PP分離について
建築計画において「PP分離」という用語があります。
「PP分離とは、パブリック(P)とプライベート(P)の分離化をいいます。住まいの中を、LDKや客室などのパブリック空間と、寝室や浴室、子供部屋、書斎などのプライベート空間を上手く分離させて生活動線が交錯しない間取りをいいます」
昔、学校の設計課題において住宅設計では「PP分離は孤高の四番打者」とされていてこれが出来ていないと評価が低かった。ところが僕が実務につくようになってきた80年代後半から様相が変わってきて、個人主義を基盤とする欧米から取り入れたPP分離に日本の慣習が付いていけず、PP分離は陰り始めた。子供への目が届きにくく親子間の断絶や引籠りや犯罪など少なからず家の間取りが家族生活に影響していることがわかってきた。それでわざとリビング経由しなければ個室に行けないとかオープンな階段をリビングの一画に据えるとか意識的に家族が気配を感じ取れるような巧妙な住宅が作られるようになる。最近ではPPが適当に交じり合うのがいい間取りであるとされている。
【PP分離が出来ていない具体例】
僕が子供の頃住んでいた家は社宅扱いのチープな民家だった。和室に敷物を敷いた茶の間が中心にあり、玄関からまずここを経由して勉強部屋やトイレに繋がるという昔からよくある間取りだった。お客さんがきていると「こんばんは」と挨拶し居間を横切り部屋へ行く。逆に来客時にはタイミング間違うと親も無視するものだから茶の間に挨拶に出にくくなる。トイレを我慢し息を潜み客が帰るのを待つということもあった。応接室もない小さな家は食事時になっているのに、気が利かない来客が居座っていると夕飯は後回し、腹を空かせてご帰宅を待つのが当たり前だった。北海道の豪雪地帯、家に電話もなく突然吹雪の中でも訪ねてくる来客を親は大切に扱った。
【PP分離が出来ている具体例】
大学の時、同級生の家に遊びに行った。建築士であるお父上が設計されたという2階建のモダン住宅だった。1階に玄関とホール、子供部屋と浴室類、そして二階には明るい開放的なリビングダイニング&キッチンと両親の寝室がありしかも上下2か所に洋式のトイレがあった。初めてみた廊下などない画期的なPP分離の家だった。それまでみたPP分離された大抵の家は1階の居間があり長く暗い威厳を保った廊下が左右への室へ導き、二階への階段に続いていたものだ。同級生はある日ガールフレンドを家に招く。夕方になって「じゃあ母さん、彼女を駅まで送ってきます~」と元気よく家を出る。しばらく時間を見計らって二人で腕を組んで戻ってくるが彼女は忍び足で1階の個室に駆け込みそのまま一泊するというPP分離がなせる技を友人は最大限利用していたのだ。
(2021-09 未発表)
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