私が懇意にしている呉服屋さんから、今年も『団扇』(見出し画像↑)が届きました。
毎年この時期になると『季節のご挨拶』と称して、素敵な団扇が送られてきます。
呉服屋さんらしく反物の絵柄がプリントされた和紙を使い、伝統工芸士と認定された職人さんによる手作りの団扇です。
一本の細い竹を割いて作った骨組みは、手作りとは思えないほどの精巧さで、「これぞ匠の技!」と、息をのむ思いが致します。
でも、それより何より、団扇を手にした時に伝わるぬくもりは、手作りならではのものではないでしょうか・・・?
ところが、呉服店の若ご主人は言います。
「どの業界もそうだとは思いますが、特に伝統工芸と呼ばれる分野では後継者不足で、当店でも、いつまでこの団扇をお客様にお配りできるか分からないのです」・・・と。
「そうだろうなあ・・・」と私も思います。
今の時代、団扇はもう実用品ではなくなってきていますから。
それに、手間暇掛けて、熟練の技を持って作ったとしても、それだけの価値を見いだしてもらえないとしたら、後継者も減り、先細りになってしまうのは誰にでも想像できることですし。
昔に比べて、世の中は全てのことが便利に、そして合理的になりました。
それに比例をして、味気なさも増しています。
便利に、合理的になることは歓迎すべきことだとしても、味気なさが増し、生活に潤いがなくなって行くのは寂しいかぎりです。
一枚の団扇を見ながら、いろいろな思いが込み上げてきた私でした。