幾日かすぎて
あの老婆に出逢う
「おはようさん」と声を掛ける
「ああ…おはようさん」
少し元気がなかった
バスの座席に腰掛け
「どうぞ」と手招く
「いや、大丈夫です」
寂しそうに顔を上げ
黙ってうつむいていた
いつもの停留所で
降りようとすると
黙ってお辞儀をしていた
バスが走り出し
バスの窓から見送っていた
何度もお辞儀をしながら
「今日も暑いな」
「もうすぐ、秋が来ますよ」
ニッコリ笑って
「そうかい」と屈託なく笑う
バスの来る方向に…
何度となく目をやり
「拝んでるか」
突飛な言葉に戸惑っていると
照れ笑いしていた
何日か出会うことがなく
いつもの老婆が気にかかった
家族でもないのに
あの屈託のない笑顔が
見れない日が寂しい
早朝一番のバスを待つ
一人の老婆
ニ三度顔を合わすうちに
どちらからともなく
会釈するようになった
会釈を交わすうちに
言葉を交わすようになり
遠くに姿が見えると
前屈み腰に
手を振っている
杖を突きながら
肩掛けの鞄が揺れる
曲がった腰を
杖にすがりながら
「おはようさん」
感情に左右され
理性の力を失う時
感情に溺れて
惡の華が咲く
その瞬間に
『喜神』を呼び起こし
善の華をを咲かしたい
日々揺れ動き
定まることのない
心の作動
私の中にあって
私が振り回される
常に心して
この『喜神』を宿したい
ああ…休むことのない
この感情の揺れ
この理性の働き
共に牽制し
日々、我との闘い
我に勝てる日は、くるのだろうか
この『喜神』
謗られて、憤り
この奥に宿る時
怨念の根ははこびらず
根を張ることもなく
いつしか
神の心に通じる
磨かずして
朽ち果てるより
『喜神』を宿し
心を磨き
徳を備え
人の道を歩む努力
日々心掛けたい
『喜神』を宿し
理性で華開き
感情で輝き
とらえどころがない
この心の奥に
しっかりと
持ち続けたい