「京都・北山丸太」 北山杉の里だより

京都北山丸太生産協同組合のスタッフブログです

ナニワ何でも節だよ人生は

2012年06月27日 | 北山杉加工品

6月も最終週となりました。北野天満宮や護王神社などでは無病息災を願ってくぐる茅の輪が準備されているでしょうか?和菓子屋さんには水無月が並んだり、まだまだ京都にはこういった風習が伝えられています。そして7月に入れば聞こえてくる祇園囃子…

北山杉の里総合センター前の谷川では蛍がちらほら飛び交い始めました。産みつけられた蛙の卵はどうやら鹿に荒らされちゃたみたいです。まだの方はさくらんぼの収穫体験も急がなくちゃ!

 

さて今日は木造建築に関する豆知識。

何気なく見ているものが、実はこんな仕組みになっていたのだ!というお話です。

 

可愛く並んでいるのはおはじき?ボタン?かたつむり?大きさは色々ですが、年輪のような渦巻きが見えますね。

 

近年、生活様式も欧米化~と言いますか、膝を悪くされている高齢者も椅子の方が立ち上がるのが楽だったりで、畳のお部屋は少なくなりキッチンやリビングなどの床がフローリングというのが普通になってきました。

フローリングと一言でまとめても、集成材・無垢など材料はさまざまです。

 

こちらはサンプルですが、木目も美しく建築や材木業界では「無地」または「無節(むふし)」と呼ばれています。無垢の無節はそう多くはとれません。

 

こちらは節のある材料。ログハウスや公共建築物、一般家庭でもよく見かけます。節はあって当たり前なんです。

それは・・・節のあるところには枝があった、と言うことですものね。けれど節にも生きている節と死んでいる節があるのをご存じでしょうか。

木はその成長過程で、日光が当たらなくなった枝には水分を送らなくなります。もうあなたは無用よ!という感じですね。結果、その枝は枯れるか折れるかしかない。

大鷲の親が、兄弟の中で餌を勝ち取れず生存競争に負けてばかりいる雛を巣から蹴落とすのに少し似ています。木も、自然の恵みを摂取できなくなった枝には厳しい選択をするのです。

そして木は成長を続けますから、枝が落ちた跡は何年もかかって幹の中に取り込まれて行きます。

一方、北山丸太のように枝打ちをすると枝は生きたまま伐られるわけですから、この跡は生きたまま幹に取り込まれて行く事になります。

 

さて木が伐採されて製材。枝の跡は幹の中に取り込まれているので外側は無節ですが、製材がだんだん芯に近づいてくると、やがて枝だったところが出てきます。先ほど、無垢の無節はそんなにたくさんとれない、と述べた理由はここにあります。

節は枯れた枝の落ちた跡なら「死に節」、枝打ちのように生きて伐られた跡なら「生き節」と呼ばれます。

有節の材料は用途や好みもありますが、とてもナチュラルなテイストです。

写真は「死に節」。ぽっこりと穴があいています。このまま床材などに使用すると見栄えも悪いし、小さな子どもが怪我をするかも知れない、女性はストッキングを引っかけてしまうかも知れません。

そこで考えられたのが「埋め木処理」です。

 

埋め木とかピースと呼ばれている、この小さなおはじき(笑)は枝を加工したもので死に節のある節板を生き節として再生する補修用パーツ。

専門に作っている業者さんがあり、サイズや色合いもさまざまです。素材は桧で、全てのピースには芯が入るように製作されています。

 

処理の方法は、節を中心にドリルで穴を開けピースをボンドで接着します。ボンドもF★★★★の健康住宅対応、ホルムアルデヒドを使用していないものです。

また、特殊な機械で埋め込んでプレナーをかけ、より密着感のある仕上がりになる方法もあり、パッと見は生き節と見間違えるほどです。

 

これはサンプルですがドリルで穴をあけ、ピースを埋め込んであるのがよく判ります。

死に節の補修にはこの他にパテで埋める方法もありますが、経年変化で木は色が焼けてきます。ところがパテの色は変化しないので、穴を埋めていることが目立ってきてしまいます。埋め木処理の方がより自然と言えるでしょう。

 

面取りしてあるものは埋めやすく、割れにくいそうです。直径15~30㎜がよく使われています。

 

いかがでしょうか?このことを知ってから節のあるフローリングや壁に出会ったら、思わず覗きこんでしまいました。(笑)

「あ、これは死に節やな。」とか偉そうに言ってみたり。

自分の体の一部でありながら、育つ可能性のない枝には水分を送らないという、容赦ない木の生き方に驚きましたが、哀れなその記憶を何とか生かすことが出来ないだろうか・・・と埋め木処理を見出した人に脱帽です。

そこには木をあますところなく使う、勿体無い精神や人に優しく、目に美しくと言う日本人ならではの奥ゆかしさも感じられます。

一方で節はある種のデザインであり、埋め木を施されたかつての死に節は何かしらを主張するかのようです。

いつかどこかで節板を目にされたら、覗き込んでそっと撫でてみて下さい。

それは生き節かも知れないし、埋め木の節かも知れない。けれど、いずれにしてもその木の長い歴史の中で、枝打ちをする、伐採する、製材する、加工する、たくさんの職人さん達の思いが込められているのです。

 

 

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