やや矢野屋の棚上げ棚卸し

アニメの感想と二次創作小説・イラスト掲載のブログ
「宇宙戦艦ヤマト」がメイン 他に「マイマイ新子と千年の魔法」など

組曲「宇宙戦艦ヤマト」より「序曲」鑑賞

2012年11月17日 21時51分00秒 | レビュー
まずはTwitterの再録。




先週日曜にオーケストラの演奏で聴いてきた「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」は、「序曲」と「誕生」を繋いで一曲に仕立てたものだった。コンサート用の編曲だろうか。
posted at 21:37:40

イントロ部分(「誰もいない街」)を飛ばしてスキャット部分のオーボエ演奏から始まり、序曲の4:20あたりから「誕生」の主題歌イントロへ。電気楽器は入っていなかったけど、パーカッションとは別にドラムスが編成に加わっていた。
posted at 21:39:50

驚いたのは、スキャット無しベース無しだったにもかかわらず、レコードで聴き馴染んでいたサウンドがほぼそのまま再現されていたこと。各楽器の音のバランスがとにかく完璧。子供の頃から「これを生演奏で聴きたい!」と願っていた、そのままの音楽。
posted at 21:43:52

一方で、生演奏でしか味わえない音のダイナミズムも十分に堪能できた。「序曲」3分過ぎからの弦は思いっきりピアニッシモから始まり、クレッシェンドで圧倒的な音圧を浴びた時は体内が沸騰するような感覚に襲われた。弦が、とにかく凄かった。
posted at 21:52:52


前に聴いた時は「歌入り」だったので、「誕生」をオーケストラオンリーで聴いたのはホントに初めて。実はこれもずっと念願だった。
posted at 22:02:37

当たり前のことかもしれないけど、ハープもシロフォンも、とにかく全ての楽器の音が埋没せずに響き合い、ひとつになって聴き手に迫ってくる、心地よい緊張に満ちた素晴らしい演奏だった。もちろん、端正な中にも歌心がきちんと表現されていて。
posted at 22:06:47


指揮者は熊谷弘さん。日本で最も多くの映画音楽を指揮した方だそうで、交響組曲ヤマトの他にハーロックや999のサントラ録音でも指揮者を務められたとのこと。
posted at 22:11:25

生演奏を聴き、先週ずっとサントラCDを聴き返して、たしかにこれらの楽曲に熊谷弘さんの個性が表れていると感じた。端正で、どこかストイックで、でも、きちんとコントロールされた感情が頂点を迎える時のカタルシス。
posted at 22:17:23

「宇宙戦艦ヤマト」というアニメの映像が、様々な人の力を結集して作られたように、ヤマトの音楽もまた多くのプロフェッショナルが力を注ぎ込んで編み上げたものなのだろう。
posted at 22:19:36


できれば、熊谷さんの指揮でもっと様々なサントラの生演奏を聴かせていただきたいと思う。ヤマトやハーロック、その他たくさんの映画音楽の。そして、いろんな方が演奏なさるヤマトの音楽を、これからも出来るだけ機会を捉えて聴かせていただこうと思う。
posted at 22:27:07




コンサートの案内チラシはこちら。
http://concert.studio-gaku.com/data/image/o_209-0.jpg


実を申しますと、私は近年「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」に複雑な思いを抱いていたのです。
特に第一作テレビシリーズのサントラCDを聴くようになってからは、「地球を飛び立つヤマト」や「美しい大海を渡る」の融通無碍なノリの心地よさに比べ、交響組曲の演奏を堅苦しく感じるようになり、聴き返すことも少なくなっていました。
しかしこの日、熊谷弘さんの指揮で聴かせていただいた時に、(ちょっと大仰ですが)「交響組曲の演奏の秘密」に触れたような気がしたのです。

以下、音楽についての専門的な知識など無い素人の戯言ですが……

 よく言われているように、交響組曲は楽器編成や曲の体裁からして「クラシックよりもイージーリスニングと呼ぶべきもの」である。

 しかしながら、レコードの企画者・西崎プロデューサーはこの楽曲を「クラシック音楽の流儀に則って演奏する」ことにこだわったのではないだろうか。

 その結果、交響組曲はテンポや音のバランスにおいて限りなくクラシックに近づこうと試み、あのような演奏になったのではないか。


この仮説に妥当性があるかどうかはともかくとして、先日の演奏に触れて「交響組曲には、熊谷さんの指揮者としての個性がかなり濃厚に反映されているのではないか」と思い至りました。
その観点から「交響組曲 キャプテンハーロック」や「交響詩 銀河鉄道999」を聴き返しています。
特に、クレッシェンドで「ばばーん!」と盛り上がった直後に曲がギュッと収束する感じ(ううう上手く表現できない・汗)、共通性があるんじゃないかと思うんですがーー。

なんか中途半端な話でスミマセン(汗)
お読みになった方のご意見、是非聴かせていただきたく思います。ドゾヨロシク。

「マイマイ新子と千年の魔法」鑑賞

2009年12月04日 02時47分00秒 | レビュー
峠を越えて、片道90分の道のりをはるばる上映館へ行ってきた。
交通費分節約のため、レディースデイを利用して。

この映画については、予備知識をほとんど持たず、ただ「アニメ鑑賞の達人たちが激賞している」という知識だけを抱いてスクリーンに向かった。
結論として、それはとても良かったと思う。
眼前に展開される物語と光景に息を呑みながら、この上なく濃密な時間を過ごすことができたのだから。
だから、今の段階ではこれ以上のことは語らない。
このブログをご覧になっている方がどれほどいらっしゃるかはわからないが、上映館を探し出し、交通手段に頭を捻り、多少の手間をかけてでも、とにかくスクリーンで観てほしい。
きっと、この映画の鑑賞は、貴方にとって得難い体験になることと思う。

「マイマイ新子と千年の魔法」公式サイト
上映館一覧

余談だが、エンドクレジットの「原画」に才田俊次さんのお名前があったことに驚き、またとても嬉しくなった。

「予備知識は無い方が」と書いたが、物語の舞台となる山口県防府市については少し知っておいた方が良いかもしれない。
出来れば大雑把な地理を頭に入れておくとベスト。
こちらにグーグルマップのリンクを貼っておくので、ご参照いただきたい。

山口県防府市・周防国衙跡

目盛り2つぐらい「-」の方に動かして、広域地図に変えてから画面をスクロールすると見やすい。
南の方にある「ベルポリエステルプロダクツ」は、「鐘紡町」という地名からわかるように旧カネボウ工場である。
防府の旧地名は「三田尻」。バレーボールの栗原恵選手の母校「三田尻女子高等学校」の名に残っていたが、現在は「誠英高等学校」に改名されている。
作中には登場しなかった(と思うけど・汗)史跡として、防府天満宮・周防国分寺・毛利邸などがある。

こちらは映画を観た後で!(ややネタバレあり)

「マイマイ新子のふるさと防府」マップリンク集

いきなりワールドワイドな地図が出てくるが、驚かれぬように(汗笑)

「マイマイ新子と千年の魔法」については、年が明けてからでもまた詳しく感想を書いてみたいと思う。
とりあえず来週もう一回観にいくぞ、と。レディースデイにね(笑)

真田さんって何班?

2009年11月12日 04時02分00秒 | レビュー
戦闘班・生活班・通信班。
この三班については、それぞれのトップが「戦闘班長」「生活班長」等と呼ばれているし、他の呼称もなかったので、確定しているといっていい。
「航海長」と称されることが多い島大介も、第一作において「航海班長」と呼ばれたことがあり、「航海班」の呼称に異論が出ることもないだろう。
ところが、機関長の徳川さんと工場長(「さらば」以降は技師長となるが)の真田さんについては、何班の長であるのか、今ひとつはっきりしない。
「航海長-航海班」の例に倣えば「機関長-機関班」となるのだろうが、これは少々語呂が悪い。
また、本編で徳川さん本人は「機関部門のチーフリーダーを務める徳川」と名乗っており、そこから「機関部」という言い方ができるのではないかという気もする。
ただ、ヤマトの編成から言えば、矢印の色が他班と違う機関部門はあくまで独立した班であるのだから、如何に語呂が悪くとも「機関班」と呼ぶべきなのかもしれない。

さて、表題について。
いちばん頭を悩ませたのが、「真田さんの管轄する班を何と呼ぶべきか」ということである。
「工場長-工場班」とするのが、他班との統一を考えた際に最も齟齬が少ないのであろうが、真田さん本人は自班を「科学班」(第一作)「技術班」(ヤマト2)と呼んでいるのだ。
その上、自分自身のことを「工場長」から「技師長」に呼び変えたりするのだから、受け取り手の混乱も無理のないことと思っていただけよう。

沖田艦長は、艦体補修にあたる乗組員を一度「工作班」と呼んでいるが、別の時には「作業班」と呼ぶこともあり、これが艦内組織としての班名なのかという点には疑問が残る。
むしろ「補修を行う人員グループを指す一般的呼称」としてこの二つを使ったようにも思える。
これらの呼称はそれぞれ一度ずつしか出ていないため、どれが優位であるのかという判断がつきかねるのだ。
そうすると、真田さん本人が名乗った呼称に一番妥当性があるような気がしてくる。
自分が属するグループのことを一般的名称で呼ぶことは、まず無いだろうからだ。

「ヤマト科学班長として断言する」という台詞は、第一作23話「逐に来た! マゼラン星雲波高し!! 」にて発言されている。
羅針盤の不可解な動きについてコメントした際の言葉であるが、「科学」とはあまりに範疇が大きく、艦内組織の名称としては相応しくない気がする。
この場面で班名を述べる必要が出てきたため、咄嗟に填めこまれた言葉ではないかと思う。
そうすると、ヤマト2・6話「激戦!空間騎兵隊」にて斉藤隊長をはじめとする空間騎兵隊に名乗った「ヤマト技術班長」という呼称の方が妥当に思えてくる。
何より、組織に属する者が外部者に対して曖昧な一般呼称を使うことなど有り得ない。
というわけで、私は自分自身で真田さんの班名を述べる必要がある時には「技術班」という呼称を使うようにしている。
「続編に出てきた言葉を遡って過去作に充てるべきではない」という論も、理解はできるのだが。

そんなことをだいぶ前から考えていたのだが、実写版ヤマトのキャスト表を見て驚いた。
真田さんの役職名が「技術班班長」となっているのだ。
実写版制作スタッフも同じようなことを考えたのか、それとも別に根拠があるのか。




追伸。
メールの送信が滞っているのに、こんなものを書いてしまってゴメンナサイー(汗)
今書いておかないと忘れちゃいそうだったんですorz

宇宙船サジタリウス

2009年11月08日 14時21分00秒 | レビュー
ぬわー、11月16日からフジテレビTWOで「宇宙船サジタリウス」の放送が始まるーー!

http://www.fujitv.co.jp/otn/b_hp/909200292.html

残念ながら私は視聴環境が整ってないので観られませんが、もしスカパーやケーブルに入っている方いらっしゃいましたら、騙されたと思ってご覧になって下さい。
これ、ホンットに面白いですよ!
宇宙を舞台にしたアニメの中では、ヤマトやガンダムに勝るとも劣らない大傑作です。

「宇宙船サジタリウス」とは、宇宙輸送の中小企業・宇宙便利舎が所有する貨物船サジタリウス号を舞台に、倒産・失職の危機と戦い、生活の安定と友情を天秤にかけつつ(汗)愛ある人生を選び取っていく大人達の物語です。
なんといっても、主人公トッピー(これが唯一のアニメ主役?島田敏さん)が初めてパパになる30代というのが凄い。
こんなアニメ、他にないですよ。
脇を固めるのは大家族を抱えるパイロットのラナ・40代(緒方賢一さんの大熱演)と、うだつの上がらない考古学者ジラフ・20代(新境地を開いた塩屋翼さん)。
放映当時はジラフやアン教授に近い世代だった私ですが(汗笑)、今観たらラナや奥さんのナラに一番感情移入してしまいそうです。
話の内容も、文化人類学的アプローチを絡めた政治風刺に文明批判と、見応え充分のアニメでした。

いまでも懐かしがる人の多いエンディング「夢光年」は、宇宙のロマンを歌ったものとして、個人的に「真っ赤なスカーフ」と双璧をなす名曲だと思っています。
JASRACの許諾をとって歌詞を紹介しているサイトさん(http://www.jtw.zaq.ne.jp/animesong/)に掲載されていましたので、リンクを張っておきます。
http://www.jtw.zaq.ne.jp/animesong/u/sajitarius/yume.html
作詞はヤマトと同じ阿久悠さん。
主題歌の「スターダストボーイズ」には「ちょっとヤマトを意識してるんじゃないかな?」と思われる一節もあります。
http://www.jtw.zaq.ne.jp/animesong/u/sajitarius/star.html
阿久悠さんではないですが、挿入歌の歌詞もいいんですよ。
ついでですのでご紹介。
シビップ役の堀江美都子さんが歌う「愛が心にこだまする」
http://www.jtw.zaq.ne.jp/animesong/u/sajitarius/ai.html
主題歌・エンディングと同じく影山ヒロノブさんの歌う「ソウルブラザー」
http://www.jtw.zaq.ne.jp/animesong/u/sajitarius/soul.html



DVD-BOXは出るたびすぐに品切れになっちゃってますが、来年再販されるんですね!
ただいま予約受付中。うわあどうしよう、買いたくなってしまう……
ヤマト復活篇でだいぶ散財しちゃってるからヤバいよなあ。

【追記】
結局買えずにいたら、すでに中古しか引っかからない状況になってました…orz



 【中古】【DVD】宇宙船サジタリウス DVD-BOX 1 <初回生産限定版>映像アニメ




音楽集はまだ買えるかも。






「イデオン」雑感

2009年11月06日 21時35分00秒 | レビュー
前回はキャラクターデザインについて述べたので、今度はその他の要素について。


放映当初より、「嫌味なキャラに救いのないストーリー」との評判が高い作品だった(汗)
味方、というか、同じ船に乗り合わせた者同士がこれだけ互いを非難して角つき合わせるアニメもなかったのではないか。
ただ、当時視聴者だった私はなぜか、その「角つき合わせる姿」に共感し、宇宙規模で破滅していく二つの人類の物語にカタルシスを得ていた。
おそらくそれは、この物語が単なる「無理解と不寛容」を描いたのではなく、「魂の受容と共感」を形にしているからではないかと思う。
悪の組織や侵略者ではなく、地球人とまったく同じ欲望や怨念に突き動かされる存在としての敵異星人・バッフクランとの不幸な接触を通じ、相互理解の可能性や、それを潰えさせるものが何かを確かめていく。
それが、「イデオン」というドラマを体験することの意味だった。
大きな運命の流れの中で、あるいはささやかな生活の中で、人は次第に人を受け入れていく。さらに、そうした個々の人間のささやかな営みを押し潰していく、人間の「業」というもの。
それらが視聴者の眼前に繰り広げられていく「イデオン」は、まさに脂ののっている時期の富野由悠季監督が渾身の力を注いで作り上げた、見事な群像劇である。


さて、「イデオン」登場キャラには、全アニメの中でも一、二を争う「私的ベストカップル」が存在する。
ソロシップのリーダー、ジョーダン・ベスのあとにイデオンBメカのパイロットとなるファトム・モエラと、ソロシップの看護婦ファム・ラポーである。
モエラは一応正規の軍人であるが、本人曰く「(パイロットといっても)オレは補欠だったんだよ!」(主人公のコスモに「自慢になるかね」と返されていた・汗)
また、これも本人談だが、小さい頃はメソメソグズグズした子供だったらしい。
顔つきはどこから見ても純然たるモンゴロイド、きっと中国内陸部の少数民族で口減らしのために軍隊に入ったんじゃないか……とか、いろいろと想像をかき立てるキャラである(汗笑)
そのパッとしない彼が、やはり地味キャラながら自分の職務をしっかり務め、なおかつ小さな子供達に理解と受容の精神(ラポート、これが名前の由来かな?)で接するラポーと交流を持ち、「オレの人生捨てたもんじゃないかも?!」と希望を抱くのだが……その直後に戦死してしまうのが「イデオン」という物語(泣)
「特別な人との出逢いは、特別な人間にだけ訪れるのではない、誰だって、自分なりに大切にしたい人に出会い、関係を育てていくことができるんだ」―――そんなことを感じさせてくれるエピソードは、それまでのテレビアニメの中では、なかなかお目にかかれなかったように思う。
「イデオン」は、モエラとラポーのエピソード以外にも、作中でこうした「人としての感情の営み」をきちんと描いていた。
だからこそ、彼らが織りなす悲劇を我が事のように受け止められたのだろう。
思春期前期に「ヤマト」に出会ったことと同じくらい、思春期の終わりという時期に「イデオン」を鑑賞できたのは、作品の「キモ」の部分を理解する上で、たいへん幸運だったのだと思う。


続いては「イデオン」の音楽について。
作曲のすぎやまこういち氏をメインに、あかのたちお・神山純一両氏が(劇場版では小六禮次郎氏も)一部編曲を手がけている。
特にTVシリーズのサントラ1枚目は非常にハイレベルであり、個人的にはヤマト第一作と並んで「TVアニメ音楽の両横綱」だと思っている。
サントラの一曲目に収録されているエンディングテーマ「コスモスに君と」は様々な論評がなされているが、歌詞については「タブーに踏み込んでるな」とは思うものの、それほど深いとは思わない。
むしろ、「トミノ節」が強すぎて、かえって浅い気がしないでもない。
ただ、厭世観やニヒリズムに首を突っ込んだ若いモンの「気分」を掬い取るのは巧いよなあ、と。
「じゃあ嫌いなのか」というと、好きなんです、実は(汗笑)
この「イカニモ物がわかったような青クサい感じ」がいいんですよ!エライ人にはそれがワカランの(略)
しかし、その青クサさを包み込むかのような滋味に満ちたメロディーには、ただ胸を打たれるばかり。
戸田恵子さんの歌唱も、バックの演奏もすばらしい。
羽田氏のピアノはさすがにエモーショナルであり、またドラムも弦も非常に演奏力が高い。
アレンジがまた3コーラスの世界をきっちり構築していて、何度聴いても飽きることがない。


劇伴音楽も、宮川泰氏のヤマトとは好対照。
ヤマトに「勇壮なマイナーコード」の印象があるとしたら、イデオンは「哀切なメジャーコード」。
ヤマトがロマン派ならば、イデオンは印象派。
ヤマトに良質のジャズテイストがあれば、イデオンにはロックのドライブ感。
アンサンブルやセッションの妙で聴かせる音楽が多いのも、イデオンBGMの特徴であろう。
ソロシップ船内の日常描写シーンでよく使われた「チルドレン」という曲は、途中のパートにザイロフォンやバイオリンが挿入される以外、ほぼ全曲がクラリネットやフルート、ファゴット等の木管楽器で演奏される。
これがまさに「人の息遣い」といった感じでとてもいい。
「発動」や「デス・ファイト」といったアップテンポの曲では、羽田氏のピアノがとにかく凄い。
とてつもない躍動感があり、唯一無二の音色と超絶なテクニックを遺憾なく発揮している。


すぎやま氏の作曲について述べるならば、何よりも「音によって一つの世界を顕現しようという意志」が溢れている。
音楽によって、誰も見たことのない世界を、誰も到達したことのない物語を示そうという意志が。
劇場版「発動編」のラスト近く、バッフクランの最終兵器・ガンドロワがその全貌を顕わにするシーンに流れる「コスモスへ」を聴いた時には、「ああ、とうとうこんなところにまで来てしまったんだ…」というショックを感じた。
とても静かで情感に満ちた曲であり、巨大兵器のイメージにはそぐわないのだが、そのことが逆説的にガンドロワの恐ろしさ、それを作らしめた人間の業の深さに思いを至らせる。
迫力ある映像に迫力ある音楽を付けるのは簡単だが(暴言スミマセン)、イデオンが凄いのはこういうところではないかと。
すぎやま氏の曲も素晴らしいが、富野監督のセンスも大変なものだった。
発動編終曲の「カンタータ・オルビス」は、羽田健太郎氏の「交響曲宇宙戦艦ヤマト」と並んで、アニメ音楽の一つの到達点であると思う。


最後になってしまったが、主題歌「復活のイデオン」。
水木一郎氏に代表される「ド迫力絶叫系」が多いロボットアニメの中にあっては、かなり地味なテーマソングである。
アニソンとしての評価もさほど高くないのではないか(たぶん)。
が。一度、一人っきりになれる場所で思う存分歌ってみることをお勧めする。
すんごいキモチイーです、この歌。
「ここで声を響かせたい!」とか「音を伸ばしたい!」と思うところで、何とも気持ちよく声が出せる。
まあ、多少はキーを変えないといけないが、無理な発声する必要がまるで無い。
起伏とニュアンスに富んだメロディーラインといい、メジャー→マイナー→メジャーというよく考えたら非常にトリッキーなコード進行といい、やはりすぎやま氏はスゴイ!としか。


「イデオン」の音楽集は、1枚目のサントラ以外のCDが長らく絶版状態にあり、名曲にもかかわらず手に入れにくい状態であったが、今年8月に4枚組ボックスの「総音楽集」として再販された。
まさに「快挙」である。
これだけ充実した収録内容でこの値段は格安でもあり、是非とも御一聴をお勧めする。





1枚目サントラ。こちらも名盤。





DVDは在庫切れらしい………中古がいくつかあるみたいですが。