しなければいけません。年間●●●●万円といっても金融機関分の返済は含めていません。ここにめどが立つようであれば、経営改善計画をつくって金融機関に対し条件変更の交渉に入ります。めどが立たなければ、弁護士さんを紹介します。社長は金融機関に個人保証をされていますから、会社が破綻した場合、元役員さんへの約束は果たせないことをまずお伝えしておきます。」
いきなり社長が汗をかき始めました。それはそうだと思います。数字に気づかない社長にはじめて、現実を認識していただいたのですから。
「ではいまから●●●●万円のキャッシュを止血する方法を考えていきましょう。考え方としては、経費を削るか、売上(利益)を増やすの2点です。」
社長がこんなことを言いました。
「役員報酬をいまより●●●万円下げます。あと高齢の従業員をパートタイム契約に変更します。」
確かに大切なことです。でもそれが必要十分条件を満たしていないことに社長は気づいていません。
「社長、いまのお話で削減できるのは●●●万円です。まだ●●●●万円の半分にも達していません。そのほかどうしますか。随分高い家賃も支払っていらっしゃるみたいで。家主さんにお願いしてみてはいかがですか。」
「過去に一度、交渉したことがあるのですが、家主さんが良い顔しなくて、追い出されるかもしれません。」
「過去は過去、今は今です。もう背水の陣なのだから、ダメもとであったたらいかがですか。いずれにせよ、倒産したら追い出されますよ。」
仮に家賃の減額交渉に成功したとして、それでも全然キャッシュが足りません。
「継続的に取引している先がありますよね。値上げ交渉ってされましたか。」
「一度、●%は上げていただきましたが、それ以降、言い出せなくて。」
「適正な値上げってできていないのではないですか。もう一度、交渉してください。」
社長が、「なかなか難しいと思いますよ」なんて言うものですから、「価格交渉ハンドブック」と「見積書様式」を紹介させていただきました。
■中小企業・小規模事業者の価格交渉ハンドブック
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/pamflet/kakaku_kosho_handbook.pdf
■価格交渉の申込み様式
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/index.html
※ホームページの中段の「コスト費目別価格交渉フォーマット(例)WORD形式」がダウンロードできます。
ここまで示しても、自信のなさそうな社長です。最終的に、事業が継続できるかどうかは社長次第です。最後にこんなメッセージを伝えました。
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はっきりいって社長は甘いと思います。役員報酬をはじめ人件費にメスを入れるのは素晴らしいです。でもそれだけでは全く足りないということを自覚してください。とにかく御社には時間がないんです。やるべきことはひとつだけ。●●●●万円のキャッシュを止血する方法を考え、それを実行するだけです。
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嫌われることなど恐れずに、言わなければならないことはしっかり伝えました。
そして、社長とは10日後にもう一度面談することにしました。社長自身に経営改善の取組みをいろいろと考えていただき、それらの積み重ねで「●●●●万円のキャッシュが止血できるか」を検証します。
本当に実現可能性があれば、経営改善計画に落とし込んで、金融機関と条件変更の折衝をしますし、実現性がなければ弁護士委任の方向にいくだけです。
実は同日、悲しいお知らせを耳にしました。
本件と同じような境遇にいらした別の社長が先月、命を絶たれたというのです。その方はもう半年以上前にご相談にいらしたのですが、計数管理に弱く、危機感をあおっても、あまりピンと来ていませんでした。この状態で「お金を貸してくれ」といったところで、金融機関は首を縦に振らないでしょう。それでも社長は金融機関が何とかしてくれると思っていました。だから「●●に取り組んでください」とだけ助言させていただきました。その社長はついに相談会に顔を見せなくなりました。
こういう事例を少しでも減らさなければなりません。