これ、軽くネタバレか?
まあ続きでどうぞ。あ、今日は親が店にいるのでちょっと休憩に戻って来て追記を足しました。
さらに追記。ちょっとしたことですけども。
疲れ探偵 古木美保
いつも本を差し入れている病院のおじいちゃん(他人)のところから事務所に帰る途中、疲れ探偵こと塚田公平は女子高生に声をかけられた。
しかしうっかりしてると昼でも冷えてくる秋のこの頃。軽く手をさする。
「あのね、探偵さん。私バイト代入ったんだー。ちょっと一緒にお茶しません?いつぞやのお礼もあるし」
ん?と、言うことはこの子はいつかの依頼人なのだろうか。そういえば顔に見覚えもあるような。
でも依頼人にしては、なんかもっとよく見てる顔だな。気のせいだろうか。
「なんかそう言うの、援助交際っぽいしやめて置いたほうがいいと思う」
横を向きながらそういい、ついっと元の道に戻ろうとした。とててっと付いてくる女子高生。
「援助交際じゃないわよ。失礼な。女子高生みんなそんな目で見てるの?」
「見てないから言ってるんじゃないか。まともな子の方が大半だろ?」
「うん、だから私まともな子だってば」
どことなくこのこ、動きが細かくてリスっぽい。
なんだかちょっと変な子だけどなあと思いつつ、逆にまた相談があってそう言ってるのかもしれない。と、探偵は思いとどまった。
「まあ、それは信じるとして、でも女子高生に奢ってもらうのは大の男として恥ずかしいな」
「だったら探偵さんのお金でお茶すればいいじゃない。とにかく、付き合って欲しいの!」
「付き合うのは別に構わないけど、もうちょっと人の目を気にしてくれない?」
なんだかそろそろ人の目が痛い。
「別にいいじゃないの、探偵さん女子高生の知り合いいっぱいいるんでしょ?」
「でもそれは成り行きだよ。僕が望んだわけじゃない」
「袖すり合うは多少の縁だよ」
「難しい言葉知ってるね」
探偵はため息をついた。空にうろこ雲。
「今の女子高生バカにしてるでしょ、それ」
「って言うか、女子高生だよね?今昼なんだけど」
女子高生はキョトン、とした。
「今日土曜日だよ?」
「あれ、そうだっけ。だったらなんで制服なんだよ」
「女子高生が制服着て悪いんかい」
まあ、そりゃあ悪くはないだろう、女子高生だから。んーまあ、いいけどさ。やっぱなんか訳ありなんだろうか。
で、連れてこられたのはなんか…見て、ぎょっとした。ここ、「新米かあさん」みたいな人いっぱい集まってるカフェなんだけど…。
「んー、でね、探偵さん。本屋で若ママさんみたいなのが二人揃ってね、子育て大変だって言ってるんだけどさ。その横で子供ピキャピキャ泣いてるんだよね。なんで放置?子育てしてるんなら義務忘れないでよねー、聞いてる?」
「聞いてる…って言うか、君、確信犯だろう、これ」
探偵はミルクティをまずそうな顔でずずっとすすった。
「なんの話?子育てっていうか、くそだてだよねー」
声が大きい。
「君ねえ、今の子育て家庭は大変なんだよ。昔までの家庭ならなんとなく近所の人とかよく見てくれてたとか話ししてるけども、今の人たちは全部自分の肩に乗ってるだろう?よく産後うつがどうとかテレビでやってるじゃないか」
「って言ったって、ねえ。自分たちが周り頼れないようにしてるのが悪いんじゃない。自己責任よ。だいたい子育てしてるとか言いつつこんなカフェ来てるでしょ」
きっぱり、と女子高生。
「っていうか、君今までの依頼人の中のどれか、でもないだろ。君の顔が見覚えあるのは…」
皆まで言うな、とばかりに彼女はにっこりと笑ってレモンティのストローを軽く持ち上げた。
「そ、私のバイト先はそこの大きい古本屋だよん」
つまり、彼女が探偵に用があったのは「バイト先の平和を守りたい」と言うそう言う意図だったのだ。
にこにこする彼女。ため息をつく、探偵。
「だってみんな、うちのバイトのことかみんな辟易してるんだよー?本まともに読まないような若ママさんたちがさー何がネットの論調で子育てする人みんな麗しいだよー」
「もういい…」
勘弁してください…。
か、完全にはめられた…。そりゃそうだよな。女子高生とお茶なんてそこには罠があるに決まってる。これから気をつけよう。
「君が大変なのもわかるけど、もうちょっと愛をだなあ…」
「愛なんてこの世の中にあるか」
軽いボールのように彼女は言った。
「まあ、今日はこんなもんでいいでしょ。事件起こったらよろしくね、探偵さん。私、古木美保って言うんだ」
その名前は多分忘れんわ…。
「今日はここ、奢っとくから。その代わり、僕を頼るようなことにはならんように」
「えー」
「えー、じゃない。人に喧嘩売るのは怖いことなんだから。わかった?」
「まあ、奢ってもらえるなら文句言わないけどー。援助交際嫌なんじゃなかったの?」
「これは援助交際じゃなくて、自衛だから」
「困った女子高生と古本屋を見捨てるんだー」
「あのね…って言うか、君たちの問題なんだから」
「そんなこと言ったら探偵さんが出かけるたびに「ぴきゃーたん」が付いてくる呪いかけてやる」
かけなくても結構そうなってるよ…。
「あのね、これは社会問題です」
じょ、女子高生ー…。じゃない、古木さん。
「今日のところは、これくらいで…」
彼女の笑顔はやたら明るかった。
「うん、またね、探偵さん」
女子高生のハートマーク、怖い。
で、次の月曜日、朝のうちにくだんの古本屋に行く。
ブックセンターフルキ。中くらいの規模のまあまあの古本屋。なんとなく、疲れ探偵にはきになることがあったのだ。この小説、なんか三人称の文で平気に嘘ついてるような気がする。と。
なんとなく外からそうっと覗くと…。やっぱりいるし。古木美保。
ブックセンターフルキだし、やっぱり「バイト」じゃなくてそこの「娘」だ。
で、やっぱり女子高生なのは変装だったんだ。ほら、月曜日なのに朝からいるし。
そうっとのぞいた疲れ探偵に気づいた古木美保はあの懐っこい笑みを浮かべて言った。
「やっぱりバレちゃったかー。そう、私本当は二十歳超えてるのよ」
「やっぱり…」そんなことだろうと思った。
「ダメだぞ、ミステリっぽいので三人称の文で嘘ついたら」
「でも女子高生なんて制服着てたら女子高生って書くしかないじゃないの。少女って書くのも嘘くさいでしょ」
「まあ、そうだけど」
「それにこのシリーズなんちゃってミステリにもなってないからいいのよ」
そう言う問題だろうか。
「所詮お客としてぴきゃーに店で会うなんて言ってみれば一瞬だからいいわよね」と、遠い目。
「そう、お客がこの店いつ来てもぴきゃーに会う、とか思ってたらその軽く十倍…いや、それ以上?は店員さんはその声聞いてるわけだね…まあその点に関しては深く同情するけど、やっぱりあれはよくなかったんじゃない?」
「まあ。よくはない。」とキッパリと言った後古木美保は被りを振りながら言った。
「でもあれは仕方ないわ。こっちもちょっとくらいはかましとかないと。」
相互関係として不毛と言うか。どっちもどうしようもないというか。行き詰まりだなあ。と探偵は思う。
「やっぱりうるさいおっちゃんでもいない世の中はダメねえ」
今よそのこ怒っちゃダメだもんなあ。親の方が怖いもん。
「でも子供のこと思ったら世間に迷惑かけないように育てた方が本当はいいんじゃないの?ある程度世間に通用するように。人に迷惑ばっかりかけて世の中に冷たい目されるのが当たり前になった子なんて育っても不幸よ」
まあ、表向きいい子の怖さも今は大概みたいだけども。
「まあとりあえずお母さん方に君がボコボコにされてなくてよかったよ。」
「ああ…一応四人くらいで来たけど論破したから。その時他のバイトの子も加勢してくれたし」
探偵は絶句した。
「…お疲れ…」
「新米ママだったからまだマシだったわ。おばちゃんだったら色々もうダメだったけど」
おばちゃんには探偵も喧嘩売れない。探偵は昔元ヤーさんを論破したが。
「客商売は本当に大変だね…隠れてネチネチしてくる人だけは絶対敵に回さないように。まあせっかく来たからオススメの本でも聞こうか?」
古木美保はにっこりと笑った。今の笑顔は割と本物だった気がする。
「ありがとう、探偵さん」
で、さらに追記です。
1、その昔疲れ探偵がうっかり論破した元やーさんは「おう、ひょろひょろした探偵だと思ってたけど以外とやるじゃねえか!一緒に飲みに行こうぜー!」となって疲れ探偵を非常に後悔させました。後でするから後悔っていう。元やーさん、飲みの方はとんでもなく底なしだった…。(爆)
付き合うんじゃ、なかった…(ばい疲れ探偵)
2、古木美保の独白
実は、あの時…確かに同じバイトの子も助けてくれたんだけども。実は一番…スーパーの袋にクロワッサンの入ってる女の人が最強だったの。だけどもどうやらバイトの子情報によるとクロワッサン女と探偵さんはそこそこ仲がいいようだから黙っていよう。本当の、補足です。
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