ハロウィンの夜。ジョウがアルフィンにおねだり。
「これを、着てほしい」
差し出した衣装を、アルフィンが凝視する。
どこで手に入れたのかしら、こういうの。
……通販で? とても店頭で購入できたとは思えない代物だった。照れくさいのかジョウは「やっぱりダメか」とひっこめようとする。
慌ててアルフィンはそれを手に取り、「いいけど。……なんだか」しげしげと見入る。
「ん?」
「なんだか、えっちね」
ジョウ、変ったわ。前はこんな風にあたしにお願いする人じゃなかったし、あたしにこんな風にコスチュームを指定して身に付けるよう懇願する人でもなかった。
「がっかりか」
「ううん。あなたの好みがわかっていい。着るわ」
決して嫌ではないのだ。仮装すること自体は。
去年のハロウィンは、<ミネルバ>内で魔女の仮装をして一日過ごした。アルフィンの提案でタロスはフランケンシュタインの格好、リッキーはピーターパンの扮装をしてくれて、結構盛り上がった。
でもジョウだけは「俺はいい。見る専門」と断ったんだっけ。
彼は言った。
「それを着たら、船内を歩き回るなよ。俺の部屋にまっすぐ来ること」
「それなら仮装する意味、なくない?」
「俺だけ見られればそれでいいんだよ。つうか、ほかのメンバーには見せるな」
むすりと答える。
「はあい」
こういう時のジョウに反論しても無駄だと言うのは経験上理解している。アルフィンはすぐに引いた。
「じゃあ着替えてくるわね。お化粧もするから、ちょっと時間かかるかも」
「うん」
リビングから出ていこうとするアルフィンを、ジョウが無言で見送る。
視線を背中に感じて、なんだかうっとりとしてしまう。期待、どきどき、興奮。いろいろ混ざった視線。恋人に「男の目」で見つめられることは、女にとってエステよりも何よりも効く。美しさを底上げしてくれる。
最近、とみに綺麗になったと評判のアルフィンは、そんな風に思った。
ジョウがハロウィンのコスプレにおねだりしたのは、バニーガールの衣装だった。
黒のレオタードと、編みタイツ。黒のピンヒールに白いうさぎの耳がついたカチューシャ。
襟はハイカラ―で蝶ネクタイがあしらわれている。
綺麗に化粧をほどこしたアルフィンが、着替え終えてジョウの船室に現れる。
ジョウはほれぼれと彼女の扮装を見つめた。
そして、赤くなって目をそらし、
「すごく似合う……。けどなんか、直視できない」
と口元を手で覆って呟く。
なんてかわいい反応。アルフィンは思わずジョウに抱き着いた。
「うわ」
「ハッピーハロウィン。お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうわよ」
ジョウは笑った。
「お菓子って年でもないだろう。お互い」
「あら、言ったわね。去年みたいにキスマークつけるわよ、いいの?」
「今年は俺がつける。おてんばウサギを捕まえてな」
そう言ってジョウはアルフィンのウエストを引き寄せた。懐に身体をしまい込む。
「あ……」
「ウサギにいろいろいたずらするのは俺の方。予想以上に、似合うよ。一回、君に着せてみたかった」
熱に浮かされたようなほの暗い声が、吐息とともにアルフィンの頬に落とされる。
「……えっちなこと、するつもり?」
「しないと思った?」
ううん。アルフィンがかぶりを振ると、ウサミミがぴょんぴょんと左右に揺れた。
「すると思ってた」
「正解」
ジョウは笑って、アルフィンの網タイツに指先を引っ掛けた。そして、びり、と彼女の尻の下のあたりのところを破きにかかる。
「あ、」
「こうして抱きたいと思ってた。――ごめんな、せっかく着てくれたのに」
「あなたに脱がされるために、着るのも悪くないわ」
アルフィンは言う。青い瞳を輝かせて。
そんなこと、この衣装を渡された時から分かってた。そう言いたげな目。
ジョウは初めから見透かされていたことで照れくさそうに笑って、彼女にキスを刻んだ。
ふたりが正式に恋人同士になってから迎える、最初のハロウィンの夜のこと。
END
結婚前年といったところ。来月のジョウの誕生日にもなんか新作を上げたいですね。
「これを、着てほしい」
差し出した衣装を、アルフィンが凝視する。
どこで手に入れたのかしら、こういうの。
……通販で? とても店頭で購入できたとは思えない代物だった。照れくさいのかジョウは「やっぱりダメか」とひっこめようとする。
慌ててアルフィンはそれを手に取り、「いいけど。……なんだか」しげしげと見入る。
「ん?」
「なんだか、えっちね」
ジョウ、変ったわ。前はこんな風にあたしにお願いする人じゃなかったし、あたしにこんな風にコスチュームを指定して身に付けるよう懇願する人でもなかった。
「がっかりか」
「ううん。あなたの好みがわかっていい。着るわ」
決して嫌ではないのだ。仮装すること自体は。
去年のハロウィンは、<ミネルバ>内で魔女の仮装をして一日過ごした。アルフィンの提案でタロスはフランケンシュタインの格好、リッキーはピーターパンの扮装をしてくれて、結構盛り上がった。
でもジョウだけは「俺はいい。見る専門」と断ったんだっけ。
彼は言った。
「それを着たら、船内を歩き回るなよ。俺の部屋にまっすぐ来ること」
「それなら仮装する意味、なくない?」
「俺だけ見られればそれでいいんだよ。つうか、ほかのメンバーには見せるな」
むすりと答える。
「はあい」
こういう時のジョウに反論しても無駄だと言うのは経験上理解している。アルフィンはすぐに引いた。
「じゃあ着替えてくるわね。お化粧もするから、ちょっと時間かかるかも」
「うん」
リビングから出ていこうとするアルフィンを、ジョウが無言で見送る。
視線を背中に感じて、なんだかうっとりとしてしまう。期待、どきどき、興奮。いろいろ混ざった視線。恋人に「男の目」で見つめられることは、女にとってエステよりも何よりも効く。美しさを底上げしてくれる。
最近、とみに綺麗になったと評判のアルフィンは、そんな風に思った。
ジョウがハロウィンのコスプレにおねだりしたのは、バニーガールの衣装だった。
黒のレオタードと、編みタイツ。黒のピンヒールに白いうさぎの耳がついたカチューシャ。
襟はハイカラ―で蝶ネクタイがあしらわれている。
綺麗に化粧をほどこしたアルフィンが、着替え終えてジョウの船室に現れる。
ジョウはほれぼれと彼女の扮装を見つめた。
そして、赤くなって目をそらし、
「すごく似合う……。けどなんか、直視できない」
と口元を手で覆って呟く。
なんてかわいい反応。アルフィンは思わずジョウに抱き着いた。
「うわ」
「ハッピーハロウィン。お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうわよ」
ジョウは笑った。
「お菓子って年でもないだろう。お互い」
「あら、言ったわね。去年みたいにキスマークつけるわよ、いいの?」
「今年は俺がつける。おてんばウサギを捕まえてな」
そう言ってジョウはアルフィンのウエストを引き寄せた。懐に身体をしまい込む。
「あ……」
「ウサギにいろいろいたずらするのは俺の方。予想以上に、似合うよ。一回、君に着せてみたかった」
熱に浮かされたようなほの暗い声が、吐息とともにアルフィンの頬に落とされる。
「……えっちなこと、するつもり?」
「しないと思った?」
ううん。アルフィンがかぶりを振ると、ウサミミがぴょんぴょんと左右に揺れた。
「すると思ってた」
「正解」
ジョウは笑って、アルフィンの網タイツに指先を引っ掛けた。そして、びり、と彼女の尻の下のあたりのところを破きにかかる。
「あ、」
「こうして抱きたいと思ってた。――ごめんな、せっかく着てくれたのに」
「あなたに脱がされるために、着るのも悪くないわ」
アルフィンは言う。青い瞳を輝かせて。
そんなこと、この衣装を渡された時から分かってた。そう言いたげな目。
ジョウは初めから見透かされていたことで照れくさそうに笑って、彼女にキスを刻んだ。
ふたりが正式に恋人同士になってから迎える、最初のハロウィンの夜のこと。
END
結婚前年といったところ。来月のジョウの誕生日にもなんか新作を上げたいですね。
⇒pixiv安達 薫
いいHalloweenになって、めでたし・めでたし。
他のメンバーには見せたくないよね。
バニーガール姿のアルフィンなんて。
アルフィンが来るまで、Halloweenなんて、
関係ない生活だったんだろうな。
来月って、明日からなんですが、
新作期待していいですか?お願いします。
タロスのフランケンもリッキーのピーターパンも似合う! J君なら何が似合うかなあーと考えたんですがどーしても海賊とか剣闘士とか鳶とか火消しとか…ワイルド系しか思いつきませんでした。。。
新作も楽しみにしてますねー。