参加者の皆さんは、菊地さんのお話をどのように聞いてくださったのでしょうか。これまでお寄せくださったアンケートなどへの回答から主なものをひろって、まとめてみました。(取り上げるのは短いコメントのみとし、まとまった論考は省かせていただきます)
印象に残ったことば
・「できないことを否定しない」「マイナスの感情を受けとめる」
・「打たれ弱い子」「異質なものを受け入れることが苦手な子」「すぐに諦めたり、切り捨ててしまう子」がたしかに多いと感じる
・「生徒を見る」という言葉が多く出てきた
・「しんどい」「肩幅の狭い」「声を小さくされている」など身体に関する表現が多いことに気づいた
・「専門性さえ捨て去る用意ができている」という言葉には、ショックを受けたが、さて、自分には専門性ありや?と問いがふりかかってくる
・「できないことにたいしてどのように対処していくか」これは教師に求められている最大の仕事
身体感覚につながることばは具体的かつ切実で、メタファーとしての広がりもあります。「見る」という行為も大切ですね。次回の講演のテーマにもなっているクリシュナムルティも、既知のものを注意深く「見る」こと、あるがままのものを「見る」ことが対象の全体を把握するために大切だと言っています。
学校の取り組み
・学力中心の進学高校でも実践可能なのか? 被差別の生徒たちがいない学校であったら、このような取り組みができただろうか?
・教員集団が生徒のためにまとまって動ける力、継続していける力はどこから来るのか?
・協力し合う教員集団が形成されることの重要性をひしひしと感じた
・教師自身が変化を求められている
ちなみに、菊地さんは『希望をつむぐ高校』(pp.161-169)の中で、二つの高校の取り組みを「ホリスティックな組織づくり」(☆)として、旧来の処し方(★)と対比させて整理しておられます。ここでいう「ホリスティック」とは、菊地さんによれば「近代のありようを批判的・反省的に捉えなおす視座」であり「人間と社会を多元的に深く把握することを通して本来のつながりやバランスを回復させる暫定的な座標軸」となるものです(★が旧来の処し方、☆がホリスティックな組織づくりです)。
(1)★望ましい生徒像にもとづく組織目標 ⇔ ☆「生徒の現実(切実さ)」からの出発
(2)★「優秀で均質な生徒」のかき集め ⇔ ☆「生徒のエンパワメント」の実践
(3)★少数の教職員層による目標設定 ⇔ ☆コンセプトを共有するプロセス
(4)★他人任せの改革 ⇔ ☆一人ひとりが試みる改革
(5)★一元的な教育社会のための持続不可能な改革 ⇔ ☆公共圏をつくっていく持続可能な改革
(6)★(他者を通して)自己変容しない改革 ⇔ ☆自己(相互)変容する改革
図書館のあり方
・学校図書館は社会にたいして、どのような立ち位置や行動をとるべきであろうか
・二つの学校の実践の中で図書室が果たした役割は?
図書館の人たちを前にして、ほとんど話にでなかったということは、推して知るべしというべきでしょう。だからこそ、私たちは、このセミナーを企画したといってもいいかもしれません。私が松原高校を訪れていた2001年頃の図書室は、蔵書数も少なく、ずいぶん草臥れた感じの本が孤独感を漂わせながらつまらなそうに並んでいました。課題研究などの資料相談は公共図書館にお世話になっていると先生方から聞いたことがあります。その頃とくらべると、ホームページで見る松原高校の図書館は見違えるほど整備されていて、きっと課題研究などに役立つ資料提供もできているのでしょう。しかし、学校図書館の真の課題は、その先にあります。司書教諭や学校司書が教師たちとの同僚性を維持しながら、共に子どもの学びと成長を促す教育活動にどのように関わっていくか。学校図書館が子どもや教師の現実に向きあい、生きることの豊かさを軸にした学校改革の担い手となるために備えるべき条件とは何か。セミナーの最終回は、このテーマで大いに語り合いましょう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
連続セミナー「ホリスティック(総合的)な知を育む学校・図書館をつくる」第2回のご案内
10月21日(日)13:30~15:30
ホリスティックな知とはなにか? シュタイナーとクリシュナムルティ
講師:古山明男(「多様な教育を推進するためのネットワーク」代表)
場所:立教大学池袋キャンパス14号館601号
参加費:1,000円
参加申し込み:メールで holisticslinfo@gmail.com まで
☆ 講演終了後、セミナー参加者を対象に立教大学池袋図書館の見学ツアーを行います。参加を希望される方は、セミナーに申し込まれるときに「図書館見学希望」とお書き添えください。(参加費無料、定員20名)
![]() |
変えよう! 日本の学校システム 教育に競争はいらない |
クリエーター情報なし | |
平凡社 |
ブログ:「変えよう! 日本の学校システム 教育は制度がネックだ」
![]() |
アートとしての教育―クリシュナムルティ書簡集 |
クリエーター情報なし | |
コスモスライブラリー |
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます