「・・・・・・え?」
格納庫でライフルの弾丸の在庫を確認していたジョウは、手を止めて振り返った。
入り口のところにはアルフィンがいた。所在なさげに、それでも自分を励ますようにして彼と向き合う。
「いま、なんて?アルフィン」
聞き間違いかと思った。自分の。
だから聞き返した。
アルフィンは一度ためらったが、それでも唇を湿らせてから言葉を載せた。
「だから、その・・・・・・ごめんなさい。本当に。態度が悪くて、傷つけてしまって。反省してる」
アルフィンは再度頭を下げた。深々と。
背中から肩に掛けて金髪が流れる。顔を覆い隠す。
表情が隠れて更にジョウはじれた。
「いや、そっちじゃなく。その前。君が、こないだ俺に贈り物の話を切りだされたとき、あのとき、なんだって?」
「あのときは、変な態度を取ってしまって」
「その態度を取った理由が、なんだって?」
ジョウは追及を止めない。
アルフィンは、できれば曖昧にしておきたかった、スルーしてほしかったところだったと内心思いつつも、促されるままにもう一度口にした。
「あのとき、なんだかその、あなたの声が聞こえてしまって。動揺したのよ。
声っていうか、思考っていうか、考えがダイレクトに脳の中に入ってきたみたいになって。
もちろん、空耳だったんだと思うけど」
上手く言えず、しどろもどろになる。
ジョウは怪訝そうな顔を見せた。ライフルの安全装置を確かめてから壁のフックに掛ける。
「何て聞こえたんだ。俺からあんな風に逃げ出すなんて、ショックなことだったんだろう」
「う、ううん。ショックっていうかむしろ嬉しいっていうか。ただ、びっくりしたっていうか」
「何て聞こえた?」
う。
アルフィンは言葉に詰まる。でも、正直に言うためにここに来たのだと言い聞かせ、
「か、可愛いって」
事実を口にした。
えっとジョウが硬直する番だった。
むちゃくちゃ恥ずかしい。でも、本当のことを伝えるのがこの人に対する誠意なのだと思った。
「あたしのこと、可愛いって。いじらしくてこんな可愛い人いないって。俺にできることならなんでもするって、
なんでもあげたいって、ジョウ、そう言ったのよ」
「えーーええ?」
声のトーンが、一オクターブ上がった。
ジョウが茹で蛸のようになっている。動揺のあまり、後ろによろめいて銃器が並べられた壁にどんと背を打った。
「な、なんでそんな。俺が?」
「そうなのよ、変よね。おかしいわよね。ジョウってそういうこと言うタイプじゃないし、だからあたし、焦ってしまって。――あんな風になっちゃったの。ほんとごめんなさい」
勘違いだったかも。聞き間違いだったかも。
そう言ってくれたらいいなあって強く思ってたから、願望があたしに暗示をかけたのかも。
きっとそう。
だから、あたしが悪い。アルフィンはしゅんとしおれた。謝罪の言葉を繰り返す。
ジョウは、最初はあからさまに狼狽え、アルフィンの言葉を受け止め切れていない様子だった。しかし、しょんぼりうなだれる彼女を見ているうちに、じょじょに冷静さを取り戻した。
「・・・・・・でもそう聞こえたんだろ。で、怖くなったのか」
「うん。――だって。あんまりストレートで」
「嬉しくは、なかった?」
ふと、ジョウの声音が変わった。アルフィンは床に落としていた目線を上げて彼を見る。
と、困ったような、少し寂しげなまなざしでジョウは彼女を見つめていた。
「俺がそういうことを内心、考えてたってことを知って、アルフィンはびっくりしただけか? ちょっぴりでも嬉しいとかよかったとか、思うことはなかったか」
「お、思った! それはもちろん。嬉しかったわ、それこそ天に昇るくらい」
そこは誤解してほしくなかったので力説した。
嬉しかったからこそ、不安になったのだ。可愛いだけ? 愛でられてるだけって?
ジョウはそれを聞いてふっと表情を和らげた。それこそ数日ぶりに彼の笑みを見て、アルフィンの心もほどける。
「よかった。安心した」
「ジョウ」
「アルフィンの聞き違いか何かはわからない。でもたまたま、君の感覚が研ぎ澄まされてそういうふうに誰かの思考がリアルに感じられる時もあるんじゃないかって思う。そんなに不思議なことじゃないのかもしれない」
「・・・・・・うん」
タロスとリッキーの時は全然聞こえなかったのよと言おうとしたけれど、思いとどまった。
ジョウの言う通りかも知れない。たまたま、あの時はリンクしただけ。彼の心の中の声にあたしの心が。
と、そこでジョウってば否定しないのねとアルフィンは気づく。あたしが言ったことを。聞こえた彼の心の中の声について、そんなこと思ってなかったよ、聞き違いだよとはまったく言わない。
・・・・・・じゃあ、あのとき可愛いって言ってくれたのは、この人の本心だってことよね?
なんだかどきどきしてくる。ジョウに謝りにここに来たときとは別の意味での心臓の高鳴りを感じる。
うれしい。なんだか、今になってじわじわと嬉しさがこみ上げる。
そうよね。あたしのこと、可愛いって思ってくれてるってことだけでも、ほんと、嬉しいことなのよね。
ジョウは、ドアの前に立つアルフィンに静かに近づいた。
「試してみるか。もう一度。君が、俺に抱きつくと心の中に俺の考えがまた入ってくるかどうか」
「――え?」
ジョウはアルフィンと20センチと間をおかない距離まで詰めていた。
対峙する。
狭い格納庫の低い天井。そこにあつらえられたLED電灯の光を背負って、ジョウの面は陰になって表情は窺えない。
黒い瞳が光を湛えているのが見えた。
「俺は、君に聞かれて困るようなことは何一つない。後ろ暗いことも。・・・・・・たぶん。
だから試してみよう。おいで」
ジョウはそう言って、手を軽く広げた。なんだろう、少し嗤っているように感じられた。
表情は見えないのに。
アルフィンは本能的に腰が引ける。でも背後がドアで逃げられない。
「たぶんって。い、いいよお試しは。きっとあたしの勘違い」
「そうか? まあ百聞は一見にしかずだ」
ジョウは間合いをさらに詰め、有無を言わさずアルフィンを懐に閉じ込めた。
「!」
ここ数日、距離を置かれていたぶんの意趣返しのように強く抱きしめられる。
急激に体温が上昇するのがわかる。視野を彼の身体でふさがれて、とっさにアルフィンは抵抗した。
「ジョ、ジョウってば。そんなにしたら痛いわ」
「じたばたするな。聞こえてるかどうか確かめられないだろ。ちゃんと集中して」
「あ、はい・・・・・・」
すとんと抵抗をやめた。
素直に彼に委ねる。手の力を抜き、身体の脇に腕を添えた。
はあ・・・・・・。よかった。
とりあえず、謝ることができて。怒ってないみたいで、ジョウが。
結局独り相撲だったなあ。だめだなああたし。勝手に思い込んで悩んで頭の中でぐるぐるして。
ジョウの気持ちとか置き去りにして。・・・・・・傷つけてごめんね。
もう喧嘩はよそうね。クリスマスの前に。
少しでも優しい気持ちであなたに接したい。
アルフィンは、彼の胸に頰ずりをした。抱きしめられているので、あまり動けなかったが。
――ジョウの声は聞こえない。やっぱりあれは、幻聴だったのかなあ。アルフィンは思う。
こう言ってくれたらいいのにっていう願望が聞かせた、あたしの心の投影だったのかな?
でもそれなら、可愛いより、好き、がよかったな。
あなたの口から聞くなら、そっちがよかった。もちろん、可愛いも嬉しいけど。
でも、クリスマスの告白なら、やっぱり「好きだよ」がよかった・・・・・・。
ジョウ、好き。
一番好きよ。会ったときからずっと、この先も大好き。本当に好き。
この世で一番愛してるの。
「・・・・・・」
押し当てていたジョウの左胸の、クラッシュジャケットから漏れる心臓の鼓動が早鐘のようだとアルフィンはその時気づく。
彼が、自分を抱きしめたままさっきから何も言わないことにも。
「?」
ようやく不審に思ってアルフィンが顔を上げる。と、間近にジョウの顔が合った。
目と目が合う。
アルフィンは見た。ジョウが、世にも情けない表情をしているのを。眉を八の字に下げて、目線が泳いでる。瞳孔も少し開いている? こめかみには汗だろうか。全身の血が頭に昇ったように、顔色は真っ赤を通り越して赤黒くなってしまっている。
狼狽を隠せない。こんなジョウを見るのは初めてだった。
どうしたの。あたし、何も聞こえないよ。やっぱり思い違いだったかもよと言いかけて、アルフィンの頭にうっすら閃くものがあった。
あ。
デジャヴ。――この表情、このしぐさを知ってる。あたし。
彼の中で何が起こってるのか、わかる。手に取るように。
ジョウは、「・・・・・・あの、」とくぐもった声を発した。
その当惑した一言で、アルフィンは悟る。
何が自分たちの間で起こったのかを。
がばっと身を引きはがした。ジョウから。
自分の身体をぎゅうっと両腕で抱きしめて、後ずさる。
「ジョウ、ま、まさか。ひょっとして、今の、あたしの考えてたこと、―――もしかして、丸ごと」
あなたに筒抜けてた?! と言う台詞は怖すぎて呑み込んだ。
立場が逆転してた? あたしの心の声があなたにダダ漏れだった?
い、いまあたしが考えてたことっていったら・・・・・・。
アルフィンはどかんと発熱した。金髪が逆立つほど。
うそ。うそうそうそー!
穴があったら入りたい気分でアルフィンは顔を覆った。どうしよう! 恥ずかしい。死んじゃいたい。
抱きしめられて気持ちよくて、かんぺき油断してた。
もうやだあ。泣き出しそうなほど恥ずかしい。アルフィンは地団駄踏みたい気持ちだった。
ジョウは、変わらず真っ赤になったまま、なんとも言えない優しい顔つきで彼女の前に立っていた。
照れくさそうだけれど、心の底から湧き上がってくる愛しさを隠しきれないとでもいうように。
そして、ひとこと呟いてみせた。
「なるほど。これが君の言うクリスマスの魔法ってやつか」
こういうこともあるんだな、そう言ってジョウはアルフィンに手を伸ばした。
その後の甘い時間は、甘すぎて書き切れないので割愛する。
今年のクリスマス。二人はペアリングを仲良く選んで、アルフィンは左手の薬指に、ジョウはペンダントトップとして肌身離さず身に着けることになった。
END
格納庫でライフルの弾丸の在庫を確認していたジョウは、手を止めて振り返った。
入り口のところにはアルフィンがいた。所在なさげに、それでも自分を励ますようにして彼と向き合う。
「いま、なんて?アルフィン」
聞き間違いかと思った。自分の。
だから聞き返した。
アルフィンは一度ためらったが、それでも唇を湿らせてから言葉を載せた。
「だから、その・・・・・・ごめんなさい。本当に。態度が悪くて、傷つけてしまって。反省してる」
アルフィンは再度頭を下げた。深々と。
背中から肩に掛けて金髪が流れる。顔を覆い隠す。
表情が隠れて更にジョウはじれた。
「いや、そっちじゃなく。その前。君が、こないだ俺に贈り物の話を切りだされたとき、あのとき、なんだって?」
「あのときは、変な態度を取ってしまって」
「その態度を取った理由が、なんだって?」
ジョウは追及を止めない。
アルフィンは、できれば曖昧にしておきたかった、スルーしてほしかったところだったと内心思いつつも、促されるままにもう一度口にした。
「あのとき、なんだかその、あなたの声が聞こえてしまって。動揺したのよ。
声っていうか、思考っていうか、考えがダイレクトに脳の中に入ってきたみたいになって。
もちろん、空耳だったんだと思うけど」
上手く言えず、しどろもどろになる。
ジョウは怪訝そうな顔を見せた。ライフルの安全装置を確かめてから壁のフックに掛ける。
「何て聞こえたんだ。俺からあんな風に逃げ出すなんて、ショックなことだったんだろう」
「う、ううん。ショックっていうかむしろ嬉しいっていうか。ただ、びっくりしたっていうか」
「何て聞こえた?」
う。
アルフィンは言葉に詰まる。でも、正直に言うためにここに来たのだと言い聞かせ、
「か、可愛いって」
事実を口にした。
えっとジョウが硬直する番だった。
むちゃくちゃ恥ずかしい。でも、本当のことを伝えるのがこの人に対する誠意なのだと思った。
「あたしのこと、可愛いって。いじらしくてこんな可愛い人いないって。俺にできることならなんでもするって、
なんでもあげたいって、ジョウ、そう言ったのよ」
「えーーええ?」
声のトーンが、一オクターブ上がった。
ジョウが茹で蛸のようになっている。動揺のあまり、後ろによろめいて銃器が並べられた壁にどんと背を打った。
「な、なんでそんな。俺が?」
「そうなのよ、変よね。おかしいわよね。ジョウってそういうこと言うタイプじゃないし、だからあたし、焦ってしまって。――あんな風になっちゃったの。ほんとごめんなさい」
勘違いだったかも。聞き間違いだったかも。
そう言ってくれたらいいなあって強く思ってたから、願望があたしに暗示をかけたのかも。
きっとそう。
だから、あたしが悪い。アルフィンはしゅんとしおれた。謝罪の言葉を繰り返す。
ジョウは、最初はあからさまに狼狽え、アルフィンの言葉を受け止め切れていない様子だった。しかし、しょんぼりうなだれる彼女を見ているうちに、じょじょに冷静さを取り戻した。
「・・・・・・でもそう聞こえたんだろ。で、怖くなったのか」
「うん。――だって。あんまりストレートで」
「嬉しくは、なかった?」
ふと、ジョウの声音が変わった。アルフィンは床に落としていた目線を上げて彼を見る。
と、困ったような、少し寂しげなまなざしでジョウは彼女を見つめていた。
「俺がそういうことを内心、考えてたってことを知って、アルフィンはびっくりしただけか? ちょっぴりでも嬉しいとかよかったとか、思うことはなかったか」
「お、思った! それはもちろん。嬉しかったわ、それこそ天に昇るくらい」
そこは誤解してほしくなかったので力説した。
嬉しかったからこそ、不安になったのだ。可愛いだけ? 愛でられてるだけって?
ジョウはそれを聞いてふっと表情を和らげた。それこそ数日ぶりに彼の笑みを見て、アルフィンの心もほどける。
「よかった。安心した」
「ジョウ」
「アルフィンの聞き違いか何かはわからない。でもたまたま、君の感覚が研ぎ澄まされてそういうふうに誰かの思考がリアルに感じられる時もあるんじゃないかって思う。そんなに不思議なことじゃないのかもしれない」
「・・・・・・うん」
タロスとリッキーの時は全然聞こえなかったのよと言おうとしたけれど、思いとどまった。
ジョウの言う通りかも知れない。たまたま、あの時はリンクしただけ。彼の心の中の声にあたしの心が。
と、そこでジョウってば否定しないのねとアルフィンは気づく。あたしが言ったことを。聞こえた彼の心の中の声について、そんなこと思ってなかったよ、聞き違いだよとはまったく言わない。
・・・・・・じゃあ、あのとき可愛いって言ってくれたのは、この人の本心だってことよね?
なんだかどきどきしてくる。ジョウに謝りにここに来たときとは別の意味での心臓の高鳴りを感じる。
うれしい。なんだか、今になってじわじわと嬉しさがこみ上げる。
そうよね。あたしのこと、可愛いって思ってくれてるってことだけでも、ほんと、嬉しいことなのよね。
ジョウは、ドアの前に立つアルフィンに静かに近づいた。
「試してみるか。もう一度。君が、俺に抱きつくと心の中に俺の考えがまた入ってくるかどうか」
「――え?」
ジョウはアルフィンと20センチと間をおかない距離まで詰めていた。
対峙する。
狭い格納庫の低い天井。そこにあつらえられたLED電灯の光を背負って、ジョウの面は陰になって表情は窺えない。
黒い瞳が光を湛えているのが見えた。
「俺は、君に聞かれて困るようなことは何一つない。後ろ暗いことも。・・・・・・たぶん。
だから試してみよう。おいで」
ジョウはそう言って、手を軽く広げた。なんだろう、少し嗤っているように感じられた。
表情は見えないのに。
アルフィンは本能的に腰が引ける。でも背後がドアで逃げられない。
「たぶんって。い、いいよお試しは。きっとあたしの勘違い」
「そうか? まあ百聞は一見にしかずだ」
ジョウは間合いをさらに詰め、有無を言わさずアルフィンを懐に閉じ込めた。
「!」
ここ数日、距離を置かれていたぶんの意趣返しのように強く抱きしめられる。
急激に体温が上昇するのがわかる。視野を彼の身体でふさがれて、とっさにアルフィンは抵抗した。
「ジョ、ジョウってば。そんなにしたら痛いわ」
「じたばたするな。聞こえてるかどうか確かめられないだろ。ちゃんと集中して」
「あ、はい・・・・・・」
すとんと抵抗をやめた。
素直に彼に委ねる。手の力を抜き、身体の脇に腕を添えた。
はあ・・・・・・。よかった。
とりあえず、謝ることができて。怒ってないみたいで、ジョウが。
結局独り相撲だったなあ。だめだなああたし。勝手に思い込んで悩んで頭の中でぐるぐるして。
ジョウの気持ちとか置き去りにして。・・・・・・傷つけてごめんね。
もう喧嘩はよそうね。クリスマスの前に。
少しでも優しい気持ちであなたに接したい。
アルフィンは、彼の胸に頰ずりをした。抱きしめられているので、あまり動けなかったが。
――ジョウの声は聞こえない。やっぱりあれは、幻聴だったのかなあ。アルフィンは思う。
こう言ってくれたらいいのにっていう願望が聞かせた、あたしの心の投影だったのかな?
でもそれなら、可愛いより、好き、がよかったな。
あなたの口から聞くなら、そっちがよかった。もちろん、可愛いも嬉しいけど。
でも、クリスマスの告白なら、やっぱり「好きだよ」がよかった・・・・・・。
ジョウ、好き。
一番好きよ。会ったときからずっと、この先も大好き。本当に好き。
この世で一番愛してるの。
「・・・・・・」
押し当てていたジョウの左胸の、クラッシュジャケットから漏れる心臓の鼓動が早鐘のようだとアルフィンはその時気づく。
彼が、自分を抱きしめたままさっきから何も言わないことにも。
「?」
ようやく不審に思ってアルフィンが顔を上げる。と、間近にジョウの顔が合った。
目と目が合う。
アルフィンは見た。ジョウが、世にも情けない表情をしているのを。眉を八の字に下げて、目線が泳いでる。瞳孔も少し開いている? こめかみには汗だろうか。全身の血が頭に昇ったように、顔色は真っ赤を通り越して赤黒くなってしまっている。
狼狽を隠せない。こんなジョウを見るのは初めてだった。
どうしたの。あたし、何も聞こえないよ。やっぱり思い違いだったかもよと言いかけて、アルフィンの頭にうっすら閃くものがあった。
あ。
デジャヴ。――この表情、このしぐさを知ってる。あたし。
彼の中で何が起こってるのか、わかる。手に取るように。
ジョウは、「・・・・・・あの、」とくぐもった声を発した。
その当惑した一言で、アルフィンは悟る。
何が自分たちの間で起こったのかを。
がばっと身を引きはがした。ジョウから。
自分の身体をぎゅうっと両腕で抱きしめて、後ずさる。
「ジョウ、ま、まさか。ひょっとして、今の、あたしの考えてたこと、―――もしかして、丸ごと」
あなたに筒抜けてた?! と言う台詞は怖すぎて呑み込んだ。
立場が逆転してた? あたしの心の声があなたにダダ漏れだった?
い、いまあたしが考えてたことっていったら・・・・・・。
アルフィンはどかんと発熱した。金髪が逆立つほど。
うそ。うそうそうそー!
穴があったら入りたい気分でアルフィンは顔を覆った。どうしよう! 恥ずかしい。死んじゃいたい。
抱きしめられて気持ちよくて、かんぺき油断してた。
もうやだあ。泣き出しそうなほど恥ずかしい。アルフィンは地団駄踏みたい気持ちだった。
ジョウは、変わらず真っ赤になったまま、なんとも言えない優しい顔つきで彼女の前に立っていた。
照れくさそうだけれど、心の底から湧き上がってくる愛しさを隠しきれないとでもいうように。
そして、ひとこと呟いてみせた。
「なるほど。これが君の言うクリスマスの魔法ってやつか」
こういうこともあるんだな、そう言ってジョウはアルフィンに手を伸ばした。
その後の甘い時間は、甘すぎて書き切れないので割愛する。
今年のクリスマス。二人はペアリングを仲良く選んで、アルフィンは左手の薬指に、ジョウはペンダントトップとして肌身離さず身に着けることになった。
END
⇒pixiv安達 薫
おすぎーなさん、お知らせくださってありがとうございますvとんと情報疎くてありがたいです。
もしかしたら、REBIRTH効果なのでしょうか。コワルスキさんがあんまし愛らしいんですもの。針井さんのコミカライズ。彼が別次元で今もご存命と思うと、なんだか心があったかくなります。
年末にうれしいコメントどうもでした。
あなた達は永遠にいちゃついてなさいっ😘(笑)
明日はイブニング発売日ですね❗️不時着した辺りですね~楽しみぃ~🎵
なななんと❗️高千穂先生が来年2/2に新作「コワルスキーの大冒険 (ハヤカワ文庫JA クラッシャージョウ別巻 3)」
が発売元されるそうですよ~🙌💕