まあ簡単な村おこし企画ものがこじれたお話です。続きでどうぞ。
疲れ探偵舞台に立つ(疲れ探偵かける美人戦記2)
変わった依頼が舞い込んで来た。
この町で素人ばっかり集めて舞台をやる、というのだ。
それも演目もよくよく変わったものであって、本物美人、偽物美人、ブサイクなどが織りなすドタバタ喜劇ではあるのだけども、登場人物はみんな仮面をつけるのである。本物や偽物の美人などと言っておきながらそれはあくまで役として割り振っているのであって実際のところの顔がどうとかいうものではない。監督に聞いてみると「その辺は色々と想像してもらえるといいと思います」ということらしい。
どうも久呂さんもほぼ無理矢理引き摺り込まれたらしく、本物美人の役であるらしい。
で、なぜか僕が巻き込まれる探偵役、ということで。まあ探偵は本物?うーんなのだけれども本物なので引き込まれてしまったのだった。で、どうやらこの素人劇団で、事件起こるらしいですよ。というのが今回のお題目なのである…。
「と、いうわけでセクハラ問題厳しい世の中なせいか、内容公表したら、脅迫状来ちゃったんですよ、ははは」と、監督はいう。
はははじゃないだろう。ははは、じゃ。
それもその脅迫状というのも見せてもらったがこの世のものかというくらい、悪筆でもはや幼稚園児が書いたんじゃないかと思うくらいのものだった。
一応漢字は書けているので幼稚園児ではないようだが。
本物美人、偽物美人って確かにセクハラに聞こえるなあ…。
「むしろ内容的には真逆なんですけどねー、みんな外面にこだわるからー」
まあ、確かに脚本の内容にも「偽物美人の方が美人として美味しいとこばっかり吸っている…!」とかいうセリフがあったり「神経症患者は美人ばっかりだ」(このセリフはもしかして筒井康隆が元か?)とかいうものがあったりするなあ。
しかし美味しいとこばっかり吸ってるという偽物美人差し置いて本物美人のがブサイクに刺されちゃったりするしなあ、この脚本。まさか本物美人(?)の恨み買ったんじゃないか?
公募で妹に無断で申し込まれて仕方なくやって来た間宮真奈美という女性(なんか前に見たことあるような…少女と言ってもいいくらいだが一応女性、な年らしい)もこれはねえ…と言っていた。「登場人物が全員仮面被ってるのはひとかけらの良心だと思いますよ?あんまりにも美人の扱いひどいもの、このお話。」でしょうねえ…。
まあ、でも話として作ったからには何かの意味があるのだろう、この話も…。
と思いながら一応稽古らしいことはしたのだが、やはり素人ばっかりだし統率も取れていないのである。これはどうも暗礁に乗り上げるぞ、この話…。
「で、これ脅迫状届いてるのに刺される役とか私、どうすればいいんですか?」と、久呂さんも監督に問いただしてたし。
「こういう話は大体舞台上で殺人が起こる、というのが定番だと思うのですが?」
温厚な久呂さんもさすがにちょっとキレ気味である。
「もし何かあったら責任取れるんですか」
「それ以前に、役名ブサイクてどういうこと?」という声も多数上がっている。
「それものっぺらな仮面つけて、やってられっか!!」
まあ、それもそうだろう…。
絶対これはダメだろうから、ダメならダメで監督が殺されない程度のところで諦めてもらうしかないのであった。うーん、というか、題材がそもそもダメだったな、これ。チームプレイに向かない。
「この町村おこしとかするならもっと題材あるはずなんですけどねー」と間宮さん。
「いっそのこと監督置いといてそっちの方話進めて見ますか?探偵さん」と横から久呂さんもいう。
「殺人事件とか関係のない舞台、ねえ…いっそミュージカル的な?」
「ああ、それいいんじゃないです?歌って踊ってたらそれなりにハッピーに見えるじゃないですか」
「っていうか市民が出る劇で美人やのブサイクやのなんやのだめだよねえ」
「ねえ」
「もっと楽しく行かんと。漫才やコントでもええんとちゃう」
「んー、今の漫才なあ…もっとこう、グルメイベント的なものでもいいかも」
村おこし、とかそういう話題になっていくとそれこそ年齢や性別や職業飛び越えてみんな盛り上がっているように思えて来た。でこうなってくると、監督が一番はみ出し子なのである。
「人がこんなひなびた町を栄えさせてやろうって頑張ってるのにお前らなんだ!!事件起こりやすい町とかいうからその方向で色々考えたのに!脅迫状だって左手で書いて!」
…はあ、自作自演だった、わけ、ですね。全員ため息。
もはや何がしたいのやら。
とりあえず、なんか目立って見たかったと…。素人ばっかり集めるとかいいだしたのも、予算が取れなかったりとか「よく上の理解取れましたねー」な感じだったんだけど、これは実は逆転の発想?でこの監督、実は役所の企画部だったらしい。ああ、その…村おこし課、みたいな…。
まあでも、一応公募とかで集まった人たちが監督置いといて自分たちでイベントやる気になってるので、これはこれで意味があったことなのか。うん。
そんなわけで、みんなあっさり舞台の話は白紙に戻ったのである…。
まあ、なんというか現代風刺みたいなの、村おこしにはいらんよね、という結びなのであった。
というか、監督おかしいで逆にみんな仲良くなったからこれはこれでいいのか。うーん、だけど。
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