まさに「暑さ寒さも彼岸まで」のとおり、涼しくなってきましたね。
そのためか、鮮やかな青い色の花を咲かせたツユクサ(露草)が目に映えるように思えるのは、気のせいでしょうか。
ところで、京都府立植物園で、花弁に白い縁取りのあるツユクサを見つけました。
このようなツユクサをメガネツユクサ(眼鏡露草)と呼ぶようです。白い眼鏡をかけているようにも見えますね。
ところが、このメガネツユクサには、苞に毛が生えていました。
普通のツユクサには生えていません。
苞などに毛が生えているツユクサをケツユクサ(毛露草)と呼ぶようですが、一般的に紹介されているケツユクサは花弁が青いようです。
この毛が生えているメガネツユクサは、メガネケツユクサ(眼鏡毛露草)とでも呼べば良いのでしょうか?
もし大方のメガネツユクサの苞に毛が生えているのであれば、ケツユクサの変異によって花に白い縁取りが入ったと考えるほうが自然でしょうね。
ただ、ツユクサもメガネツユクサもケツユクサも、植物分類学上はツユクサ(学名:Commelina communis)として分類されており、花の色と苞に少し違いがあるだけで遺伝上は違いがないとみなされているようです。
唯一、花弁が野原等で見られるツユクサより2〜3倍以上もあるアオバナ(青花)は変種として分類されているようで、学名も Commelina communis var. hortensis (後日注記:最新の分類では変種の扱いではなく、ツユクサの園芸種としてCommelina communis 'hortensis')とされています。
このアオバナはオオボウシバナ(大帽子花)とも呼ばれ、花弁に含まれる水溶性の色素を京友禅の下絵描きの染料として使うために、滋賀県の湖南地方(滋賀県草津市など)で江戸時代から栽培が始まり、花弁から搾り取った汁を和紙に含ませた『青花紙』が特産品でした。
しかし、アオバナが『地獄花』と呼ばれる所以となった、半日花であるために朝早くから昼ごろまで、午前中とはいえ真夏の炎天下で花摘みをしなければならない過酷な作業であることと、化学染料としてアオバナの色素を合成できるようになったことから、栽培農家がどんどん減りだし、現在は2〜3軒しか残っておらず、風前の灯の状況です。
文明や科学技術の発達により世の中が便利になったとはいえ、そのあおりを受けて文化が駆逐されるのは寂しいかぎりですし、またそういったことで文化をなくしてしまってはいけないとも思います。
最後は少し脱線しましたが、ツユクサといえどもいろいろな変異があり、単なる雑草と見るのではなく野草として見る目を持つことで、植物に対する視野が拡がるようになるのではないでしょうか。