10月もまもなく終わろうとしています。陽が落ちるとサッと冷たい空気が身体を包み込み、思わずぶるっと身震い...そろそろ炬燵が恋しくなってきました。
宗蓮寺の紅葉はまだほんの少ししか色づいてはいませんが、もう一つの見どころを迎えています。
参道に入るとすぐに目に入るピンク色...
山門へと続く道沿いに咲く可憐な花。秋明菊(しゅうめいぎく)が最盛期を迎えています。
秋明菊は「菊」という名前がついていますが、菊の仲間ではなくアネモネの仲間です。
植物学ではキンポウゲ科。古くは中国から伝わり秋牡丹とも呼ばれていました。また、貴船に多く自生したことから貴船菊とも言われています。
背が高くなり、茎は長くその先に花をつけ風に揺れる姿がとても嫋やかです。
山門をくぐり見渡せばあちらこちらに群生する鮮やかな色。
ミツバチが夢中で蜜を吸っています。カメラが近づいても、知らん顔。
お寺の中の小さな流れの周りにもトクサやシダ類など、色々な植物が見えます。 整然としすぎず、自然のままの姿にかえって風情を感じます。
とっても可愛いお顔のお地蔵さん。
こちらは面白いお顔の???
秋明菊だけでなく赤い実や黄色い花、色とりどりで華やかな雰囲気です。
これは「ツワブキ」。フキの仲間ですが、葉がつやつやとしていることから艶のあるフキ→ツワブキとなったようです。園芸植物として日本庭園の石組みや木の根元に植えることから石蕗(イシブキ)とも言われています。
そして小さな赤い実と少しギザギザした葉っぱが特徴の「センリョウ」。マンリョウと共にお正月の縁起物として良く知られていますね。
お寺のまわりにもたくさんの花々が秋の日差しを浴びて元気いっぱいに咲いていました。
これも秋明菊。もともとはピンク色で、白色や一重咲きは新しい品種のようです。
空に向かって枝を伸ばしているのは「ムラサキシキブ」。6月に咲く花は撮影を逃してしまいましたが、美しい紫色の実をつけています。
果実が紫色なことから平安時代の「紫式部」の名がついていますが、もともとは「ムラサキシキミ」という名前だったそうです。
「シキミ」とは実がたくさん成るという意味。
ムラサキシキブの根元に目をやると、青々とした低木が白い、小さな花をたくさんつけています。
ころんとした花びらに溢れそうに鮮やかな黄色い雌しべは何となく椿に似ています。
これはお茶の花。
中川ではその昔お茶が栽培されていました。畑のまわりを囲うようにお茶が植えられ、販売や家庭用のお茶を育てていたのだそうです。その名残でしょうか、今でもところどころにお茶の木を見ることが出来ます。
中川のお茶は独特の味わいだったと聞きました。
こうして今なおひっそりと咲いている花を見ていると茶摘みや干したり蒸したりする光景が目に浮かんできて、中川のおじいちゃんやおばあちゃんと一緒にそのお茶を飲んでみたいなぁ...と思うのでした。
そして何となく椿の花に似ていると思ったのも納得。お茶はツバキ科の常緑樹だったのです。
もうお茶として新芽を摘まれることはなくなりましたが、年中緑をたたえツバキに似た可愛らしい花をつけてくれるお茶も確かな「中川・秋の風物詩」。
お寺をあとにして振り返れば、きれいに枝打ちされた北山杉の緑に、秋明菊の濃いピンクがよく映えます。
私たちは、花が季節を間違わずに咲いてくれることで「あぁこの花が咲いたら秋の収穫だな」とか「もうすぐ寒くなるな」とかを教えてもらえる、自然のカレンダーを持っていました。
けれど地球温暖化が囁かれる近年、動植物も絶滅の危機に晒されたり、先日のあけびのようにいつの間にかその姿を見なくなったり、あらぬ時期に花が咲いたり...と言う現実があります。
今年も、中川には秋の花が咲いてくれました。
秋明菊の花言葉は「忍耐」。
この花言葉のように、これからも厳しい環境の中で耐えて美しい花を咲かせて欲しい。
何故か北山丸太と重なり励みをもらったような気持ちになりました。
来年も、その次の年も...。いつまでもこの光景が見られるように願ってやみません。
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