「逆境からの仕事学」 姜尚中
NHK出版新書
姜尚中氏はテレビや雑誌、時々読む本でお目にかかります。
深く落ち着いた語り口調にまず好感がもてて、話を聞きたいと思ってしまいます。
私自身も社会に出て仕事をする立場ということで
仕事をする姿勢に対する本には、少なからず興味があります。
こうあるべきとか、こうするべきというような押し付けがましいいものは
素直に心に響かない
ぱらぱらっとページをめくる、ぐっと心に迫る一文があれば
もっと知りたいとなります。
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「逆境からの仕事学より」
~・仕事とは人生そのものである。
仕事とは何か---------。まじめに問いかければ問いかけるほど、答えを出すのは難しいのではないでしょうか。
自分には家庭があり、パートナーもいれば、守るべき子供や親がいる。生活のためには一定の収入が欠かせないし
そのお金のために働いているのだ、と割り切っている人もいるでしょう。
しかし、そういう人であっても、仕事にまったく充足感を求めていないかというと、そうでもないはずです。
仕事は単純に「お金を稼ぎ、生計を立てること」とイコールではありません。その人の人格形成や精神活動と密接につながる。
かなりセンシティブなものです。「生き甲斐」や「個性の創造」、「自分らしさの表現」でもあり、その人の人生そのものであるはずです。
本書は、改めて仕事とは何かを考えてみたい人に向けて書いたものです。・・・・・・~
表紙を開くと、本の内容のあらすじが
~雇用不安、経済の低成長・・・・・不確実な時代だからこそ、ビジネスパーソンは小手先のノウハウではなく、
古典、歴史などの「人文知」に学び、働く意味を捉え直す必要がある。逆境だらけの半生をくぐり抜けてきた著者が・・・・~
(以上本より抜粋しました)
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あっという間に読み終わりました。
常々、仕事というものは、誰にもどんな仕事であっても平等なものだと考えています。
なので仕事に対する姿勢や、仕事において関わる人に対しての姿勢がその人を現し
仕事に対する姿勢は素晴らしいとか、丁寧だとか、好感が持てる
そんなふうに知らずに評価している自分がいます(自分もそうされているのでしょう)。
ただ結局、人の評価を気にし出した時点から、苦しくなり楽しくなくなり
自分の中の嫌な面が前に出て来てしまうように感じ
その時々自分に出来ることをしたのなら、あとは考えないようにしています。
そして、人に対してもあれこれと思わないように、心がけるようにもしています。
この本によりますと、
~・自分にとっての仕事の意味を考えよう
・複眼的な視点を持とう
・人文知に学ぼう~
著者は、今は逆境の時代で、不確実な時代だと言っています。(雇用においてもそうですし、流動的に考えることが大事だと)
そういう逆境の時代にこそ、古典や歴史を学ぶことを勧められています。
~時代は変わり、局面は変われど、人間が考え、感じ、行動する類型やパターンというのはそう大きく変わるものではないのです。
・・・現代に生かせるヒントが数多くあります。一時的にはよいと思うことが、長い目で見るとまちがっているということもあります。
逆に、一見まちがっていると思われることが、歴史の中では正しかったということもあります。・・・~(文中より)
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仕事をする上で、天職だ!と思われて仕事をしている人は幸せですね。
そう思えなくても、どこかに仕事の面白さを見つけられる
勤める時間が充実していたのなら、幸せなことです。
その仕事が嫌いではなくても、それに付随するもろもろの苦労。
人間関係も占める部分は大きいですね。
そこをどう切り抜けて、自分の人生の一部として有意義なものとするか。
この本を読んで、そんなことを改めて考えさせられ、また一つ視点をもらったように思います。
この本はビジネスパーソンに向けて書かれているようにも思いますが
いえいえ、家庭の主婦の仕事にも、PTAの役員のような方にも、ボランティアのようなことをされている方にも
全方位的に、考えるきっかけを与えてくれるように感じました。
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「素顔のヘルマン・ヘッセ」
ウリ・ロートフス 鈴木久仁子・相沢和子 訳 エディションQ
今、まだ読んでいる途中です。とっかかり、なかなか進まず、あれどうしようかな
そんなことを思いながら読み出したのですが
ちょっと我慢しているうちに、どんどん面白くなってきました。
ヘルマン・ヘッセの生まれた場所を訪ね、ヘッセを個人的に知る人、手紙のやりとりをした同時代人の証言の中に
ヘッセを知る、探っていくという旅の記録です。
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たとえば美術館の企画展で、その作家の半生をしる、人となりをしる
そういう機会は貴重であって、この本は古書店で手に入れたものですが
そういった類の極めて価値のあるものと思いました。
私にとっては、とっても興味深く、知りたかったものでしたので
良かったです。ゆっくりと読もうと思います。