京都園芸倶楽部の元ブログ管理人の書笈

京都園芸倶楽部のブログとして2022年11月までの8年間、植物にまつわることを綴った記事を納めた書笈。

小さな小さな松ぼっくり

2020-12-01 06:45:26 | 園芸・植物・自然環境
今日から12月。あっという間に今年もあと1か月です。さて、12月の最大イベントというとクリスマスでしょうか。でも、ハロウィンが終わった途端にジングルベルの曲などが流れているので「12月だ、クリスマスだ」という雰囲気にならないのは、なんとなくもったいないように思えます。

クリスマスといえば欠かせないもののひとつに、クリスマスツリーにも使われるモミ(樅)の木がありますね。ヨーロッパでは伝統的に使われてきたのがヨーロッパモミですが、日本の在来種であるモミとは同属(属の下位の分類である節では別節)の近縁種です。そのモミではないのですが、よく似た木が京都御苑の蛤御門の近くで球果である小さな小さな松ぼっくり(松かさ)をぶら下げているのを先月末に見つけました。




ツガ(栂)の松ぼっくりです。ツガもモミもマツ科ですが、モミ属とツガ属で別属です。マツ科の多くの樹種は上向きに松ぼっくりをつけますが、ツガは下向きにつけますのでちょっと珍しいと言えるでしょうか。さらに、モミはとても大きな松ぼっくりをつけますが、ツガはこのような小さな松ぼっくりをつけるのも対照的ですよね。また、ツガの松ぼっくりは雨が降ると閉じますが、晴れて乾燥すると開いて翼果を下へ落とします。


さて、ツガとモミともに葉のつき方やかたちがよく似ているのですが微妙に違いがあります。その違いとは何かご存じですか?

まず葉のつき方を見てみると、ツガの葉のつき方はこんな感じですね。線状の葉が左右にほぼ水平に出ますが、少し上下して羽ばたいているように見えることもあります。


ツガの葉のつき方


そして、モミの葉のつき方はこんな感じです。京都御苑の乾御門近くにある宮内庁京都事務所の前にあるモミの木にモデルになってもらいました。ツガと同じく線状の葉が左右に出ていますが、日当たりのよいところにあるモミの葉は枝の周囲をらせん状に密に取り囲むようにつくこともあり、このような葉のつき方をしているモミであればツガと見分けがつくでしょうか。


モミの葉のつき方


葉のつき方だけでなく葉先でも区別がつけられます。ツガの葉先は二股に分かれていますが丸みを帯びています。場合のよってはへこんでいると言ってもよいでしょうか。へこんでいるとちょうど波線を描くようなかたち、二股に分かれているなら某ハンバーガーショップ(別に伏せなくてもいいかな)のロゴマークのようなかたちだと言えそうです。


ツガの葉先


そのツガの葉先に対して、モミの葉先も二股に分かれていますが葉先が尖っており、ちょうどジグザグ線を描くようなかたちをしています。この写真では違いがわかりにくいかもしれませんね。


モミの葉先


ついでながら、イチイ科に分類されるイチイ(一位)やカヤ(榧)もモミやツガと葉のつき方やかたちが似ていますが、これらの葉先は尖っています。こちらは川端今出川交差点近くの川端通の街路樹であるイチイの葉先です。


イチイの葉先


よく見かける、あるいは気に留める樹種ではないですが、種が入っている松ぼっくりだけに、ちょっと知っておくと話の種にはなるかもしれません。あわせてよく似ている樹種との違いも触れてみました。

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