にざかな酒店

我が龍神六話

というわけで。昼にも五話をあげてるので、読んでる方は一つ飛ばさないでくださいねー。
ロッドの一人称マジックがなくなったので、こういう、急にあなたどうしちゃったのイベントが起こるんですねー、第六話。
ここからの展開は割とステレオタイプ、いやいや、王道なんだ展開です。
では続きどうぞ。
宿について、ロッドが何か考え込んでいるなあ、とサラが思っていると、彼は部屋を二部屋とったあと、「一応部屋は二部屋とったが、話があるからいったんこっちに来い」といった。
「というか…金の問題だが、普通に両替すればいいんじゃないのか」
思わぬ話題に、サラは思わず「ふえ!?」と言葉をだした。
「両替するとこあるの!?」
「あのな。ないことにしてるのはレメティーナの国だけで、ミルファーナはレメテイーナを切ってるわけじゃないんだ。こっちは普通に交流する気はある」
「なーんだー…そうなんだ」
サラはとりあえず自分が一文無しではないと知って、胸をなでおろした。そこに静かな声が降ってくる。
「そこで、だ。お前はどのくらい持ってる?」
「え?さっきお金の心配はしなくていいって言ったよ?」
「まあ、当面はな。だが俺だって何日も仕事ストップされたりすれば当然収入はないし、よく考えればそれよりお前にそこまでしてやる義理も無い訳だ。そこで、お前が護衛のために俺を雇い直す方向で話を進めたらどうかと思ってな。そこまで持ってるかどうか知らんが。飯も作らなくていい」
それは、つまり今までの関係をいったん白紙に返すという提案だった。
「それに、だ。お前フーリンカに行くと言ってるが知り合いはいるのか?行けば一から人間関係を作らねばならんのだぞ」
「………」
サラは黙り込んだ。
今までいい人だとついてきたのに、それではいけなくなったのだ。
思ってみれば、それも当たり前なのだが、急には飲み込めなかった。
「………とりあえず、これだけもってるけど」
持ってきた金の袋をだす。
とりあえず、サラは中身を出さなかったので、ロッドは重さだけ確かめた。
「これだけあれば十分じゃないのか。ところで、さっきスノウが言った事、覚えてるか?」
「ワープゲートの材料が足りない?」
「良いカンしてるな。ということは研究所は新しいワープゲートの設置場所を探しているっていうことだ。お前の村はなんて言う村だ」
「レミナ村、だけど」
「龍神がいるような村なら、魔力的な磁場はいいはずだ。ワープゲート設置できるんじゃないか?クラウフだったらその場所には興味はあるだろう」
ようするに、帰れといってるわけだった。
「そこまですれば、俺の責任はそこまでだろう。後のことは、龍神と相談してやってくれ」と、そこで龍神が天井からひゅるるんと弧を描いてロッドの肩に止まった。
「ろったんそれないわー」
羽を大きく広げ、非難モードである。
「誰がろったんだ。誰が」
「ここまで来てつめたいー」
「変態は領主だけで、追っ手は俺が思うに、サラの仕事仲間だろう。格好が神官みたいだからな。ということはそれほど大した問題じゃない。お前らが逃げてるから問題がこじれてるんだ。俺はここまで面倒見てるだけでも十分すぎると思うんだが」
「じゅーぶんすぎない、サラのごはんおいしい、ご飯たべたらなかまなかま」
「さすが神、上げ膳据え膳にはなれてるわけだ…」
九官鳥みたいなしゃべり方だがな、とロッドは頭を抱えた。
「そんなことない。信仰無くしてるものもレメティーナにはいっぱいいる」
「とはいえ、サラをしばりつけておくのもこの辺でやめておいたらどうだ。ここまで来てるのはお前のわがままだからな」
龍神は、丸い瞳に静謐な光をたたえた。思わずサラの方をみる。彼女はにっこりと笑っていた。
「……私は、龍神様の巫女だから、龍神様の好きにするよ。」
「…わかった。わしも、巫女のためにガマンする。帰ろう」
「龍神様…」
「じゃあこれで話をすすめよう。よかったな。」
人ごとの口調だった。そのかわり、とサラがきっぱりといった。
「そのお金、全部預けますからね。帰るまではぜったい私たちを裏切らないで。いい?」
この台詞に、ロッドがはじめてうろたえた。
「全部って…本当に全部か?さすがにそこまではいらんぞ」
「だって結局両替してもらわなきゃ私たち一文無しだもん。家まで帰れば多少のお金はあるし」
つーん、とサラは横をむいた。
「まさか、この金、神殿からパクってきた金じゃないだろうな」
「ちゃんと私が巫女の仕事で貯めたお金ですよ。無趣味だから結構たまっただけ」
「…ならいいが。しかし全部はいらんぞ」
「いいから」
「………解った、でもこれで俺はただの雇われだからな」
「ろったん冷たい」
「お前はいいから。ろったんって定着させるな」
「ろったん☆」
「やめろ気持ち悪い」
「龍神様、部屋に帰るよー…せっかく、部屋余分に借りてくれたんだから、好意に甘えようよ」
「わかった」
くるくると動き回る龍神を連れて、部屋を出て行くサラの後ろ姿に未練が無いわけではない。が。
これが最良の選択のはずだ。
はず、だった。

「わしに力があれば、そもそも巫女にこんな思いさせなかったのに…」
「ん、龍神様、何か言った?」
「わし悔しいわー…」
その龍神の思いが、とんでもない災難を運ぶ事になる。
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