みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1485「危険なカオリ」

2025-01-29 16:30:07 | ブログ短編

 僕(ぼく)は、ひょんなことから会社(かいしゃ)の後輩(こうはい)の娘(こ)と関係(かんけい)を持(も)った。関係といってもキスまでだけど…。でも、これはまったく事故(じこ)のようなもので、「ごめん」ですむはずだった。それなのに…、それからというもの、僕はこの娘(こ)に悩(なや)まされることになった。
 とにかく彼女はおかしいのだ。どんどん僕との距離(きょり)を詰(つ)めてくる。彼女の中では、もう結婚間近(けっこんまぢか)の恋人同士(こいびとどうし)になっているようだ。キスしかしてないのに…何でそうなるんだよ。だって、彼女だって知っているはずだ。僕には妻(つま)も小さな子供(こども)だっていることを…。なのに…。僕はどうしたらいいんだ? 僕が何を言っても、彼女には――。
 休日(きゅうじつ)。妻が子供を連(つ)れて出かけているときだ。ひとりで家にいると彼女から電話(でんわ)がかかってきた。これから会(あ)いたいと。僕は迷(まよ)ったが出かけることにした。待(ま)ち合わせは、どういうわけか住宅街(じゅうたくがい)…。彼女は先(さき)に来ていた。そして僕にこう言ったのだ。
「さぁ、行きましょ。内見(ないけん)の予約(よやく)をしてあるの。とっても素敵(すてき)なお家(うち)よ」
 僕は唖然(あぜん)とした。僕が足(あし)を止(と)めたのを見て、彼女は僕の腕(うで)を力一杯(ちからいっぱい)つかんで言った。
「どうしたの? これから二人で住(す)む家(いえ)なんだから、あたしは二人で決(き)めたいの」
「ちょっと待ってくれ。僕は…結婚してるんだ。だから、君(きみ)とはそういう…」
「もう、そんなこと心配(しんぱい)してるの? 大丈夫(だいじょうぶ)よ。もうすぐ…ひとりになれるんだから」
「なんで…、なんでそんなこと。まさか、妻に…。君は、何をしたんだ!」
<つぶやき>どうなってしまうのかな? これは、サイコパス的(てき)なあれなんでしょうか。
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0012「ラブレター」

2025-01-23 16:48:37 | 読切物語

 山田君へ。突然こんな手紙を書いてしまって、ごめんなさい。
 私が廊下で転んでプリントをばらまいてしまったとき、山田君は一緒に集めてくれたよね。あのとき、私、ちゃんとお礼も言えなくて。山田君は、そんなこともう忘れているかもしれないけど。私は、ずっと後悔してて。なんで、ちゃんとありがとうって言わなかったんだろう。ちゃんと言ってれば…。
 私、山田君と同じクラスになったときから、山田君のことがずっと気になってて。でも、声をかけることが出来なくて。この手紙を書くのだって、ずっと迷ってて。友達に相談したらね、ちゃんと告白した方がいいって言われたの。それで、私、決めたの。
 私、山田君のことが好きです。山田君は、他に好きな人がいるかもしれないけど、それでもいいの。私の片思いでもいい。こんな気持ちになったのは初めてで、自分でもどうしたらいいのか分からないんだ。今もドキドキしてる。でも、なんだか心の中がほわっとしてて、あったかいの。今まで悩んでいたことが、どっかへ行っちゃった。
 あのときは助けてくれて、ほんとにありがとう。もし、私のこと好きじゃなかったら、好きになれなかったら、この手紙は捨ててください。

「ねえ、あなた。さっきから何やってるの。そんなんじゃ、ちっとも片付かないでしょ」
「ちょっとね、昔の手紙を見つけてさ」
「もう、今日中にやらないと、あさっての引っ越しに間に合わないでしょ」
「ごめん。でも、懐かしくてさ。きみ、これ覚えてる?」
 男は女に色あせた手紙を手渡した。女はそれを手に取ると、「なに、これ?」
「何だよ。覚えてないの? ほら、学生のとき、きみが僕に…」
「知らないわよ。私、手紙なんか書いたことないし」
「えっ、そうだった?」
「もしかして、これラブレター?」女が手紙を読もうとしたので男は慌てて、
「駄目だって…」
 男は女から手紙を取り上げようとするが、女は逃げまわりながら、
「ねえ、誰からもらったのよ。白状しなさい」
「だから、きみからだと…」男はなんとか手紙を取り戻して、「よっしゃ!」
「もう、子供なんだから」女は悔しそうに言うと、「ほんとに覚えてないの?」
「うん」男は手紙をかざして、「名前も書いてないし。ほんとにきみじゃないの?」
「私は知ーらない。ねえ、そんなことより、あなたのガラクタなんとかしてよ」
「ガラクタって。あれは、僕の大切なコレクションなの」
「そうですか。あなたが片付けないと、私、明日の不燃ゴミに出しちゃうわよ」
「やめてくれよ」男はそう言うと自分の部屋に駆け込んだ。
「まだ持ってたなんて…」女は男が置き忘れていった手紙を手に取ると、懐かしそうにつぶやいた。「でも、これは、私が預かりますからね」
<つぶやき>初恋は青春の思い出。心のどこかに隠れてて、時々現れては消えていく。
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1484「本妻と複妻」

2025-01-19 16:25:52 | ブログ短編

 僕(ぼく)が家(いえ)に帰(かえ)ると、とんでもない光景(こうけい)が目に飛(と)び込んできた。妻(つま)と、僕の愛人(あいじん)だった女が一緒(いっしょ)にいるのだ。まるで昔(むかし)からの友人(ゆうじん)のように…。この二人はいつからの知(し)り合いだったんだ? まさか、愛人の方(ほう)から妻に近(ちか)づいたのか?
 きっと、僕から別(わか)れ話をしたからその腹(はら)いせに…。何て女だ! ちゃんと手切(てぎ)れ金(きん)を充分(じゅうぶん)に渡(わた)して、納得(なっとく)したじゃないか。それを…こんなことまでして…。まさか、僕との関係(かんけい)を妻にばらすつもりなのか? もしそうなったら、離婚(りこん)ってこともあり得(え)る。
 僕は平静(へいせい)をよそおって妻に訊(き)いてみた。二人はどういう知り合いなのか。すると妻は、高校(こうこう)のときの後輩(こうはい)だと…僕に紹介(しょうかい)して、「陸上部(りくじょうぶ)で一緒だったのよ」
 これは衝撃(しょうげき)だった。僕は愛人の経歴(けいれき)などまったく興味(きょうみ)がなかったから…。ちゃんと確(たし)かめればよかった。こんなつながりが妻とあったなんて…。まさか、それを承知(しょうち)で、こいつは僕に近づいたのか? でも、何のために?
 愛人は、僕とは初対面(しょたいめん)って感(かん)じで接(せっ)してくる。僕は必死(ひっし)に動揺(どうよう)を隠(かく)した。大丈夫(だいじょうぶ)だ。妻は、そういうことにはうとい方だから、気づくことはないだろう。きっと…。
 三人で食事(しょくじ)をしているあいだ、僕はこれから何が起(お)きるのか戦々恐々(せんせんきょうきょう)だった。愛人がとんでもないことを言い出さないかとビクビクしていた。おかげで料理(りょうり)の味(あじ)などまったく分からなくなっていた。これは拷問(ごうもん)だ。僕は最後(さいご)まで耐(た)えることができるのか?
<つぶやき>まるで副菜(ふくさい)のようにつまみ食(ぐ)い。いけませんよ、ちゃんとバレてますから。
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0015「いつか、あの場所で…」

2025-01-15 16:32:43 | 連載物語

 「おまつりの夜」2
 ゆかりと二人でお手伝い。とっても楽しかったよ。ゆかりのお母さんは面白い人だった。冗談ばっかり言って、私をいつも笑わせる。おばさんの手料理、美味しかったなぁ。ゆかりが料理上手だってことも分かる気がする。いつもお手伝いをしているんだ。私も少しだけ教えてもらった。
「そんなに面白い? またいつでもおいで、教えてあげるから」って、おばさんが言ってくれた。また教えてもらうんだ、絶対。
 おばさんの料理は豪快だ。大きな鍋を使ってどっさり作る。家族が多いから大変だよね。
「こんな田舎の味じゃ、お嬢さんの口には合わないかもね」
「とっても美味しいです」私は正直に答える。ママの味より美味しいかも…。
 ママはたまに手抜きをする。何でも手早くやらないと気が済まないみたい。それでときどきパパに叱られる。ママは、「効率よく家事をしてるの。私がいるからパパも気持ち良くお酒が飲めるんじゃない」って、笑いながらパパにお酒を注ぐ。
 こうなるとパパは何も言えなくなる。ママの笑顔には弱いんだ。この二人、ちょうどいい感じなのかな。言いたいことは言い合うんだけど、あんまり喧嘩にならない。何でだろう? 不思議な夫婦だ。…理解できない。
 お祭りの最後の日。いよいよ花火だ。今日もゆかりの家へ。お昼の後片付けをすませてのんびりしていると、おばさんが冷たい麦茶を持ってきてくれた。
「さくらちゃん、ありがとね。ほんと助かったわ」この三日間、ほんとに大変だった。
「あのーォ、私にも言ってよねぇ。手伝ったんだから」ゆかりがふくれてる。
「あんたはいいの」
「そんなぁ…」
「それより、これからさくらちゃんをお祭りに連れて行ってあげなさい」
「えっ、行ってもいいの?」
「さくらちゃんは初めてなんでしょう、ここのお祭り」
「はい」お祭りに行ける。やったーぁ。
「今からでも楽しめるよきっと。それに花火もあるしね」
 おばさんは私にお小遣いをくれた。お手伝いをしたお礼だって。
「私も手伝った」
「この前、あげたでしょう」
「お祭りよ。欲しいものあるし…」
「しょうがないね。お兄ちゃん達には内緒だよ」
 ゆかりはちゃっかりしてる。さすがだ。
<つぶやき>お祭りって、わくわくしますよね。それは大人になっても変わりません。
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1483「不具合」

2025-01-09 16:41:55 | ブログ短編

 彼は疲(つか)れ切(き)っていた。身(み)も心(こころ)もぼろぼろで何をする気力(きりょく)もわかない。そんな彼のことを、かいがいしく世話(せわ)をやくものがいた。でも、それは彼の恋人(こいびと)でも家族(かぞく)でもない。あいつだ。
 死神(しにがみ)は彼に言った。「ねえ、旦那(だんな)。そろそろお願(ねが)いしますよ。こっちにもノルマってのがありまして、そうそう旦那に貼(は)りついているわけにもいかないんで…」
 男の方はまだ死(し)ぬ気(き)にはなれないようだ。言葉(ことば)を濁(にご)す。
 死神は、「ほんとは一週間前だったんですよ。旦那が死ぬことになってた日は…」
 男は大きなため息(いき)をつく。死神はほとほと困(こま)った顔(かお)をして、
「悪(わる)いと思ってるんですよ。あたしが一日早(はや)く姿(すがた)を見せてしまって…。そんで、旦那が死ぬ機会(きかい)を逃(のが)してしまったんですよね。ほんと、申(もう)し訳(わけ)ない」
 男はこれみよがしにまたため息をつく。死神はますます困りはてて、
「これでもねぇ、旦那が気持(きも)ちよく逝(い)けるように努力(どりょく)してるつもりなんですよ」
 男は死神に背(せ)を向(む)けてしまった。死神は、どうしようもなくなって、
「でもねぇ、これはあたしのせいじゃないんですよ。前にも話しましたが、地獄(じごく)のシステムってやつが不具合(ふぐあい)を起(お)こしましてね。今、地獄じゃ大騒(おおさわ)ぎになってるんですよ。死ぬはずの人間(にんげん)がやって来ないもんだから…。やっぱ、あれですよねぇ。天国(てんごく)の真似(まね)なんかするから、こんなことになっちゃって…。天国のヤツらは大喜(おおよろこ)びしてるかも、…ですよね」
<つぶやき>不具合はいつになったら解消(かいしょう)するのでしょうか? でも、このままの方が…。
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