先日、昨年にコロナ禍で中止・延期となりました第60回つばき展と関連行事の開催告知をご案内いたしましたが、案内の記事を作成する準備をしながら「今年は何とか開催できそうかな」と少し安堵していたときに、ふと椿の花びらを使った染色ができないかと頭に思い浮かびました。
拾ってもよさそうな椿の花が落ちていたら挑戦してみようと考えていましたら、梨木神社の境外にある京都御苑との間の散策路に赤色の藪椿の花がたくさん落ちており、染色に使いたいので少し拾わせていただきたいと本殿に参拝して、きれいな花を少しだけ持ち帰りました。
持ち帰った椿の花は花芯を取り除き、基部でひっついている5枚の花弁を1枚ずつちぎって、ごみや汚れを取り除くため水洗いしました。持ち帰った花弁だけの重さを量ってみると、ちょうど60グラムでした。
(水洗い後のつばきの花弁)
そして、花弁を水に入れて色素を抽出します。椿の花弁の色はアントシアニン系の色素であるため、煮出すと変色してしまいます。そこで変色せずにこの色を活かすために必要なのがクエン酸です。食酢でも代用できますが、酸の力を借りて色素を抽出します。今回はて水1リットルにクエン酸15グラム(大さじ1杯程度)を溶かしてみました。
(クエン酸水につけた椿の花弁)
花弁から色素を取り出すため揉み込みます。ちょっとクエン酸を入れすぎたのかと思いましたが、椿の花弁にはサポニンが含まれているようで、揉み込むうちに泡立ってきました。サポニンとは石けんの代用にできる成分です。およそ20分ほど揉み込み、その後30分ほどそのまま放置してみました。そして、花弁を濾しとった染液がこちら。
(揉み込み30分後に濾した染液)
濾しとった花弁も撮影してみました。桜色に染まった、出汁をとった後の鰹節みたい?
(色素を取り出した花弁の残骸)
そして、ぬるま湯につけておいた木綿の布巾をつけこみました。木綿の布巾は以前、コーヒー豆のかす、玉ねぎの鬼皮、アボカドの皮と種子で染めたときと同じ布巾です。
(つけこみ開始♪)
1時間ほどつけこみ、いったん取り出して軽く絞って、再度つけこみました。
今回、染色に際し用意したものは以下のとおりです。
・木綿の布巾 1枚(40センチメートル四方、重さ20グラム)
・藪椿の花弁 60グラム
・水 1リットル
・クエン酸 15グラム
・ミョウバン 大さじ1杯
ざっくりとした染色の工程ですが、実践してみた手順は次のとおりです。
1.ボールに水1リットルとクエン酸15グラムを加え、さっと水洗いした藪椿の花弁を入れて揉み込みます。
2.染色する木綿の布巾はぬるま湯につけておきます。
3.20分揉み込み、その後30分間そのまま放置。そして花弁やゴミを取り除いて染液を濾しとります。
4.染液に木綿の布巾をつけこみます。
5.つけこみ後は1時間そのまま放置。いったん取り出して軽くしぼり、もう一度染液につけこみます。
6.染液から取り出して軽く水洗い。
7.もう一度染液につけこむこと30分。その後、色止めの媒染剤として大さじ1杯分のミョウバン液を足しました。
8.ボールからフリーザーバッグに入れて、30分ほど放置。
染色後に水洗いし、念のため軽く選択したのがこちら。染色したては桜漬け大根のような色をしていましたが、ミョウバンを入れたからか水洗いしていると若干紫色がかった色に見えるようになりました。まさにアントシアニン系の色とも言えるのかもしれませんが。
ただ水洗いの後、セスキ炭酸ソーダで軽く洗濯したところ、布に染み込んでいない色素とアルカリが反応したのか水色になり、濯ぎの際にクエン酸を混ぜたところ桜色に戻って、淡桃色というか桜色に落ち着きました。どうも洗濯時は中性洗剤で洗わないといけないようです。勉強になりました。
(染色後に水洗いして陰干し。その後一度色落ち確認のため洗濯して陰干し)
媒染にミョウバンを使用しましたが、同じアルミニウム媒染ならアルミニウム集積植物である椿の木灰からできる灰汁もアルミニウム媒染として使えるので、こちらを試してみたかったのですが持ち合わせていないので、いつか試してみたいと思います。
最後に、これまでに挑戦したものを染色した順番に並べてみました。左から「コーヒ豆のかす」「玉ねぎの鬼皮」「アボカドの皮と種子」「椿の花びら」です。
(染色した布巾が勢揃い)
なお、これまでに挑戦した「コーヒー豆のかす」「玉ねぎの鬼皮」「アボカドの皮と種子」のそれぞれを使った染色については、いかのリンク先の記事をご覧ください。
これら「コーヒー豆のかす」「玉ねぎの鬼皮」「アボカドの皮と種子」は煮出す必要があるため、コンロや鍋が必要なのですが、この椿の花びら染めは煮出す必要がないので、今度のつばき展でも演示実験のようなかたちで実践できるかな?
そうそう、梨木神社の藪椿のの隣で桃色の一重咲きの椿がきれいに咲いていたの、最後におまけの1枚。
(桃色の一重咲きの椿)
このような風合いは天然の素材だからこそ出せる、自然からの贈り物なのかなと思っています。