みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1474「そっくりさん」

2024-10-08 16:25:28 | ブログ短編

 私は見知(みし)らぬ女性から声(こえ)をかけられた。どうやらその女性は、私のことを知っているようだ。だが、私の方はどこで会(あ)ったのか思い出せない。まったく記憶(きおく)にないのだ。
 その女性は私に向(む)かって言った。「どうして連絡(れんらく)してくれなかったのよ」
 なんの連絡だ? 私には思(おも)い当(あ)たることがまったくない。
「あたしに…あんなことしておいて、とぼけるんですか?」
 あんなことって…なんだ? 私は、何を言っているのかまったく分からないと答(こた)えた。するとその女性は目を吊(つ)り上げてまくしたてた。
「はぁ? そうやって逃(に)げるんですか? あたしのこと、もてあそんだのね!」
 女性は私の胸(むな)ぐらをつかんで、「こら、坂巻(さかまき)! 今になってとぼけんじゃねぇぞ!」
 私は女性の豹変(ひょうへん)ぶりに腰(こし)が引(ひ)けてしまった。でもこのままではぬれぎぬを…。私は、
「ちょっと待(ま)ってくれ。私は山本(やまもと)だ。サカマキなんかじゃない。人違(ひとちが)いじゃないのか?」
「ははぁん。偽名(ぎめい)を使(つか)ったのね。逃げようとしても、その顔(かお)はちゃんと覚(おぼ)えてるから…」
「だから…、本当(ほんとう)に知らないんだ。君(きみ)とは、会ったことはないはずだ」
「ウソつくんじゃないわよ。今夜(こんや)、いつもの店(みせ)で待ってるから。絶対(ぜったい)に来(き)なさいよ!」
 女性は私を睨(にら)みつけて行ってしまった。私はホッと胸(むね)をなで下ろした。でも…、いつもの店って…どこなんだ? 私は何も聞(き)かなかったことにした。
<つぶやき>自分(じぶん)とそっくりな人が三人はいるって言いますから…。そんなことなのか?
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0011「作家の気晴らし」

2024-10-04 17:12:08 | 超短編戯曲

   とある落ち目の作家の書斎。新米の編集者がはりついている。
先生「うーん。あーぁ。んがーぁ……。だめだ、書けない。(編集者に)君ね、ちょっと向こうに行っててくれないか。どうも、気が散っていけない」
編集者「だめです。僕が離れたすきに、逃げようとしてるでしょう。今度はだまされませんよ。今日が締切なんですから、がんばって書いて下さいよ」
先生「そうは言うけどね、書けないものは書けないよ」
編集者「お願いします。今日、原稿を持って帰らないと、編集長に何て言われるか」
先生「そうね。でも、まあ、クビにはならんだろう。君、知ってるかね。あの編集長の武勇伝。彼女はね、ああ見えても、柔術の達人でね」
編集者「先生。この間は、大和撫子で日本女性の鏡だって言ってませんでしたか?」
先生「えっ、そんなこと言ったかな。そうか、大和撫子で柔術の達人なんだよ」
編集者「もう、いいですから。早く原稿を書いて下さい」
先生「せっかちだね。そんなだから、彼女に嫌われるんだよ」
編集者「そんなことないですよ。彼女とは…」
先生「うまくいってるの?」
編集者「それは、まあ、それなりに…」
先生「はっきりしないねぇ。ほら、この間の誕生日。私の言った通りにしたんだろ。(間)しなかったの? だめだよ、君。女性にとって誕生日とは、一種のバロメーターなんだよ。相手の男を査定してるんだ。だからこそ、男はそこに勝負を賭けなきゃ」
編集者「しましたよ。先生の言った通りに…」
先生「そうか。それで、どうだったんだ?(間)もう、じれったいなぁ。はっきりしない男は嫌われるぞ」
編集者「でも、何で彼女の誕生日に、禅寺で半日コースの修業をするんですか?」
先生「あの禅寺は良かっただろ。心身ともに鍛えられて。あそこの半日コースはな、お勧めなんだよ。値段も手頃だしな。君の彼女も喜んだろ」
編集者「どうかな。でも、僕はつらかったですよ。もう、足はしびれるし…」
先生「だめだよ。彼女の前でそんな弱音を吐いちゃ」
編集者「でも、先生。最後のホテルっていうのは、どうなんですか?」
先生「良かっただろ、あのホテル。あそこのディナーは最高なんだよ」
編集者「それ、いつの話ですか? 僕たちが行ってみたら、ラブホになってましたけど」
先生「えっ? そうなの。うふ、うふふ…。良かったじゃない。盛り上がっただろ」
編集者「それどころか、ひかれちゃいましたよ。彼女、そのまま帰っちゃって…」
先生「そうなの。君の彼女は奥手なんだねぇ。そうだ。これを書いてみるかな」
編集者「ちょっと、やめて下さいよ。変なこと書かないで下さい」
先生「大丈夫だよ。君のことだとは分からないさ。それとも、原稿できなくても…」
編集者「もう。先生、まさか原稿のネタがほしくて、僕にあんなことさせたんですか?」
   先生は含み笑いをして、原稿用紙に向かいペンを走らせた。
<つぶやき>書けない時には、ちょっとした息抜きの充電が必要なんでしょうね。
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