兼題「冬ざれ」
冬ざれや朽ちたる塀の浄瑠璃寺
冬ざれや路面電車のきしむ音
梵鐘の錆の浮きたる霜の朝
行者堂の軒にからみし蔦枯るる
運慶の如来立像冬日射す
夕陽射す実相院の床紅葉
兼題「冬始め」
初冬の光斜めにカルデラ湖
山の辺の初冬の蔦の彷徨へり
白壁の蔵に日の射す冬始め
出勤の服きめかねる冬始め
篁の中の日溜まり冬始め
公園の椅子無人なる帰り花
兼題「行く秋」
行く秋や三井の晩鐘湖に消ゆ
虫の音や寂光院への畔の道
荻の風飛鳥大仏包みけり
行く秋や日向に仔猫伸びいたり
海凪や能登の棚田の黄金波
馬追や小舟に人なき夕間暮れ
兼題「白露」
線香の漂う祖廟白露かな
早朝のロッジの庭の白露かな
庭隅に桔梗寄り添う式部の碑
竹薮のの大きく動く野分かな
美しき友の遺影や秋桜
兼題「秋の夜」
秋の夜や机の上に本二冊
一日終わふ湯上りの水秋の夜
秋の夜や齢忘るる同窓会
秋めくや青田に雲の影一つ
秋夕焼け歯医者帰りの歩道橋
兼題「梅雨入り 七夕」
梅雨入りや窓の引戸の重くなり
梅雨入りや苔むす庭の三千院
七夕の大竹二本運ばれ来
七夕や無限の宇宙仰ぎたる
七夕や光源氏は恋数多
石仏の頭に二匹糸蜻蛉
兼題「羽抜鶏 暑気払い」
羽抜鶏思わぬ時にひと鳴きし
羽抜鶏立ち止まりては望洋と
若冲の朱き鶏冠や羽抜鶏
観劇の太鼓と三味線暑気払い
岩風呂に長湯うとうと暑気払い
兼題「みどりの日」
白球の弾む青空みどりの日
白鳳の塔の相輪みどりの日
薫風や空海生誕記念展
巨大なる金剛力士夏の蝶
高き木に垂るる山藤熊野道
杣道をかきわけ目指すみどりの日
兼題「野焼き山焼き」
野焼き跡匂ふ夜道の家路かな
飛火野の山焼きのあと親子鹿
夕暮れて三笠の山焼きたちまちに
終点は箕面萱野に春うらら
春暁の箕面萱野や発車ベル
透ける傘張りつく桜蕊数多
兼題「春光」
春光や土塀傾く一休寺
春光や北山杉の里に入る
春光に包まれし子等輪になりて
ものの芽や足湯に開く指の数
はたけ菜をつつむ新聞春浅し
春光を窓全開に日曜日
兼題「雪一切」
予約する上りのA席雪の富士
雪残る枯山水の龍安寺
すれ違ふ車輌の上の雪の嵩
雪掻きの箒の先の重きかな
柊を飾りて明かりのきゆる宿
ガレージに光る猫の目雪の夜
兼題「正月一切」
元旦や吉祥天女の御開帳
白鳳の東塔西塔初御空
初詣り管主の法話午後一時
竹林に鳥のざわめき寒椿
初空や発明王の真竹かな
冴え返るつわもの共の陣の跡
今年もよろしくお願いいたします。去年と
同じように俳句俳画 ゴルフに水泳など
頑張ります 古き都の仏さまやお花も
楽しんで行きたいです 感謝を忘れずに
兼題「年の暮れ」
探し物一日の過ぐる年の暮れ
年の暮れ秘仏如来の背のそり
本堂に朝日射しける年の暮れ
小春日や土産物屋にねむる猫
山寺の銀杏落ち葉に日の反射
空青き苔むす句碑に落葉かな
奈良の園成寺他吟行に出かけて来ました
紅葉と秘仏如来奈良町も楽しんできました
兼題「神無月」
大門を雀が抜ける神無月
神苑に鳩の集会神無月
神在月何事もなく黄泉の坂
閉ざさるる茶室の円窓冬の蝶
プレー中にとつと現る冬の虹
冬紅葉町の真中に坂の風
兼題「晩秋」
晩秋や重ねて貼るる千社札
秋風に飛鳥大仏包まるる
比叡山行者の道に秋の雲
夕焼くる千早の棚田黄金波
秋深し切り株に腰浅くかけ
古民家の崩れし塀や烏瓜