おとといのはなし・・・
わたしは起きていたのだが、布団。
時刻は4時過ぎ。本を読んでいる。
ラインの電話。呼び出し音と相手の通知。
近所の小学生だ。あれ?電話ははじめて。
「おじちゃん」声がすこしだけ焦っている。
「自転車。チェーンがはずれて動かない」
「下にいる?すぐいくよ。ちょっと待って」
笑いだす。「手が真っ黒くろ」「油で真っ黒」
着替えて階段から下を見る。笑いながら手を振っている。
階段を下りているあいだも「大丈夫だよ。ゆっくりねぇ」
とか言う。「手は真っ黒だよぉ~」って見せながら振ってる。
彼女は格闘していた。理屈はわかっていたようなのだが・・・
ちょいとちからが足りなかった。
「ちょっと前にお友達のもはずれたから」
「でもね、お友達のはギアがすくないから」
キャッキャと笑ってる。
「ここがね、こうだから、こうね」「うん、わかるよぉ」
言いながらボルトに引っかかっちまってうまくはずれない。
「いまからどこ行くの?」「塾、塾。遅刻遅刻」
「何時から?」「4時半。遅刻遅刻」笑いがとまらないようだ。
わたしは知っている。彼女は行きたくない。けれども行きたい。
「手を洗っておいで。真っ黒だから」「いってくる」駆け出す。
そのあいだになんとかチェーンはもとにもどったのだが・・・
何十年ぶりに自転車のチェーンをはめた。張りの調整がわからない。
ちょいと乗ってみるのだが、不具合はなさそうだ。
彼女が全速力でかえってくる。みるみる顔が曇る。
「おじちゃんの手が真っ黒くろ」「手袋すればよかったねぇ」
自分の手が黒くなったのは面白いのだが、わたしの手は・・・
「大丈夫。一緒に真っ黒。チェーンを直したからねぇ」
「そうだね、直したからねぇ」「あれ、塾は?」
「あ~そうだ。遅刻遅刻」笑ってる。「直したからねぇ~」
クルクル何周かわたしのまわりをまわって・・・「直ったぁ」
「行ってくるねぇ~」手を振りながら走っていった。
わたしも黒くなった手を見て振って・・・笑っていた。
映画になりそうなシーンですね。
拙い文章で申し訳ないほどです。
なんとなくの日常ほど大切な気がします。
それぞれの日常が映画というか。
コメント嬉しく感謝いたします。