公道二輪レースの世界最高峰・マン島TTレースに参戦し続ける日本人ライダーとして知られていた前田淳選手が、他車による追突が原因のクラッシュで負傷。
緊急手術を経て安定したとされていた容態が急変し永眠したとのこと。
……言葉が出ない。
前田選手と言えば、自分にとっては80年代の鈴鹿4耐でセンセーショナルにデビューした気鋭のライダー。4st400が全盛を極めていた同レースを、登場間もないNSR250で席巻し、見事2位に輝いたことが今も記憶に残っている。
90年半ばまで全日本選手権で活躍した後、その舞台を世界の公道レースに移し、マカオGPやアルスターGPでも活躍、そして公道レースの最高峰であるマン島TTには今年で8回目になる参戦を重ね、昨年はついに6位入賞という輝かしい成績を収めていた。
06年は表彰台、そして07年にはその中央へ……!
そんな前田選手の夢(いや、それは夢ではなく確固たる戦略だったと思うけれども)を聞いたのは、ちょうど昨年7月のことだった。
某誌の仕事で前田選手にインタビューし、さらにその夜は、編集部近くの居酒屋で酒を酌み交わした。その柔らかな物腰と語り口、そこに込められた熱い情熱。
片やレーサーとして、一方自分はただのバイク好きとして、それでも同じ時代を走ってきた者同士で囲んだあのささやかな宴の席を、昨日のことのように思い出す。
語りたいことは山ほどあるけれども、今はただ前田選手の、親愛なるマエジュンの冥福を祈らずにはいられない。
僕はマエジュンの熱い瞳を、そして彼の情熱の一欠片であろうと自分の筆で伝えられたことを、一生忘れないだろう。
願わくばあの世でも、熱い男たちとのバトルが続けられますように。
矢張りレース中に逝った公道の帝王、ジョイ・ダンロップに堂々のバトルを挑むマエジュンの姿を思いうかべながら、合掌。
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人が亡くなるのは悲しいことです。
単二さんは、お話までされた人だったらなおさらですね。
四輪ラリー、レース界で、知り合いが亡くなった経験はありませんが
妻を亡くしていますし、私自身もスクーター乗車時に脳挫傷を経験していますから
つい、「死」には敏感になってしまいます。
前田淳選手のご冥福をお祈りします。
今後も前田走法を意識しつつ、安全かつ楽しいツーリングをしたいと思います。
心からご冥福をお祈りいたします。
数年前、JAL(だったと思う)の機内誌に「マン島レースに挑戦する日本人」という記事が載っていたのですが、【安全が最優先される旅客機】の機内誌に、危険の代名詞ですらあるバイクの、しかもレースの記事が載るということは大変異例であった、ということを記憶しています。
遺された方達の心中を察するに悲しくなります。また、今回の事故でバイク(レース)に対する一般のイメージが「やっぱり…」ということにならないように願うばかりです。
ここ数年、継続参戦しているのは彼だけだと思います。単発参戦までは分かりませんが。
「安全」という言葉は、彼にしたインタビューの中でも繰り返し聞かされました。レーサーの口からあれほどまでに安全について聞いたのは初めてでした。
超高性能化した現代のバイクとマン島という環境に折り合いを付けて「最速」を目指すには、まず何よりも「安全」を極める必要があると彼は考え、それを裏打ちする自分独自のテクニックを編み出してきたのです。
日航は確か現地への機材搬送をサポートしていたと思いますが、そんな前田さんの姿勢に共鳴しての記事掲載だったのじゃないでしょうか。
>ナカムラさん
ナカムラさんの向上心にはホントに頭が下がります。
そして、前田さんの実践ライテクに目を着けられたのは慧眼ですね。
残念ながら前田さんをもってしても、もらい事故の危険から完全に逃れることはできなかったわけですが、そのポリシーとテクニックは見習うべきものだと思います。その上で、リスクを常に意識して、自分と周囲の人のために生きて帰る走りをしていきたいですよね。
>SJさん
脳挫傷とは大変な事故だったんですね。
誤解を招く言い方かもしれませんが、バイクって、転んでみないと分からないことが多いと感じています。ボクの場合は林道でイヤというほど転けましたので、そういう意味ではたくさん勉強ができました。それでもなお、公道上での事故も体験しているわけで、つくづくバイクって怖いものだと身に染みています。
その気持ちを忘れずに、これからもバイクを楽しみ続けていきたいです。
マン島TTレースは自分にとって思い入れの強いものです。
歴史的にも多田健蔵氏が邦人最初の出場者でベロセットに乗り15位でしかも表彰式には紋付の羽織袴でその場に立ったという事。
その多田氏のベロセットフレームをコピーして最初のメグロZ型が作られた事。
彼の後を日本人代表として数々のライダーがマン島を走った事でしょう。
彼の事は良く知らないですが、あのコースを愛し果敢に大和魂の限りを振り絞って走られた一人のライダーの魂に尊敬の念と同じ単車乗りとしてのスピリットをこれからも受け継いでいきたい思いです。合掌
http://www.britishcouncil.org/jp/japan-interview-racer.htm
残念です。