兼題「梅雨入り 七夕」
梅雨入りや窓の引戸の重くなり
梅雨入りや苔むす庭の三千院
七夕の大竹二本運ばれ来
七夕や無限の宇宙仰ぎたる
七夕や光源氏は恋数多
石仏の頭に二匹糸蜻蛉
兼題「羽抜鶏 暑気払い」
羽抜鶏思わぬ時にひと鳴きし
羽抜鶏立ち止まりては望洋と
若冲の朱き鶏冠や羽抜鶏
観劇の太鼓と三味線暑気払い
岩風呂に長湯うとうと暑気払い
兼題「みどりの日」
白球の弾む青空みどりの日
白鳳の塔の相輪みどりの日
薫風や空海生誕記念展
巨大なる金剛力士夏の蝶
高き木に垂るる山藤熊野道
杣道をかきわけ目指すみどりの日
兼題「野焼き山焼き」
野焼き跡匂ふ夜道の家路かな
飛火野の山焼きのあと親子鹿
夕暮れて三笠の山焼きたちまちに
終点は箕面萱野に春うらら
春暁の箕面萱野や発車ベル
透ける傘張りつく桜蕊数多
兼題「春光」
春光や土塀傾く一休寺
春光や北山杉の里に入る
春光に包まれし子等輪になりて
ものの芽や足湯に開く指の数
はたけ菜をつつむ新聞春浅し
春光を窓全開に日曜日
兼題「雪一切」
予約する上りのA席雪の富士
雪残る枯山水の龍安寺
すれ違ふ車輌の上の雪の嵩
雪掻きの箒の先の重きかな
柊を飾りて明かりのきゆる宿
ガレージに光る猫の目雪の夜
兼題「正月一切」
元旦や吉祥天女の御開帳
白鳳の東塔西塔初御空
初詣り管主の法話午後一時
竹林に鳥のざわめき寒椿
初空や発明王の真竹かな
冴え返るつわもの共の陣の跡
今年もよろしくお願いいたします。去年と
同じように俳句俳画 ゴルフに水泳など
頑張ります 古き都の仏さまやお花も
楽しんで行きたいです 感謝を忘れずに
兼題「年の暮れ」
探し物一日の過ぐる年の暮れ
年の暮れ秘仏如来の背のそり
本堂に朝日射しける年の暮れ
小春日や土産物屋にねむる猫
山寺の銀杏落ち葉に日の反射
空青き苔むす句碑に落葉かな
奈良の園成寺他吟行に出かけて来ました
紅葉と秘仏如来奈良町も楽しんできました
兼題「神無月」
大門を雀が抜ける神無月
神苑に鳩の集会神無月
神在月何事もなく黄泉の坂
閉ざさるる茶室の円窓冬の蝶
プレー中にとつと現る冬の虹
冬紅葉町の真中に坂の風
兼題「晩秋」
晩秋や重ねて貼るる千社札
秋風に飛鳥大仏包まるる
比叡山行者の道に秋の雲
夕焼くる千早の棚田黄金波
秋深し切り株に腰浅くかけ
古民家の崩れし塀や烏瓜
兼題「仲秋」
重陽や節目の句集九冊に
仲秋や閉門告げる鐘かすか
仲秋や琵琶湖八景月見台
夕暮れの棚田に響くばったんこ
僧都の音澄み渡をり詩仙堂
兼題「自由題」
蜩や糺の森を一色に
背の子の動く手足や踊りの夜
かなかなや美術館への登り坂
青紅葉天狗の面の鞍馬駅
秋めくや青田に雲の影一つ
梅花藻や旧家の鯉の赤よぎる
兼題「自由題」
榧の木の千五百年夏の空
白南風を背に観音の寺めざす
夏草や熊野古道の曲がり角
瀬戸内の島より島へ晩夏光
昇天さんの張子の虎や青葉風
兼題「梅雨寒」
梅雨寒や地蔵に赤き帽子かな
長谷寺の渡り廊下や梅雨寒し
曼殊院の幽霊の絵や梅雨寒し
梅雨寒し駆け込むカフェミルクティー
梅雨寒し被爆ドームの首脳陣
梅雨冷えや止まらぬ咳の夕餉時
兼題「緑陰」
緑陰につながれし馬まどろめる
緑陰に乳母車より足のでる
緑陰に買いたての本鞄より
東林院のまばゆき白の沙羅双
涼風や西金堂の大庇
緑陰やメタセコイヤの道抜けし