「海がみたいな。」
そらがそう言ったのは一昨日の事。
明日は学校も休みだ。
最近元気の無いそらのために、一肌脱いでやるかと俺は電車に乗る。
電車に乗って中央林間。
そこから乗り換えて江ノ島に向かう。
道中、そらの住む近くの駅を通過する。
今は通り過ぎるだけ。
そこにどうしようもない虚しさを感じる。
俺は、どうしたいんだろうな…
車内から見える田舎の風景。
二人がこの景色の中に写るようになるのはいつになるのかと思い馳せる。
何故会わないのか。そらが拒むのはわかる。
だが俺自身、本当に会いたいと思っているのだろうか。
俺は、本当にそらを好きなんだろうか。
考えだせばキリがない。気付けば終点。
これが、そらの見ていた海か。
思っていたより感じるものは無い。
元々風景に興味がある訳でもない。
ただの海、だな。
そう呟き、苦笑しながら海沿いに歩き出す。
時刻は夕暮れ。
季節外れだからだろうか、人はあまり居ない。
適当な場所に座り、携帯で写真を撮る。
海に来たぞ、と。
そらは喜んでくれるだろうか。
それともこの時間までメールしなかった事を怒るだろうか。
そういえば、そらが怒ってるとこは見たことないな。
地平線を眺めながら、物思いに耽る。
海と空が繋がることはない。
地平線で繋がったように見えても、実際はどう足掻こうが平行線が続く。
まるで、俺とそらみたいだな。
海に日が沈む。
もうじき夜が来る。
夜明けは遥か10年先。
暗いくらい夜が来る。