ムーミンパパの気まぐれ日記

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忘れないでいたいこと

2011-09-17 | column
 東日本大震災から既に半年が経過した。あれだけの大災害をわずか6カ月という期間で忘れられるはずもないけれど、どんなことであれ人はすべての刺激に慣れてしまうのもまた事実である。東京に暮らす人々が未だ災害は続いている被災地の方と思いを共有することは難しいというのも現実であろう。東北地方とのなじみが薄く、今回の揺れを同時に経験していない関西以西では、そもそも発災当初からかなり温度差があるという噂も聞いたことがある。理解できないわけではないけれど、せつない噂ではある。最近お会いした被災地の方々からも「中央では震災のことが忘れられ始めているということを耳にしている。」という話を聞いたところである。決してそのことを責めているわけではないんだと遠慮がちに語ってくれるのだが、それだけに「忘れないでください」という被災者の不安や寂しさが胸にしみてくる。

 陸前高田市ではぎりぎりで津波から逃れた男性が語ってくれた。

 津波が来るという情報は入ってきていたが、まさかここまでは来ないと思っていた。職場のビルの中にはお年寄りや車いすの方が何人も避難してきていた。しばらくすると、役所の人が来て津波が堤防を越えたからここから避難した方がいいと言う。話を聞いて驚いた。堤防を越えるとは想像もしていなかったから、慌てて若い人たちにお年寄りなどを連れて高台に行くように手配した。私は最後にビルの中を見て出たつもりだったのだが、上司が何人か残っていたのには気付かなかった。結局、自分の上司はみんな亡くなってしまった。ビルの外に出た時、私には3つの選択肢があった。歩いて逃げるか、車で逃げるか、そして自転車で逃げるかだ。私は自転車を選んだのだが、もし車や歩きを選んでいたなら死んでいたと思う。高い津波が押し寄せてくるのが見えてきて、追っかけっこのように必死に自転車を漕いだ。津波というと青い波が押し寄せてくると思われるかもしれないが、全然違う。家そのものや電信柱や壊れた屋根などが、ベキベキと音を立てながら壁のようになって迫ってくる。本当に上の方に波頭の白い部分が見えているだけで、後は全部壊れた建物などの壁。それが黄色い煙を立ててやってくる。今から考えてみれば、その黄色い煙は建物などが壊れた時の埃だったんだと思う。とにかく歩いている人を追い抜き、渋滞している車の脇を走っていった。車の中の人たちは、あの迫ってくるバキバキという音は聞こえなかったんじゃないだろうか。私が追い抜いていった人たちは、みんな助からなかったんだと思う。2kmほど離れた高台まで走って登り、自転車から降りたんだが、その時はもう脚に力が入らず立てなかった。それでも少しでも高いところへと思って、腹ばいになって手だけで登っていった。しばらくして振り返ったら、自転車を乗り捨てたところに大きな屋根が乗りあげてくるのが見えた。あそこにあのままいたら、やっぱり死んでいたかもしれない。先に避難させた人たちはお年寄りや車いすだったので、足が遅いからみんな死んでしまったかもしれないと思っていた。でも役所の人に無理だからと言われ、市役所の中に避難して高い階に行って助かっていた。本当によかったと思う。。。

 もう60歳を超えているであろう人生の先輩が、問わず語りに一生懸命に話をしてくれる。時に身振りを交え、目に涙をためながら話をしてくれる。誰かに聞いてほしい。話すことによって気持ちを落ち着かせたい。そんな気持ちが苦しく伝わってくる。

 かつてのJR陸前高田駅前にはロータリーの跡と駅からまっすぐ伸びる道路だけが残っている。そこにはかつて道をはさんで賑やかな商店街があったらしい。そう、「らしい」としか表現するしかない風景がそこにはあった。(冒頭写真)

 この間、仕事の関係で様々な事象に触れてきたし、遅ればせながらも被災地に赴き、自分の目で現場を見ることもできた。そんな自分自身が見聞きしたことをこれからいくつか記録しておきたいと思う。 

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2 コメント

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こんばんは (チエちゃん)
2011-09-26 20:53:06
コメントありがとうございました。

パパさん、被災地を訪問されたのですね。
実際に被災地に行かれると、やはり被害の状況は想像以上にひどいものであると思います。
私も被災地とはいえ、内陸部に住んでいますので海沿いの津波被害の状況をこの目で見てはいません。
何度か見に行こうかと考えましたが、なんだか物見遊山のようで申し訳ない気持ちがして、いまだ出かけずにいます。

お話をしてくださった方は、本当に命からがら津波から逃れることが出来たのですね。
実際に体験された方の言葉は重いですね。
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>チエちゃん (ムーミンパパ)
2011-09-27 06:45:52
コメントありがとうございます。

もうずいぶんと時間が経ってから行ったのですが、それでも茫然としてしまうような情景でした。

観光でいいから来てくださいという人も多かったです。ちゃんと見てあげるというのも支援なのかもしれませんね。
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