今季の久保利明棋王・王将W防衛戦はご存知の通り共に失冠に終わった。
【王将戦】
【棋王戦】
私は1/5に以下の様に戦前の予想をした。
「今期の王将・棋王ダブル防衛戦はこれまでと異なりゴキゲン中飛車の台所事情が苦しい。
久保さんもこれまではゴキゲン中飛車で勝ち越して奪取、防衛を決めて来たので超速に打ち勝つ事が出来るかがポイントになるだろう。
研究を温存する為にも王将戦はスムーズに防衛したいところ。」
ゴキゲン中飛車は5局出現して1勝4敗。
テニスでは相手のサービスゲームをブレイクする事が試合を優位に運ぶ事に繋がる。
先手勝率53%程度の将棋の場合はそれ程重要度が高くも無いが、やはりこのブレイク率では厳しかった。
これまでの棋王・王将戦の戦いぶりとは明らかに様相が違うのがわかる。
その主要因は超速にある事は明白だ。
内約を見て行こう。
対策が偏らない様に、それぞれの相手に1つずつぶつけているのがわかると思う。
銀対抗は善戦したが、菅井流はご覧の有様で戦犯と言えそうだ。
美濃△4二銀型の新構想は敗れはしたものの十分に戦えていたので
今後も実戦に出て来る事が予想される。
それにしても、佐藤康光新王将が全て超速で来たのは意外だった。
普段なら万遍無く様々な対策を使うのだが、ゴキゲン中飛車に研究を絞って狙い撃ちをしていた印象だ。
特に、第3局の銀対抗は正に研究にハメられた格好だった。
今回はその将棋に対して考察し、考えた対策を披露したいと思う。
(以下、図面は便宜上先後逆)
テーマ図1からの指し手
△5六歩▲同歩△同飛▲4五桂(第1図)
テーマ図1は王将戦第3局で出現した局面だ。
▲6八銀~▲7七銀の急戦からの変化である。
ここからの△5六歩▲同歩△同飛には驚かれた方も多かったのではないだろうか。
と言うのも、次に▲5五歩で飛車が閉じ込められるのが目に見えているからだ。
しかし、それには△3五歩という手があり相当に手が続く。
実はこの仕掛けは実戦例があり、戸辺誠六段が振り飛車を持ち
穴熊と金美濃で各1局指している。
棋譜は入手できないが、将棋世界 2011年 12月号 [雑誌]
に金美濃囲いでの戦いが55頁に載っているので参考にして頂きたい。
これらの実戦例では、▲1六歩や▲6八金寄が指されている。
▲1六歩は幽霊角を消して、次に▲5五歩を狙ったもので、
▲6八金寄の意味は難しいが、△5一飛▲5三歩を想定したものと思われる。
本譜はわずか1分の考慮で▲4五桂。
周到な事前研究が用意されている事が容易に窺える。
第1図からの指し手(1)
△1五角▲6八金寄△5一飛▲5三歩△4五銀▲同銀△3七角成▲5八飛
△4七馬▲5四銀(第2図)
△1五角の幽霊角で手が作れそうだが、▲6八金寄が好手だった。
△5九角成には時間差で▲5七金がある。
以下、先手に▲5三歩・▲5四銀型を築かれて押さえ込まれてしまった。
ここまでの手順に変化の余地が無い事を考えると、第1図での△1五角で変化しなくてはならない。
第1図からの指し手(2)
△4二角(途中図)
▲6五銀△5一飛▲5四歩(第3図)
△4二角は▲5五歩を打たせてから時間差での△1五角を狙ったものだ。
以下、▲6八金寄△4六飛▲同歩△3七角成▲5八飛△4六馬(A図)が想定される。
こうなれば、次に桂馬の入手が見込めて実質二枚換えの計算となるので振り飛車もやれる。
しかし、△4二角に▲6五銀と出られると飛車を引くしかない。
▲5四歩と垂らされた第3図は居飛車ペースの展開と言える。
つまり、テーマ図1で△5六歩と突いた時点で挑戦者の術中に嵌っていた可能性が高いのだ。
では、銀対抗は▲6八銀~▲7七銀の急戦で悪いのかと言えばそうではないと思う。
ここからは、私なりに研究した改善案を述べて行きたい。
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テーマ図2は、振り飛車の囲いを美濃囲いにしたもので、
居飛車の構えはテーマ図1の▲3七桂を跳ねる直前という局面となっている。
ここでのポイントは、振り飛車が△6四歩を入れている事だ。
鋭い方なら狙いが見えたのではないだろうか。
テーマ図2からの指し手(1)
▲3七桂△5六歩▲同歩△同飛▲4五桂△4二角(第4図)
第4図を見てお気付きだろうか。
今度は先程の途中図と異なり、▲6五銀の進出が無いのだ。
こうなれば▲5五歩と打つよりないので、
△1五角▲5七金△4六飛▲同歩△3七角成▲6八飛△1九馬(B図)の二枚換えでやれそうだ。
また、これでも自信が無い場合の為にもう1つの手段を考えた。
テーマ図2からの指し手(2)
▲3七桂△6三銀▲4五桂△4二角▲2四歩△同歩▲5五銀左△同銀
▲同銀△3三桂▲5三銀△4五桂▲4二銀成△同金▲2四飛△6五桂(第5図)
長手数進めたが、最初の数手に難しいところは無いと思う。
▲5三銀のところで▲4六銀は以下の棋譜を参考にしてもらいたい。
2009年12月18日 第68期B級1組順位戦▲屋敷伸之△久保利明
棋譜の著作権で訴えられる恐れがある以上、棋譜のリンクは貼れないがご了承頂きたい。
▲5三銀が最も怖い手だと思うが、△4五桂と軽く跳ね出してしまうのが良い。
居飛車が飛車角のどちらを取っても二枚換えで左桂が捌けた事になる。
まず、▲5二銀成で飛車を取れば、△同金左▲2一飛△7二銀打▲2四飛上
△同角▲同飛成△3八飛▲2九龍△3六飛成(C図)でダイヤモンド美濃の後手が良いだろう。
本譜▲4二銀成には△同金▲2四飛と走らせてしまい、△6五桂(第5図)と舟囲いを上から攻略すれば十分となる。
第5図以下は、▲1一龍△5七桂左成▲同金△同桂成▲7五桂に△5六金として、
▲6八香(D図)を打たせれば振り飛車が良いだろう。
では、第5図の△6五桂に備えて▲6八金上を入れたらどうなるか見てみよう。
テーマ図2からの指し手(3)
▲3七桂△6三銀▲6八金上△6五歩▲同銀△7四歩(第6図)
△6三銀に対しては、直に仕掛けないと△6五歩(!)があるのだ。
第6図は銀挟みが決まった格好で後手が良い。
テーマ図2の美濃・△6四歩型は前回ゴキゲン中飛車対超速【△4四銀型:現代の定跡へリンクする新構想】で紹介した
急戦策と併せて使えるので対急戦のレパトリーを広げている。
読者の皆様も実戦で使ってみて頂きたい。
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【王将戦】
第1局 | ゴキゲン中飛車 | 超速対菅井流 | 佐藤勝ち |
第2局 | 相振り飛車 | 相三間同型 | 佐藤勝ち |
第3局 | ゴキゲン中飛車 | 超速対銀対抗 | 佐藤勝ち |
第4局 | 先手石田流 | 升田式石田流 | 久保勝ち |
第5局 | ゴキゲン中飛車 | 超速対美濃△4二銀型 | 佐藤勝ち |
【棋王戦】
第1局 | ゴキゲン中飛車 | 超速対銀対抗 | 久保勝ち |
第2局 | 先手石田流 | 早石田 | 郷田勝ち |
第3局 | ゴキゲン中飛車 | 超速対菅井流 | 郷田勝ち |
第4局 | 先手石田流 | 升田式石田流 | 郷田勝ち |
私は1/5に以下の様に戦前の予想をした。
「今期の王将・棋王ダブル防衛戦はこれまでと異なりゴキゲン中飛車の台所事情が苦しい。
久保さんもこれまではゴキゲン中飛車で勝ち越して奪取、防衛を決めて来たので超速に打ち勝つ事が出来るかがポイントになるだろう。
研究を温存する為にも王将戦はスムーズに防衛したいところ。」
ゴキゲン中飛車は5局出現して1勝4敗。
テニスでは相手のサービスゲームをブレイクする事が試合を優位に運ぶ事に繋がる。
先手勝率53%程度の将棋の場合はそれ程重要度が高くも無いが、やはりこのブレイク率では厳しかった。
これまでの棋王・王将戦の戦いぶりとは明らかに様相が違うのがわかる。
その主要因は超速にある事は明白だ。
内約を見て行こう。
銀対抗 | 1勝1敗 |
菅井流 | 2敗 |
美濃△4二銀型 | 1敗 |
対策が偏らない様に、それぞれの相手に1つずつぶつけているのがわかると思う。
銀対抗は善戦したが、菅井流はご覧の有様で戦犯と言えそうだ。
美濃△4二銀型の新構想は敗れはしたものの十分に戦えていたので
今後も実戦に出て来る事が予想される。
それにしても、佐藤康光新王将が全て超速で来たのは意外だった。
普段なら万遍無く様々な対策を使うのだが、ゴキゲン中飛車に研究を絞って狙い撃ちをしていた印象だ。
特に、第3局の銀対抗は正に研究にハメられた格好だった。
今回はその将棋に対して考察し、考えた対策を披露したいと思う。
(以下、図面は便宜上先後逆)
テーマ図1からの指し手
△5六歩▲同歩△同飛▲4五桂(第1図)
テーマ図1は王将戦第3局で出現した局面だ。
▲6八銀~▲7七銀の急戦からの変化である。
ここからの△5六歩▲同歩△同飛には驚かれた方も多かったのではないだろうか。
と言うのも、次に▲5五歩で飛車が閉じ込められるのが目に見えているからだ。
しかし、それには△3五歩という手があり相当に手が続く。
実はこの仕掛けは実戦例があり、戸辺誠六段が振り飛車を持ち
穴熊と金美濃で各1局指している。
棋譜は入手できないが、将棋世界 2011年 12月号 [雑誌]
に金美濃囲いでの戦いが55頁に載っているので参考にして頂きたい。
これらの実戦例では、▲1六歩や▲6八金寄が指されている。
▲1六歩は幽霊角を消して、次に▲5五歩を狙ったもので、
▲6八金寄の意味は難しいが、△5一飛▲5三歩を想定したものと思われる。
本譜はわずか1分の考慮で▲4五桂。
周到な事前研究が用意されている事が容易に窺える。
第1図からの指し手(1)
△1五角▲6八金寄△5一飛▲5三歩△4五銀▲同銀△3七角成▲5八飛
△4七馬▲5四銀(第2図)
△1五角の幽霊角で手が作れそうだが、▲6八金寄が好手だった。
△5九角成には時間差で▲5七金がある。
以下、先手に▲5三歩・▲5四銀型を築かれて押さえ込まれてしまった。
ここまでの手順に変化の余地が無い事を考えると、第1図での△1五角で変化しなくてはならない。
第1図からの指し手(2)
△4二角(途中図)
▲6五銀△5一飛▲5四歩(第3図)
△4二角は▲5五歩を打たせてから時間差での△1五角を狙ったものだ。
以下、▲6八金寄△4六飛▲同歩△3七角成▲5八飛△4六馬(A図)が想定される。
こうなれば、次に桂馬の入手が見込めて実質二枚換えの計算となるので振り飛車もやれる。
しかし、△4二角に▲6五銀と出られると飛車を引くしかない。
▲5四歩と垂らされた第3図は居飛車ペースの展開と言える。
つまり、テーマ図1で△5六歩と突いた時点で挑戦者の術中に嵌っていた可能性が高いのだ。
では、銀対抗は▲6八銀~▲7七銀の急戦で悪いのかと言えばそうではないと思う。
ここからは、私なりに研究した改善案を述べて行きたい。
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テーマ図2は、振り飛車の囲いを美濃囲いにしたもので、
居飛車の構えはテーマ図1の▲3七桂を跳ねる直前という局面となっている。
ここでのポイントは、振り飛車が△6四歩を入れている事だ。
鋭い方なら狙いが見えたのではないだろうか。
テーマ図2からの指し手(1)
▲3七桂△5六歩▲同歩△同飛▲4五桂△4二角(第4図)
第4図を見てお気付きだろうか。
今度は先程の途中図と異なり、▲6五銀の進出が無いのだ。
こうなれば▲5五歩と打つよりないので、
△1五角▲5七金△4六飛▲同歩△3七角成▲6八飛△1九馬(B図)の二枚換えでやれそうだ。
また、これでも自信が無い場合の為にもう1つの手段を考えた。
テーマ図2からの指し手(2)
▲3七桂△6三銀▲4五桂△4二角▲2四歩△同歩▲5五銀左△同銀
▲同銀△3三桂▲5三銀△4五桂▲4二銀成△同金▲2四飛△6五桂(第5図)
長手数進めたが、最初の数手に難しいところは無いと思う。
▲5三銀のところで▲4六銀は以下の棋譜を参考にしてもらいたい。
2009年12月18日 第68期B級1組順位戦▲屋敷伸之△久保利明
棋譜の著作権で訴えられる恐れがある以上、棋譜のリンクは貼れないがご了承頂きたい。
▲5三銀が最も怖い手だと思うが、△4五桂と軽く跳ね出してしまうのが良い。
居飛車が飛車角のどちらを取っても二枚換えで左桂が捌けた事になる。
まず、▲5二銀成で飛車を取れば、△同金左▲2一飛△7二銀打▲2四飛上
△同角▲同飛成△3八飛▲2九龍△3六飛成(C図)でダイヤモンド美濃の後手が良いだろう。
本譜▲4二銀成には△同金▲2四飛と走らせてしまい、△6五桂(第5図)と舟囲いを上から攻略すれば十分となる。
第5図以下は、▲1一龍△5七桂左成▲同金△同桂成▲7五桂に△5六金として、
▲6八香(D図)を打たせれば振り飛車が良いだろう。
では、第5図の△6五桂に備えて▲6八金上を入れたらどうなるか見てみよう。
テーマ図2からの指し手(3)
▲3七桂△6三銀▲6八金上△6五歩▲同銀△7四歩(第6図)
△6三銀に対しては、直に仕掛けないと△6五歩(!)があるのだ。
第6図は銀挟みが決まった格好で後手が良い。
テーマ図2の美濃・△6四歩型は前回ゴキゲン中飛車対超速【△4四銀型:現代の定跡へリンクする新構想】で紹介した
急戦策と併せて使えるので対急戦のレパトリーを広げている。
読者の皆様も実戦で使ってみて頂きたい。
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ゴキゲン中飛車超急戦研究 第1章
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