こちら生産組合から望む北山杉の山々は一面のグリーン...小さな若い台杉タルキも、まるで散髪したての少年のように綺麗に枝打ちされて勢ぞろいしている姿が見えます。
そんな中、もみじの木も見上げると所どころうっすらと色づいて来ました。
朝夕冷え込んでくると北山が錦に染まるのも間近です。
先週から秋の植物を求めてカメラ片手に中川を歩いています。題して「中川・秋の風物詩を探して」。
緑と水が豊かなところならどこにでもあるかも知れない、長くここに住んでいる方々にとっては毎年見られる普通のこと...だったはず。
でも聞いてみると「昔はいっぱいあったのに今はほとんど見かけないなぁ...」
そんな植物を求めていくつか山道を歩いてみたのですが、ありません。
途方に暮れる私たちに「小学校にあるよ!」という朗報が飛び込んできました。
いそいそと中川小学校へ向かい案内されたそこにそれはありました。
うふふ。まだ解りませんよね^^では...
えっ...!?サツマイモが枝についている?! なるほど色は赤みを帯びた薄紫色ですが大きさは10cmくらいです。
これは「アケビ」。
アケビはその昔、山遊びする子ども達にとって絶好のおやつとして親しまれていました。実が膨らんできてもうそろそろ...と狙っている矢先に鳥たちに奪われて悔しい思いをしたり...ところが今ではほとんどその姿を見ることは出来ません。
それが、この中川小学校の裏手に二つだけ実をつけていたのでした。
明日にははじけてしまうだろう...いやいやカラスがつついてしまうよ...と教頭先生に脅され?不安を募らせながら3日間通ってみました。
あくる日...わぁ!はじけて少し中身が見えています。アケビについて少し調べてみました。
「アケビ」・・・アケビ科蔓性落葉低木の一種。学名はAkebia quinata。
雌雄異花で、蜜を出さないので受粉形態はよくわかっていません。
雌花が雄花に擬態して雄花の花粉を目当てに飛んでくる小型のハナバチ類を騙して受粉しているらしいです。虫たちを「だまして」と言うのが何かしたたかで面白いですが、それも種の保存ため。
受粉が成功すると雌蕊は果実をつけ、9月~10月にかけて熟して淡紫色を帯びます。
成熟した果実の果皮は心皮の合着線で裂開、甘い胎座(ゼリー状の果肉)とそこに埋もれた多数の黒い種が見えてくる...
ほうほう、文面どおり縦に裂けて中身が見えています。
この白い部分が「胎座(たいざ)」で黒いつぶつぶが種。
白くて甘い胎座を鳥や哺乳類(ヒトも^^)が食べて、種が散布され種は保存されて来たのです。
わかりやすい例ではピーマンの小さな種のまわりに付いている白いふわふわのもの、あれが胎座です。
中川のアケビは少なくなってしまいましたが、山形県では農家さんが栽培していたり東北地方でも新芽を山菜として利用しているのだそうです。
そしてアケビの蔓性の茎は「木通(もくつう)」という生薬として使われていました。
利尿作用、抗炎症作用があり漢方処方されます。
この他、強くしなやかな蔓はかごなどの工芸品となったり種は油の原料となるなどあますところなく利用されたそうです。
いったい誰がこの不思議な植物にこのような素晴らしいパワーと用途を見出したのでしょう。
科学の発達した現代にアケビの成分を分析したところで自然の中での動植物の営みの前では何の意味もなさないという気持ちになります。
人も動物も季節の流れの中で、食べられるもの食べられないもの、病に効くもの、怪我を癒すものなど自然の理を学び植物の恩恵を受けてきました。そして植物もまた、動物たちによって種を保存できてきたのです。
いつの間にか自然界のバランスが崩れ、中川のアケビも少なくなってしまいました。
けれど、この小学校にひっそりと生った二つのアケビがどうかたくさんの種を残し、時が巡りめぐって、いつの日かたわわに実をつけてくれたら...
少し冷んやりした秋の空の下、子ども達が山を駆け回ってアケビの種を飛ばしている...そんな光景が目に浮かぶのでした。
アケビの英名はChocolate vine。直訳するとチョコレートの蔓。
蔓がチョコレート色だからなのか、はたまたチョコレートのように甘いからなのか... ... 調べてみようと思います^^
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