ヨルダン通信その2
5月に入り、さぞかし暑くなるだろうと思っていたが、最近は赴任当時のように涼しい。春のこの季節は日本やトルコと同じようにカモガヤの花粉症で悩んでいる。
仕事は順調にこなしている。日本庭園の建設予定地であるアブドゥンの敷地図をシハームから受け取り、私なりの提案図面を作成した。敷地の面積は2,500平方m程度。
《Abdoun(アブドゥーン)にある日本庭園の建設予定地》
ここヨルダンではトルコ以上に水が不足しており、後の管理を考えると、枯山水の回遊式庭園が妥当だろう。石や砂利は探せばただ同然で手に入るので、それらを多用したものとなる。結局、トルコのカイセリに作った日本庭園と雰囲気が似通ったものになってしまう。
《1回目の図面を作成》
しかし、今回は灯篭や竹垣、手水鉢等の材料は日本から輸入できそうだ。日本の材料が手に入れば、随分と日本庭園の雰囲気は出てくるだろう。 最初の提案図面を今回の日本庭園の主要な依頼先でもある“ヨルダン生け花インターナショナル”の会長に提出し、彼女の要望を聞いた。生け花の展示や作業のために、100平方m程度の日本的な建築物と作業道具を置く小屋が必要との事。
《ヨルダン生け花インターナショナル協会の会長(左)と日本庭園の計画を練る》
その他は私の提案が気に入ったようで、現在の雰囲気を残しながら、2回目の提案図面の制作に取り掛かった。 Macのコンピュータを持ってきていないので、久しぶりに手描きの図面になるが、ほぼ平面図とパース(鳥瞰図)は完成した。
《2回目の図面に取り掛かる》
次に、工事費の概算を出す。 概要が決まれば、この計画を日本の万博記念基金に申請するとのこと。上手くいけば来年度に工事に取り掛かる予定だ。果たして順調に計画が進んでくれるだろうか? アラビア語で、インシャッラー(神のご加護があれば)!! トルコとはイントネーションが微妙に違うが、まさしく神のご加護があれば上手く行くに違いない。
さて、観光はヨルダンでの任期が3ヶ月しかないので、休みの日は精力的に動いている。事務所の仕事仲間であるサートの家(アンマンから車で1時間足らず、ザイという村に住んでいる)にも宿泊し、彼の弟の結婚式にも招かれた。披露宴では250名分ものマンサフ(羊の肉をヨーグルトのダシで煮てサフランライスと一緒に食べる、ヨルダン独特のもてなし料理)が用意され、見応え十分。
《自宅前で、朝食を前に、サートとお父さん》
《サートの姪っ子》
《たくさんのヤギや羊の世話をしているサートの甥っ子。田舎の風景に感激!》
《サートの親戚の結婚式に招待される。花嫁と花婿》
《250人が一斉に結婚式のもてなし料理のマンサフを頂く》
《サートの伯父さん。なかなか絵になるショットが撮れた》
《さーとのお姉さん》
そして、ヨルダンではインディージョーンズ“最後の聖戦”のロケ地となったペトラ遺跡があまりにも有名だが、ペトラに次ぐ遺跡のジェラシュへ行った。ここはアンマンの北50kmにあり、ローマ人がアラブに作った都市の中でも最も華麗で壮大な遺跡だ。非常に暑い日だったが、帽子を忘れたので、みんなが頭に被っているアラブのターバンというかスカーフを買う。他の観光客の目を惹き、ちょっとアラブ人になった気分。春の花で満開の遺跡を見学した。
《ジェラシュの凱旋門で。頭にターバンを巻いて、アラブ人気取り》
《ジェラシュの円形劇場》
《エンタシスの柱が並ぶ》
《空に突き上げる神殿の柱》
《ジェラシュの数珠売り》
また、イスラムの礼拝日の金曜日に、ダウンタウンにあるキング・フセイン・モスクを訪れた。モスク内にあまり人が入っていなかったので、とりあえずFさんと中に入り、座ってカメラで隠し撮りしていた。 すると人々が続々と入ってきて抜け出すこともできず、とうとう礼拝になってしまった。
《ダウンタウンにあるキング・フセイン・モスク》
周りの人々の真似をしながら、1時間半あまり、イスラム教徒と一緒に礼拝をすることになった。
《静かにコーランを読む老人》
日曜日はイースターだったので、マダバという街にある教会でイースターのミサを経験。金曜日はムスリム(イスラム教徒)に日曜日はキリスト教徒になってしまった。様々な神を信じられるのも非常に寛大な?仏教徒のお陰だろう。
《マダバの教会でイースターのミサ》
《有名なセント・ジョージ教会のモザイク地図》
このマダバから10km程離れたところに、旧約聖書に出てくるモーゼゆかりの地、ネボ山がある。モーゼがヘブライ人を率いて、エジプトから脱出する物語だが、シナイ山で有名な十戒を授かった後、死海のあるヨルダン渓谷を北上する。そして、このネボ山で人々に“あれが約束の地だ”と山頂からパレスチナを指し示し、自分はここに留まったとされる・・・。 まさしく、モーゼ終焉の地なのだ。また、途中にはモーゼが岩を杖で打つと、水が湧き出したと言われるアイン・ムーサの泉があった。ここヨルダンは旧約聖書の舞台。旧約聖書に思いを馳せ、ロマンの世界に浸ることができた。
《ネボ山頂にあるモーゼの杖のモニュメント》