海辺のカフェMARZO

都会の片隅で気ままに暮らすがんサバイバーの記録

大部屋向きの人

2024-07-10 05:23:00 | ここまでの治療のこと
「がんで入退院を繰り返す」と言うとなんだか大変そうですが、どれくらい大変かは個人や状況ですごくばらつきがあります。

がんも話題にできる仮想の海辺のカフェMARZO
店主です。

今日は入院のおはなし。


私の場合は
・告知に至るポリープ切除手術で1泊
・開腹手術で11泊
・抗がん剤治療で3〜4週間おきに1〜8泊の入院
(初回だけ8泊、以後基本的に2泊)

抗がん剤は6回「入退院」を繰り返します。

開腹手術で目に見えるがんをすべて取り切っているため元気。開腹手術から約1ヶ月以降は活動の制限はなく、毎週の血液検査の通院はもちろん、入院2泊ならリュック1つで公共交通機関(電車かバス)で往復しています。


大部屋が意外に良い

入院の時は大部屋を利用しています。1室に4つか6つのベッドがあります。抗がん剤の点滴も自分のベッドです。

4つが埋まることはまあまあ有りますが、6つ全部は少ないかな。
Wifiが入るので、PCやスマホでネット接続できるので十分快適です。

各ベッドはカーテンで仕切られているのでプライバシーはかなり高く保たれています。夜9時から朝6時までは消灯ですが、消灯後もベッドの枕元の灯をつけても良いです。医療処置などが必要な場合には、カーテン内だけかなり明るくできる天井のライトがあります。

同室に手術直後の人がいたりすると、血栓予防のための両脚のポンプの音が一晩中鳴っていますが、そこまで大きな音ではないので睡眠に支障はありません。

むしろそういう「これから受けるかもしれない治療」「前に受けた処置」の予習・復習が出来るので、私は大部屋が良いと感じています。

同室で抗がん剤治療を一緒に受けていたことがまだありません。同フロアでも同日に受けるのを見ていません。がん専門病院ではないからそんなに癌患者がいないのかもしれません。スタッフの一人は「お薬(抗がん剤)の準備の関係で同日にはしないかも」とのこと。抗がん剤は患者一人ひとりのその時点の体重や体調などで毎回量が細かく決まり、生理食塩水に規定の割合で入れる「オーダーメイド」なので、準備に手間もかかるでしょう。同じフロアで同日に1人だけなら、取り違えを起こす恐れもないので安心かも知れません。

そんなわけで、他の患者さんが抗がん剤の点滴を受ている様子は全く分からないのですが、他の病気や怪我の患者さんたちのことは、カーテン越しに何となく、看護師と患者さんとのやりとりなどで知ることがあって、これまでの複数回の入院で、がんだけが大変だとか怖いとかいう訳ではないと充分に知ることができました。

ほんと、大部屋向きのタイプで良かった。
大部屋選んでおいて良かったです。


自分で歩ける。これだけでも他の病気よりも遥かに自由。

これまで同室になった人は、私と同じく検査や開腹などの手術をこれから受ける・受けた人の他に、脚のむくみを取るためにやや長期のリハビリを受けにきた人、別で受けた治療(手術も含む)の後などに発熱するなど「隔離のいらない(細菌)感染」を治す人、乳腺科や整形外科の患者さんもいました。

開腹手術後の私もそうでしたが、歩けない状態の人もしばしばおられます。

夜中にトイレに行くとよく、夜間担当の看護師に車椅子を押されているご高齢の方を見かけます。「自分で歩いてトイレに行ける」ということのありがたみが良く分かります。歩けなくても入院中は24時間ナースコールのボタンを押せば看護師が駆けつけて車椅子でトイレに連れて行ってくれますが、退院後はどうされるのかな。

比較的若くても、歩くことそのものの困難が訪れることが人生にはあります。膝や股関節の病気で手術を受け、人工関節に置き換えてリハビリを受けている方も同じフロアにおられます。

歩行の困難はがん治療の過程でも起こります。例えば手術の時にがん組織や臓器の摘出とあわせて、がんの広がりを確認したり抑えたりするためにリンパ節を切除すると、リンパ液の流れが変わり、脚のむくみを経験する人が多数います。幸い私はリンパ節の切除は不要でしたが、今もし抗がん剤治療の副作用に加えて脚のむくみのダブルパンチだったらかなりキツかったはずです。

一歩まちがうと「がんになった私」は悲劇の主人公のように陥るところですが、毎月の入院時に垣間見る美しき戦士たち(患者さん)と、力強く頼もしい支援者(医療スタッフ)の多様なドラマに胸が熱くなります。

「がんどころでは騒いでいられない」

というのが、幸い初期で治療を開始できた
がん患者としての正直な感想です。

割と治療が確立していて、特殊ではなく今のところ概ね「定型の」範囲で順調に治療を進めてこれています。予後のデータも検索して、自分に今後起こるかもしれないことはある程度把握できます。

一旦治療が完了してからも年に何度か、定期的な経過観察が続くので、今後新たながんや再発転移があったとしてもおそらく早めに見つかります。ある意味、誰よりも安全かも知れません。

がんが見つかるのは早ければ早いほと良いです。少しでも体が変だと思ったら、早めに医療にかかってください。

そしてもしがんが見つかっても怖くありません。

たくさんの頼もしい味方、医師と医療スタッフがいます。
先輩もたくさんいます。大丈夫。

そして、特に女性なら
入院は大部屋が実はおすすめです。

・ ・

がん治療、入院か通院かについて

全日本民医連のサイトによるとがん治療について「今(2013年12月)でも入院が必要な時期はありますが、化学療法の初回導入時や、シスプラチン(抗がん剤の一種)を併用する場合 などに限られています。」

私が受けた抗がん剤治療も入院が必要なタイプで「パクリタキセル/カルボプラチン療法(TC療法)」というものです。実際の入院と抗がん剤点滴の例(国立病院機構の入院計画書)にあるように、3日程度入院します。アナフィラキシーを起こしやすい1回目が問題なければ、2回目以降は最短2日、ツワモノは日帰りで受けているようです。


参考
子宮体がん以外にも、入院が必要な抗がん剤があります。

プラチナ製剤 一般的な商品と特徴

ランダ
  •  シスプラチン製剤 ※腎臓へのダメージを減らすためシスプラチンの点滴前後に1〜2リットルの輸液を点滴し尿量を増やすといった措置が必要
  •  小細胞肺がん胃がん非肺小細胞がん尿路上皮がんなど数多くのがんに使用
  •  本剤に対する制吐薬として、5-HT3受容体拮抗薬・NK1受容体拮抗薬・デキサメタゾンの併用推奨
パラプラチン
  •  カルボプラチン製剤 ※点滴に要する時間は単独で約1時間
  •  非小細胞肺がん卵巣がん子宮頸がん子宮体がんなどに使用する
  •  シスプラチンに比べ、一般的に腎毒性、吐き気などの軽減が期待できる
エルプラット
  •  オキサリプラチン製剤 ※FOLFOXでは長時間(約2日間)の持続点滴が必要
  •  大腸がん治療で用いられるFOLFOX(フォルフォックス)療法で使用する薬剤の一つ
  •  結腸・直腸がん、膵臓がん胃がんなどに使用
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がん告知

2024-07-09 05:47:30 | ここまでの治療のこと
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店主です。

続きです。




11月のポリープ切除後の退院時、今後、出血は解消しますよ。病院からの連絡もなく、自身も何もなければ2週間後の予約の日に来てくださいね、と主治医から言われていて、その際に見せてもらったポリープの写真と帰宅後にネット検索したポリープの写真が同じだったので全く心配はしておらず。

予定より早く「明日来れますか?」と電話があった後も、診察室で話を聞くまでがんの告知を受けるとは全く思っていませんでした。

例えば「不正出血」をネット検索すると、

子宮に原因がある主な病気は、
子宮内膜ポリープ子宮腺筋症子宮筋腫子宮頸がん、子宮体がんなど

子宮以外に原因がある主な病気は、
血液凝固の異常排卵障害ホルモン剤の投与など

とあります。クリニックの医師はエコー検査で「子宮筋腫」と言っていたし、大きな病院で子宮鏡下でポリープを取ってもらったのだから、これで完了、と思っていました。かたまりが出たのは「血液凝固の異常」で年齢的にホルモンの変化で起きていると考えていました。組織検査でがんが見つからなければ、それで正解でした。


「良くないものが出てしまいました」

診察室で担当医が話し始めました。

「でも顔つきがいい。類内膜がんというタイプで、グレードは1(G1)。進行は遅いタイプなんです。」

看護師がそっと差し出した箱ティッシュから
1枚取って目に当て
医師(女医)に背中を撫でられながら、

かおつき。るいないまく。ぐれーど。
すてーじとはまた違うのかな。むむ。

顔を上げ

「大丈夫です。続けてください。」
「手術で取り切れるか調べるので急いで画像検査を3つ受けて欲しいんです。」

がんの広がりを調べるCTなどの予約の電話を医師が直々に始めました。同じ日に2つできないため、翌日から1日おきです。手際よく看護師も援助してあっという間に予約完了しました。

その「手際の良さ」に、少し安心を覚えました。これはきっとそれほど特別なことではない。この人たちはやり方をよく知っているから大丈夫、と。

そして、不安よりも、これからの新しい展開に不謹慎ながらワクワクしていました。多分、大きな責任など担っていない気ままな一人暮らしだからでしょう。
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はじまりは昨年5月

2024-07-08 05:22:54 | ここまでの治療のこと
がんも話題にできる仮想の海辺のカフェMARZO
店主です。

先日の「がんと診断されるまでの半年」では箇条書きでしたが、順番に思い出しながら書いて参ります。


2023年3月末。痛みは全くないけれど「おかしい」と感じることがあり、4月に職場から近いクリニック、そこから紹介された大きな病院の初診を受けていましたが、特に至急の検査をすすめられませんでした。

3月末までに感じた「おかしい」と感じたことについて。

長い間いつも同じ周期で来ていた生理の間隔が何年かかけて少しずつ短くなっていました。

一般的な更年期と呼ばれる年齢になっていたので、毎年職場で受けている健康診断時の子宮頸がん検診の医師に相談しても生理周期の乱れは「更年期あるある」だから、何か困ることがあれば遠慮せず婦人科受診をするように言われていました。

ところがさらに短くなっていき、3月末の時点では前回から2週間??のときなどがありました。そして数回に1回量が多いことがありました。

もともと痛みや前後の不調などもなく、この時点でもなかったので様子を見ていました。ただなんとなく、これが続くと貧血になるのではないかと思い、職場の近くの産婦人科に受診しました。

エコー検査での医師の所見では

「子宮筋腫がいくつかあります。
 それと、子宮内膜が厚めです。」

その内膜がどうなっているのか、子宮内部の組織を採取して検査するのですが、どうしても採取できない。

「この場合、全身麻酔で中の組織を取る必要があります。
 残念ながらうちのクリニックではできないので、
 紹介状を書きます。」

たまたま職場近くに大きな病院があり、そこに紹介状を書いていただきました。

検査のために全身麻酔。
そのために紹介状。
なんだか申し訳ないような気分でした。

大きな病院でも、やはり外来の診察では採取できず。
組織検査でがんではないと確認できない限り、
更年期障害に対する
ホルモン療法などは出来ないとのこと。

全身麻酔で手術台で検査と組織採取を行うか、
保険適用外で約10万円のMRI検査を受けるか。

4月の時点では貧血もなく、症状はまだそこまでひどくなかったので様子を見ることにし、次回通院を1ヶ月後に設定し、血液検査で貧血でないか継続して確認することになりました。

ところが、

ゴールデンウィークで帰省する前夜、シャワーを浴びていたら急に「ボトッ」という音がして足元が赤く染まりました。うすい赤色のかたまりが落ちていました。正直、臓器ごと出てきたか?と思う、鶏の卵サイズ。

そのまま普段の生理よりやや多めの出血が続きました。数日で終わるので、貧血までは至りませんでした。


5月 おやおや?でも実家で楽しく
6月 問題なし
7月 おやおや?病院では先に進まないから整骨院で体を整えよう
8月 問題なし。家族旅行
9月 少し変
10月 おやおや?それでも家族旅行
11月 上旬。産業医にすすめられて検査を受けることに
   3日後の手術枠がちょうど空いたので1泊で検査入院と手術

この3回の「おやおや?」は毎回「かたまり」と「多めの出血」があり、回を重ねるごとに「多めの出血」が増量して行きました。

かたまりは「凝血塊」と言われるもののようで、内膜になっていたものが本来は分解されて経血として流れ出るところ、分解する酵素が更年期などのホルモンの変化でうまく出ていないために起こるようです。

これまでの人生、大病もないしどこかが痛くなることもほとんどなし。今回も手術を受けるまでは痛いことは一度もなし。大きな生理用品、なんならパンツ型なども今は買えて旅行にも行けたので、

「今まで楽をした分、
 今この時期くらいは苦労してもしょうがないな、
 きっとこれが私の更年期」

なんて、のん気に思っていました。


次回は11月の最初の手術のところから続きを書きます。
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がんと診断されるまでの半年

2024-07-06 06:50:03 | ここまでの治療のこと
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店主です。

現在、予防的な化学療法を受けておりますが、今週の通院時に、先日のCT検査で再発の兆候なしと、血液検査ほぼ標準値を確認できておりますのでまずはご報告しておきます。

前回の続き、
「体も心も痛くも辛くもない。人類史上最も安全で幸福な女性の一人暮らし」をしていた店主が昨年「がん」と診断されるまでを書きます。

なお、プロフィールにも「下腹部のがん」と書いております。ご存知のように人体の下腹部には消化器・泌尿器・生殖器等の内臓、皮膚・骨などありますが、現時点では具体的な箇所を伏せておきます。


2023年3月末。痛みは全くないけれど「おかしい」と感じることがあり、4月に職場から近いクリニック、そこから紹介された大きな病院の初診を受けていましたが、特に至急の検査をすすめられませんでした。4月には年1回の定期健康診断も受けており、そこでも指摘はありませんでした。それからは・・・

 5月 おやおや?でも実家で楽しく
 6月 問題なし
 7月 おやおや?病院では先に進まないから整骨院で体を整えよう
 8月 問題なし。家族旅行
 9月 少し変
10月 おやおや?それでも家族旅行
11月 上旬。産業医にすすめられて検査を受けることに
   3日後の手術枠がちょうど空いたので1泊で検査入院と手術
   (手術は麻酔を使った細胞診。実際にはポリープ切除)
   手術から1週間後に「明日来れますか」と電話あり
11月末 がん告知 ステージI

略しすぎ?
まずは一旦箇条書きです。

旅行しすぎ?
そりゃそうですよ!
ずっと痛くないし、旅行優先。
せっかくコロナが明けたGW。3年ぶりくらいの帰省です。8月の夏季休暇の家族旅行も3年ぶりでした。秋には勤続10周年のご褒美休暇もありました。

11月のポリープ切除後の退院時、
・「おやおや?」と思っていた問題は解消しますよ
・病院からの連絡もなく、自身も何もなければ2週間後の予約の日に来てくださいね
と主治医から言われていて、

その際に見せてもらったポリープの写真と
帰宅後にネット検索したポリープの写真が同じだったので
全く心配はしておらず。

予定より早く「明日来れますか?」と
電話があった後も、診察室で話を聞くまで
がんの告知を受けるとは
全く思っていませんでした。


<がんのステージは5段階>※細かくは、がん種ごとに異なります
ステージ0 がんが臓器の表面の浅い部分だけにあり転移が無い
ステージⅠ がんが筋肉層までに留まっていて転移が無い
ステージⅡ がんは小さめだが転移がある、もしくは転移は無いががんが筋肉層を超えて広がっている
ステージⅢ がんが大きいか深いところにありリンパ節等に転移している、または、がんが局所で進行しているかリンパ節転移がある程度広がっている
ステージⅣ がんがはじめにできた原発巣から他の臓器に転移している

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2024-07-04 10:42:57 | ここまでの治療のこと
半年ほど前にまさかのがん告知。

海辺の牡蠣とかムール貝みたいに地味ながら安定していた日々から不意に解き放たれて初めてめぐる大きな海原を波間の漂流ブイみたいにフワフワ過ごして来ました。

また地味ながら安定した海辺にもどるまえに
ここまでをまとめておこうと思います。

都会の片隅で一人暮らす
がんサバイバーの航海日誌
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