出町柳近くの住宅街の細道の路肩の隙間に根を下ろした、おそらくセイヨウオダマキ(西洋苧環)だと思いますが、桜色にも見える桃色の花を咲かせているのを1週間ほど前に見つけました。
セイヨウオダマキは現在、ヨーロッパ原産であるアクイレギア・ブルガリスを元にして北アメリカ原産で大輪の花を咲かせる数種と交配した園芸種を指すことが多いようです。在来種のミヤマオダマキ(深山苧環)やその園芸種に比べてセイヨウオダマキは草丈が50〜70センチメートルと高くて花や葉も大きく、花色も豊富で、株の中心から伸びた花茎にたくさんの花をつける違いがあります。
ちなみに、こちらは2年前に京都府立植物園の植物生態園で咲いていたミヤマオダマキの花です。こちらは草丈が30センチメートル程度だったと覚えており、一輪だけ花を咲かせていました。
ミヤマオダマキ(過去記事より再掲。京都府立植物園の植物生態園にて2019年4月撮影)
なおオダマキの漢字表記である「苧環」の1文字目の「苧」とはカラムシ(苧麻)のことであり、日本では古くから狭義のアサ(麻)だけでなくカラムシやコウゾ(楮)なども広い意味で麻とみなされていました。苧麻は「ちょま」という読み以外に「まお」という読みもあり、コウゾはもともと「紙麻(かみそ)」と呼ばれていました。
カラムシ(過去記事より再掲。高野川河川敷にて2018年9月撮影)
そして、苧環とはこの広義の麻の糸を巻いて玉状もしくは環状にした糸玉のことを指すとされますが、じつは糸を巻く糸枠(四つ枠)のことも指します。
糸玉と見る場合は咲き開いた花というより蕾がそのかたちに似ていることが由来だと思われます。蕾だけトリミングしてみましたが、いかがでしょうか?
そして、糸枠の「四つ枠」に似ていることを和名の由来とするならば、開きかけた花の状態にちなむと言えるでしょうか。こちらの花がもう少し開けば飛び出た花弁の距と萼が四つ枠みたいに見えるかも。でも、オダマキの距(花弁)や萼は5枚ですが。
ついでながら、糸玉としての「苧環」は「麻績(おみ)」や「綜麻(へそ)」とも呼ばれ、糸を細く長く紡げば紡ぐほど良い糸がとれるため、糸繰りの腕が上達した手練れが綜麻を繰ると余分に手当が増えて副収入になることを「綜麻繰り(へそくり)」と呼び、これが現在の「へそくり」の語源とされています。ただし本来は「綜麻繰り」という字でしたが、後世に伝わるにつれ「綜麻」が「臍」と混同され「臍繰り」となったとされているそうです。でも、この「臍繰り」は腹巻きにお金を隠したことが由来ともされているようですね。
脱線ついでに、もうひとつだけ。糸枠や糸玉といえば、私の父方の祖父母や若かりし頃の父が西陣織に携わっておりました。父や叔母が織り子を務め、祖母が糸繰りをしていましたので、幼い頃は糸車や糸枠、美しい絵柄や紋様を出すために縦糸を調整する紋紙、そして織機で横糸を通すために使われる杼(ひ)といった関連道具は身近なもので、特段珍しいものではありませんでした。
この横糸を通す「杼」と言えば、日本で今も杼を作っている職人さんはただ一人だけしかいらっしゃらないそうです。しかも88歳とかなりのご高齢で後継者もいらっしゃらないとのこと。その職人さんの功績を称えて後世に残そうと、地元住民の方が杼をかたどった和菓子の開発を進めているそうです。昨日に配信された京都新聞のオンライン記事で見つけました。
そうそう、今日は「昭和の日」でしたね。幼い頃は西陣織が盛んな地域に住んでいたので、私にとっては日常の環境音でまちなかの音風景(サウンドスケープ)だった「ガシャンガシャン」という織機の音は昭和の良き思い出のひとつかもしれませんが、今や耳にすることはほとんどなくなり、もし音がしていても今のご時世だと環境音どころか騒音として苦情の対象になるでしょうね。そういえば先日、とあるマンションの住人が、隣室の住人が飼育しているアマガエルの鳴き声を騒音だとして苦情を訴えた裁判があったという記事を見ましたが、判決は騒音とは言えないとして原告の訴えを退けたようですね。何とも世知辛い世の中になりましたよね……
セイヨウオダマキは現在、ヨーロッパ原産であるアクイレギア・ブルガリスを元にして北アメリカ原産で大輪の花を咲かせる数種と交配した園芸種を指すことが多いようです。在来種のミヤマオダマキ(深山苧環)やその園芸種に比べてセイヨウオダマキは草丈が50〜70センチメートルと高くて花や葉も大きく、花色も豊富で、株の中心から伸びた花茎にたくさんの花をつける違いがあります。
ちなみに、こちらは2年前に京都府立植物園の植物生態園で咲いていたミヤマオダマキの花です。こちらは草丈が30センチメートル程度だったと覚えており、一輪だけ花を咲かせていました。
ミヤマオダマキ(過去記事より再掲。京都府立植物園の植物生態園にて2019年4月撮影)
なおオダマキの漢字表記である「苧環」の1文字目の「苧」とはカラムシ(苧麻)のことであり、日本では古くから狭義のアサ(麻)だけでなくカラムシやコウゾ(楮)なども広い意味で麻とみなされていました。苧麻は「ちょま」という読み以外に「まお」という読みもあり、コウゾはもともと「紙麻(かみそ)」と呼ばれていました。
カラムシ(過去記事より再掲。高野川河川敷にて2018年9月撮影)
そして、苧環とはこの広義の麻の糸を巻いて玉状もしくは環状にした糸玉のことを指すとされますが、じつは糸を巻く糸枠(四つ枠)のことも指します。
糸玉と見る場合は咲き開いた花というより蕾がそのかたちに似ていることが由来だと思われます。蕾だけトリミングしてみましたが、いかがでしょうか?
そして、糸枠の「四つ枠」に似ていることを和名の由来とするならば、開きかけた花の状態にちなむと言えるでしょうか。こちらの花がもう少し開けば飛び出た花弁の距と萼が四つ枠みたいに見えるかも。でも、オダマキの距(花弁)や萼は5枚ですが。
ついでながら、糸玉としての「苧環」は「麻績(おみ)」や「綜麻(へそ)」とも呼ばれ、糸を細く長く紡げば紡ぐほど良い糸がとれるため、糸繰りの腕が上達した手練れが綜麻を繰ると余分に手当が増えて副収入になることを「綜麻繰り(へそくり)」と呼び、これが現在の「へそくり」の語源とされています。ただし本来は「綜麻繰り」という字でしたが、後世に伝わるにつれ「綜麻」が「臍」と混同され「臍繰り」となったとされているそうです。でも、この「臍繰り」は腹巻きにお金を隠したことが由来ともされているようですね。
脱線ついでに、もうひとつだけ。糸枠や糸玉といえば、私の父方の祖父母や若かりし頃の父が西陣織に携わっておりました。父や叔母が織り子を務め、祖母が糸繰りをしていましたので、幼い頃は糸車や糸枠、美しい絵柄や紋様を出すために縦糸を調整する紋紙、そして織機で横糸を通すために使われる杼(ひ)といった関連道具は身近なもので、特段珍しいものではありませんでした。
この横糸を通す「杼」と言えば、日本で今も杼を作っている職人さんはただ一人だけしかいらっしゃらないそうです。しかも88歳とかなりのご高齢で後継者もいらっしゃらないとのこと。その職人さんの功績を称えて後世に残そうと、地元住民の方が杼をかたどった和菓子の開発を進めているそうです。昨日に配信された京都新聞のオンライン記事で見つけました。
西陣織に不可欠「杼」を和菓子に、住民が開発 88歳職人の功績伝える|文化・ライフ|地域のニュース|京都新聞
京都市上京区の西陣地域で、西陣織の制作には欠かせない道具「杼(ひ)」を作る唯一の職人長谷川淳一さん(88)の功績を残そうと、地元住民たちが…
そうそう、今日は「昭和の日」でしたね。幼い頃は西陣織が盛んな地域に住んでいたので、私にとっては日常の環境音でまちなかの音風景(サウンドスケープ)だった「ガシャンガシャン」という織機の音は昭和の良き思い出のひとつかもしれませんが、今や耳にすることはほとんどなくなり、もし音がしていても今のご時世だと環境音どころか騒音として苦情の対象になるでしょうね。そういえば先日、とあるマンションの住人が、隣室の住人が飼育しているアマガエルの鳴き声を騒音だとして苦情を訴えた裁判があったという記事を見ましたが、判決は騒音とは言えないとして原告の訴えを退けたようですね。何とも世知辛い世の中になりましたよね……