maidoの”やたけた”(ブログ版)

ジジイの身辺雑記。今日も生きてまっせ!

47-ED BARRAR-02-U.S.A.1964-No.47(8/1)

2022-06-02 16:22:50 | 虚々実々-U.S.A.-1964

火付け職人

モクモクと狼煙(ノロシ)見たいに煙を上げている方へ行ってみると、変った竈ですね。
竈というよりもなんと言えばよいのか、立ちカマドとでも言うのかな?
丸太を組んで台を作って、その上に土を盛って、火を焚いています。
こんな大層なことをしないでも、地べたで燃せば良いのに。
こんなのの上で火を燃して大丈夫なんでしょうかね。
組んである丸太に火が移ると崩壊しそうで恐ろしいですね。
そもそも、薪を隙間無く積みすぎ。
それも太い薪を湿気たまんま、これでもかと突っ込んでいます。
これでは到底燃えません。

スープはいいとして、ホットドッグ?先ずその正体を確かめないと、どの程度の、どんな種類の火が良いのか判断できません。
Tanaka さんに訊ねると、鍋に湯を沸かしてソーセージを茹でて、軽く炙ったパンに挟むんですって。トマトスープは?と訊くとソーセージを茹でたお湯にジャガイモとタマネギを適当に切って煮て、パウダー(スープの素?)を溶かして出来上がりだそうです。
こんなのは料理とも言えないと思いますがね。
順序としては、スープの調理を済まして、火床に熾火を広げてパンを温めてというのが順当ですね。
しかしそうなると、ソーセージをどうするか、そうかスープの中で温めれば良いのか!

3つのグループを集めて、見本を見せます。
燻っている薪を一先ず全部取り去って、太さで粗方分けてと・・。
腕より太いようなのは、半分か1/4に割ります。
薪の枕にする適当な石ころ、と見回したけれど、石ころが転がって無いんですね。
サイトは粗い砂みたいな地面だし、森の中は何処も彼処もフワフワの腐葉土。
仕様が無いから薪を1本横に寝かせて、それを枕にします。
乾いたシダーの皮を集めてクチャクチャっと揉んで、その上に細い枝、次に中くらいのとザックリと積み上げます。
湿気た薪は火の側に並べて置けば、そのうちに乾きます。
「マッチ1本火の用心」と火を付けると、メラメラっと炎が上がりました。
中くらいの薪に火がついたところで、折角機嫌良く燃えている火を消さないように、太い薪を充分隙間を空けて加えると、ホーラ、もう大丈夫。

「自分たちでやってごらん」というと、夫々のサイトに勢い込んで帰ってゆきました。

えーっと、水は?と見回すと、水道が引けているんですね!
「ジャガイモの皮をむいて、玉ネギも適当に切って鍋に入れて置きなさい」というと、オットット、皮をムクというよりも削っている感じで、ジャガイモがなくなりそう。
方針変更、綺麗に洗って芽の所だけをえぐる事にしました。
それでも、見ていると危なっかしくて、ドキドキしますね。

このTroop は出来たばかりで、初めてのキャンプだそうです。
Tanaka さんが SOS というのも無理ないですね。
他のグループを見に行くと何とか火が燃えています。
スープの用意をするように言って、Tanaka さんが面倒を見ている方へ行くと、こちらも何とか上手くいったみたい。
「ソーセージはスープで温めた方が段取りが良いと思うんですが」というと「オォ、そうだね!」と簡単に同意されて、拍子抜けしました。
日本だと自分より若い者の意見を、フランクに取り入れる人は少なかったんですが、お国柄なのか、Tanaka さんの人柄なのか?

自分の受け持ちに戻って、本格的に燃え出した火に薪を足すように言って廻ります。
「そろそろ出来ますがどうしますか?」と訊ねに行くと、
「どんどん進めて!(Go ahead!)」
スープがグラグラ沸き立ったので、クーラーボックスからソーセージを取り出して投入。

ついでにスープの素も投入。
次に、熾を脇に広げてパンを炙る準備。
「パンは?」と訊ねたらデッカイ箱に入ったのが出てきました。
適当な小枝を削ってパンを刺して、手に手に熾で炙ります。
炙れたらナイフで切れ目を入れて、スープから引っ張り上げたソーセージをはさんでケチャップをドロドロ、食器にスープを入れたら一丁上がり!。
時計を見たら17:00。
こんなに早く夕飯を食べてどうするんでしょうね。

Tanaka さんは上手くいったと大喜び。
せめてスープだけでも、と勧められたので、スープを頂きながら、今後どう手伝えばよいのかを教えてもらいます。
オンヤ、このスープは美味しいですね!
日本のキャンプだと先ず米をといで、飯を炊くのに結構手間がかかるんですよね。
その点アメリカのキャンプは楽?
朝ご飯はシリアルと牛乳とフルーツ。
キャンプで牛乳?
そうか電気が有るから食堂の冷蔵庫が使えるのか!と思ったら、冷蔵庫に入れなくても傷み難い牛乳が有るそうです。
まさか、あのどうしようもなく不味い給食の粉ミルクじゃあないでしょうね?
「朝ご飯は子供達だけで出来るだろう」そりゃ出来ますよ!
「朝飯は7:30の予定にしている、一緒に食べよう、いいだろ?9:00からロープワークの訓練をしたいから手伝って欲しい、午後は自由に遊ばせる積もりだから、良ければ遊びに来ないか」
せめて最初だけでも、食堂の朝飯を食べておかないと拙いかな?と思ったので、訳を言って朝食後に来る事にしました。
こんな仕事とも言えない事でお金がもらえるなんて、楽勝ですね。

「じゃあ又明日」と皆に手を振って自分のテントに戻りました。
椅子に腰掛けて森を見ていると、なんともいえずいい気分です。
18:00にラッパの音がするので駐車場の方へ行ってみると、皆んな色んな場所で、同じ方角を向いて立っています。
此処からでは見えないのですが国旗掲揚柱のある広場の方向のようです。
ラッパが終ると又夫々の方角に散って行きました。

そろそろ夕食の時間が近づいたので、食堂へ行くと、スタッフが集まっていました。
ボブと私を含めて6人、内2人が Ranger と呼ばれる野外活動の指導資格をもっているそうです。
食堂はズンヅリ・ムックリした小熊みたいな小父さんが1人で切り回しているんだそうです。
1人が鍋を覗いて「Boo!」。
今日のメニューはリスのグレィビーとマッシュポテト、キュウリとオレンジ1個だそうです。
リスのグレィビー??まさかリスがドデンと尾頭付き(オカシラツキ)で入っているんじゃあないでしょうね?
ステンレスの皿を持って自分でよそいます。
マッシュポテトは判りますが、リスのグレィビーがねぇ。
ボブが鍋からよそってくれたのは、焦茶色のシチューみたいな物。
マッシュポテトと一緒に食べると結構美味しい。
「リスは何処?」と訊くと、小さな肉切れみたいなのを探し出して、
「これがリスさ」
こう小さくなって居たんでは、リスでもゾウでも見分けが付きません。
姿煮は物によってはツライ場合が有りますが、見分けが付かなくなっていると、リスであろうが、ネズミであろうが抵抗無く食べられます。

メーンはこのリス料理と、シチュー、フライドチキンの三種類。
それが三日ごとに変るだけなんですって。
付け合せは原則として2日続いて同じ物だから「9種類の献立だ」と小熊小父さんは力説しているそうです。
リス料理と、シチューは、残れば鍋ごと冷蔵庫に入れて、次回はそれに足して作るんですって。
すると、この中には何世代ものリスが入っていることになりますねぇ。
フライドチキンはエンジェルズ・キャンプの例の店から運んで来るそうで、これは人気メニューで絶対に残ら無いんだそうです。
キュウリは1本そのまんま、オレンジは当然コロンと1ッ個。
食べ終わると食器は各自で洗って籠に入れるんです。
次回はその籠から取り出して使うから、小熊小父さんはノータッチかと思ったら、毎日籠ごと熱湯で消毒しているそうです。
これなら1人で充分調理できますね。

マッシュポテトはジャガイモから作るのではなくて、粉をお湯で練るだけなんだそうです。
付け合せの他のバリエーションはマメ、コーンなんだそうですが、それらは大きな缶を開けるだけ。
恐る恐る昼の献立を聞くと、ドーナッツ、サンドウィッチ(材料が並べてあって自分ではさんで作るんだそうです)の2種類+フルーツ(今なら桃かオレンジ)毎日同じですって。
サンドイッチに挟む材料は古くなるとシチューになるんだそうです。
だから「夕食のシチューは1種類じゃなくて、毎回違うんだ」というのが小熊小父さんの主張だそうです。
25¢で各種の卵料理が頼めるそうです。
5種類も出来るというから、念のために訊いたら、Sunyside up(目玉焼き)、Turn over(目玉焼きの両面を焼いたの)、Scrambled(カキタマゴ)、hard-boiled(固茹卵)、three-minute(半熟卵)。
目玉焼きは fried eggs というんだと、アメリカに来て初めて知りました。
最初は卵のフライ?珍しいなぁ、と思ったんです、フライと言えば衣の付いたフライを想像してしまいます。
何故か必ず卵2個で作るんだそうです。

スタッフは長くても大体2週間ぐらいで入れ替わるそうです。
大ボスの Mr. Leverend Edurm Halison さんと スタッフのボスの Mr. Robert D Ritchie さんはシーズン中此処に居続けで、三食共、食堂で食べているんだそうですが、忍耐力有りますね。
Hinman さんがエンジェルズ・キャンプで仕入れた食料には、お二人の注文品もかなり有ったようです。
そりゃ、そうでもしないと身体を壊しますよ。

スタッフは皆んな同じくらいの年恰好で、私の初仕事が火付けだった事を皆知っていて、「Fire man」のニックネームを頂きました。
何時 Honey へ移動するのかと思ったら、私の勘違いで、ミーティングは食堂でするらしい。
ミーティングといっても、キッチンからリスの補充をしてくれと言われているし、最近リスが増えすぎているから、手が空いたらリス撃ちを頼む、という他は特に何もなく、私は明日の午前中は Troop 7 の手伝い。
もう1人の Woodside から来ている Christopher C Wells というスタッフ は 地元 Woodside の Troop 159 のサポート。
夫々、手が空いたら、ここへ来て Mr. Robert の指示を受ける、とほんの10分ほどで終わりました。
Mr. Robert もボブなんですがヤヤッコシイので、皆んなリックと呼んでいます。

ボブが「日本ではしょっちゅう山に登ってたんだって」と言ったことから、日本の山の話になりました。
富士山の他にも1万フィート近い山が幾つもあるとは知らなかったようで、どんな動物が居るのか、どんな木が生えているのかと質問されるんですが、カモシカ、オコジョ、ヤマネ、なんか英語でなんと言うのか知らないので説明が大変。
中でもクリスが熱心に、相当突っ込んだ質問をするんです。
彼は 登山が好きで、何時かはアジアの山にも登ってみたいと思っているんだそうで、
「もし来るのなら案内するよ」と言ったら、その時は必ず連絡するよと住所をメモに書いてくれました。
木にしても、ハイマツ、ダケカンバ、シラカンバ、ブナなどの英語はわかりませんし、高山植物にいたっては完全にお手上げ。
一番のお気に入りのミヤマオダマキすら情け無いことに英語名を知らないんですねぇ。
その辺りの紙に絵を書いて説明したんですが、きっと判からなかったでしょうね・・。
21:00にRitchie さんに追い出されて森の中に散在している夫々のテントに散らばって帰りました。

真っ暗な中で横になっていると、ドサドサ、ガサガサと厭に騒がしい森です。
しかし中央アルプスの国有林と同じ針葉樹の香りがするので、何だか安心です。

2003/06/06:初出
2022/06/02:再録

48-ED BARRAR-03-U.S.A.1964-No.48(8/2)
U.S.A.64-menu


最新の画像もっと見る