毎日が遺言

ツバメのヒナ

 今朝、出勤しようと思ったら、車の傍にツバメのヒナが死んでいた。まだ毛も生えていない赤裸のヒナだった。
 ツバメの巣を見上げたが、他のヒナは見えなかった。頭に黒い毛が生えるくらいじゃないと巣の縁から顔を出さない。巣の中のようすは全然わからない。ただ、巣が壊れていなかったし、カラスに狙われたのではなさそうだった。
 以前、ヒナが多くて、そのうちの一羽が何度も巣から落とされてしまい、しかたなく家に入れて育てたことがある。一羽はすぐに死んでしまったが、もう一羽は飛べるまでに成長し、ある日突然外へと飛び出し、ツツジの植え込みで一休みしたあと空へと飛び去った。数日後、一羽のツバメが台所に舞い込んできて神棚に留まり、すぐに再び空へと上がって、そのままツバメの集団の最後尾につかず離れず飛んで行った。おそらく集団について帰っていったんだろうと思う。
 今日のヒナは残念ながらそこまで成長していなかった。
 亡骸はガレージの横の植え込みによけておいた。その後妻が埋めておいてくれた。
 もう少し成長していれば、あるいは落ちるタイミングがもう少しずれていれば、助かった命なのかも知れない。
 偶然と、冷酷な淘汰に支配されながら、この世の命の消長がある。
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