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Lady Ella

ひとり語り・・・

フィディック・・・時間とは・・・

2005-02-25 15:53:50 | Liquor
 エリザベス女王戴冠50周年記念ボトル・・・恭しく女王の肖像画までがラベルにプリントしてある。
 色はかなり濃く、グラスに鼻を突っ込むまでもなく樽の香りが鼻をつく。口に含むと独特の渋みが蜘蛛の糸のように口中に放たれ、一拍おいて、甘味・・・ただやはりかなりの苦味をも併せ持っている。
「あれ・・・口がおかしいかぁ・・・」もう一口。
 かなりインパクトのある味である。フィディックの持つシャープな切れ上がり、液体としての鋭さはまったくと言っていいほど感じられない。重い、よく言えば重量感のあるふっか~い味。もし女王の好みによりこの味が決まったのであればかなりの飲み手ではある。
 ただ、実際のところ私はなんとなく拍子抜けしてしまった。と言うのはもっとエレガントな上品な味を想像していたからである。英国皇室御用達のブレンデッドウイスキー、ロイヤルハウスホールド、ヴィクトリア女王の愛したロッホナガー、どちらも甘くシェリーが香り、重いというよりも華やかな深みがあるものだったからなのである。
 ましてフィディックというモルトが数ある中から選ばれて、そのハウススタイルから想像するに・・・やはり女王様恐るべしなのであろうか、そう言えば最近、再婚なされたチャールズ皇太子はラフロイグがお好みで専用カスクを持っている・・って当たり前か、でも羨ましいし個人的にはこっちを飲んでみたい・・とものの本で読んだ事がある。ご家族でやはりかなりのウイスキー好きなのであろうなぁ。
 ちなみにこのエリザベス女王戴冠50周年記念ボトル、500本だけ製造される事が許されたのだけれど、樽の都合上、501本出来てしまいその一本にはラベルがついていないとの事であった。
 私はまだまだ女王様の域には遠く及ばず・・・あまり好きではなかったかなぁ。もう、そんな機会はないのだろうけれども、またいつか出逢えればその時に判断しようと思った一本でありました。

 そして、いよいよ40年なのである。さっきからこの液体はほかの4種類を差し置いてず~っと主張を続けている。森の匂いとアルコールの揮発を他のものよりも強く、それでいて包み込んでしまうように・・・
 しかし、私の中に一つの懸念があった。ボウモアのところでも書いたような、熟成感によるパワーの喪失である。私の経験から言わせていただければ、やはり熟成期間の長いものは香りをものすごく主張する。もっと言えば熟成期間が長いわりに香り、匂いで主張しないものは味もまたしかりなんである。
  
 恐る恐る・・・と言うよりも、期待とある一定量の不安とともに、その40年ものを口に含んだ。
 爆発した・・・私の不安は宇宙の彼方へと消し飛んでしまい、えもいわれぬ恍惚感が液体と言う、ウイスキーと言う名を借りて私の体中を駆け抜けていく。
「すごい・・・」
 漲るパワーは40年の熟成をへてさらに深く、広く、その度合いを強め、喉元を通り過ぎ胃の腑に辿り着く頃には幸福と言う名にその姿を変える・・・深く吸い込んだ息とともにその残り香を吐き出すと、退廃にも似た、私の中に澱んで溜まっていたものまでも甘く切ない香りに包み込んで空気中へと飛散させる。
 そしてそれは、ながく、ながく、時に遠い日の思い出までも引きずり出してくる。試飲会という場所ではなく、人生の達人のようなバーテンダー氏を目の前にしていたのならば、多分、私は泣いてしまっていただろう。

 な~んてちょっと大袈裟に聞こえるかも知れないけれど、これは本当です。おいしいお酒に逢うと心の底から感動する。そして穏やかなものすごく良い気分になれる。ただ決してそれはこの40年ものようなヴィンテージものだけではないのも厳然たる事実なんである。感動するお酒はそのへんにどっちでもいいものと同じように野積みされている。一本でも多く、自分の力でそんなお酒を探し出していこう。
 ただ、今回のこの40年は間違えのない、The Best Single Malt In The World のうちの一本でありました。ベストなものは常に移ろいゆくものだと私は思いますので・・・
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