江戸期の分際という倫理は、人間の普遍的美徳である謙虚、謙遜、恭しさというものを生み、ついにはときに利他的行為までを生むほどの力を持った。同時に強烈な副作用として日本人に卑屈さを植えつけた。・人は、その才質や技能というわずかな突起物にひきずられて、思わぬ世間歩きをさせられてしまう。
男の背中丸めないにしょ。ショイコしょって胸に一物、背に荷物。二律背反、前後不覚の世界。
人間は人間とかかわってゆく以外に生きようのない生物だが、同時に人間は人間とのかかわりによって例外なく衰弱し、例外なく殺される。徒手空拳門閥より実力で這い上がる。