デートの途中、カフェに立ち寄った二人。
窓向きのカウンター席を選び、スタンド式の高いスツールに腰掛けて、甘い物を頼む。
ジョウはラズベリーのジェラート、アルフィンはいちごのアイスクリームを。
ジョウが食べている手許を覗き込んで、アルフィンが言った。
「それ美味しそう、一口ちょうだい」
「ん」
ジョウはスプーンで掬って、アルフィンの口元に運んでやる。てらいもなく。
アルフィンはぱくっとそれを口に含んで、「んん~、美味しい!」と目を細めた。冷たさと、フルーツの歯ごたえのある感じが絶妙。
「ねね、ジョウにもあげる。あたしの、一口」
「俺はいいよ」
ジョウが遠慮すると、アルフィンがあからさまに眉をひそめた。
「食べてみてよ。つきあうの、こういうときは。ね、一口だけ」
そう言ってアイスを掬って同じようにジョウの口元にもっていく。
ジョウはここは素直に「じゃあ」と含む。
甘い。歯が浮きそうだ。
つい拳で唇を押さえたジョウに向かって「美味しいでしょ?」と無邪気に訊いた。
「美味いよ、でも甘すぎかな」
「アイスだもの、当たり前」
アルフィンはしれっとしたものだ。
ジョウは苦笑を浮かべ、右手の中でスプーンをくるっと弄びながら言った。
「アルフィンはこういう店に入ると必ず俺に言うよな。頼んだものを一口ちょうだいって」
まるで小さな子どもみたいに。おねだりをする。
「ん。そうかも」
ダメかな、とちらりと上目で見るから、
「ダメじゃないけどさ、全然」
ジョウが穏やかに笑っているので、いやがってはいないのだと分かって安心した。だから、打ち明けようかなという気になった。
アルフィンは横目で彼を窺いながら言った。
「だってさ、――間接キスじゃない。これって」
ちょっと、特別な関係っぽいことしたいじゃない? 外に出た時ぐらい、とごにょごにょ呟く。
その、声にならないぐらい、でも隣にいる自分には聞こえる声量で独りごちる感じが、ジョウの心を捉えた。
ジョウは器にスプーンを置いて、隣のアルフィンに向き直る。
そして、
「間接じゃなくてもいいんだぞ」
「?」
怪訝に思ったか、首を傾げたところに顔を近づけて、そっと唇を重ねる。
「――」
アルフィンは目を閉じることもままならなかった。
風がかすめていくような、軽いくちづけ。
冷たい感触がした。柔らかいだけでなく、ベリーの香りとともに。
ジョウの顔が離れていって、窓の方をまた向いてジェラートを掬って食べ始める。
数瞬遠のいた店の中の喧噪が戻ってくる。
「直接でもいいの?」
アルフィンは唇を指先で押さえながら言った。
「……し終わってから聞くな」
照れているのか、自分を見ようとしないジョウの肩にくっついて、「じゃあもう一回」と囁いた。
アルフィンのおねだりはアイスより甘いよな。そんなことを思いながら、ジョウはまた手を止めてアルフィンの顔に顔を寄せた。
END
人前では絶対こういうことをしなさそうな男がするのが反則級だと思っています。笑
窓向きのカウンター席を選び、スタンド式の高いスツールに腰掛けて、甘い物を頼む。
ジョウはラズベリーのジェラート、アルフィンはいちごのアイスクリームを。
ジョウが食べている手許を覗き込んで、アルフィンが言った。
「それ美味しそう、一口ちょうだい」
「ん」
ジョウはスプーンで掬って、アルフィンの口元に運んでやる。てらいもなく。
アルフィンはぱくっとそれを口に含んで、「んん~、美味しい!」と目を細めた。冷たさと、フルーツの歯ごたえのある感じが絶妙。
「ねね、ジョウにもあげる。あたしの、一口」
「俺はいいよ」
ジョウが遠慮すると、アルフィンがあからさまに眉をひそめた。
「食べてみてよ。つきあうの、こういうときは。ね、一口だけ」
そう言ってアイスを掬って同じようにジョウの口元にもっていく。
ジョウはここは素直に「じゃあ」と含む。
甘い。歯が浮きそうだ。
つい拳で唇を押さえたジョウに向かって「美味しいでしょ?」と無邪気に訊いた。
「美味いよ、でも甘すぎかな」
「アイスだもの、当たり前」
アルフィンはしれっとしたものだ。
ジョウは苦笑を浮かべ、右手の中でスプーンをくるっと弄びながら言った。
「アルフィンはこういう店に入ると必ず俺に言うよな。頼んだものを一口ちょうだいって」
まるで小さな子どもみたいに。おねだりをする。
「ん。そうかも」
ダメかな、とちらりと上目で見るから、
「ダメじゃないけどさ、全然」
ジョウが穏やかに笑っているので、いやがってはいないのだと分かって安心した。だから、打ち明けようかなという気になった。
アルフィンは横目で彼を窺いながら言った。
「だってさ、――間接キスじゃない。これって」
ちょっと、特別な関係っぽいことしたいじゃない? 外に出た時ぐらい、とごにょごにょ呟く。
その、声にならないぐらい、でも隣にいる自分には聞こえる声量で独りごちる感じが、ジョウの心を捉えた。
ジョウは器にスプーンを置いて、隣のアルフィンに向き直る。
そして、
「間接じゃなくてもいいんだぞ」
「?」
怪訝に思ったか、首を傾げたところに顔を近づけて、そっと唇を重ねる。
「――」
アルフィンは目を閉じることもままならなかった。
風がかすめていくような、軽いくちづけ。
冷たい感触がした。柔らかいだけでなく、ベリーの香りとともに。
ジョウの顔が離れていって、窓の方をまた向いてジェラートを掬って食べ始める。
数瞬遠のいた店の中の喧噪が戻ってくる。
「直接でもいいの?」
アルフィンは唇を指先で押さえながら言った。
「……し終わってから聞くな」
照れているのか、自分を見ようとしないジョウの肩にくっついて、「じゃあもう一回」と囁いた。
アルフィンのおねだりはアイスより甘いよな。そんなことを思いながら、ジョウはまた手を止めてアルフィンの顔に顔を寄せた。
END
人前では絶対こういうことをしなさそうな男がするのが反則級だと思っています。笑
⇒pixiv安達 薫
結婚した年齢からして、
こういうデートもあったでしょう。
外伝で、書いてくれないかなぁ。
ねぇ、高千穂先生。