鈴木嘉一(Suzuki Yoshikazu)著
中央公論社 2011年5/25
図書館で8月5日に『必殺シリーズ完全百科』(山田誠二著)を借りて、8月26日の返却期限の日に返し、そこで『大河ドラマの50年』を借りた。
『江~姫たちの戦国~』の製作發表、東日本大震災の影響まで書かれてある。
大河ドラマが「大型時代劇」として『花の生涯』(井伊直弼が主人公)と『赤穂浪士』から始まり、『太閤記』で現代と過去との対話が重視され、映画のチャンバラや民放の勧善懲悪時代劇と異なる歴史ドラマ路線を目指しながら、結局はそれも時代劇の一種であったことがよくわかる。
江戸時代以前を扱う以上、「歴史ドラマ」は「時代劇」であり、「時代劇」と「歴史ドラマ」の違いは「漫画」と「劇画」の違いのようなものだ。
西田敏行主演の『八代将軍吉宗』(本では空白を入れて『八代将軍 吉宗』)は、テレ朝の娯楽時代劇『暴れん坊将軍』に対抗した歴史ドラマと思いきや、大河スタッフとしては『吉宗』も娯楽時代劇への回帰だったらしい。チャンバラも合戦もなしで豪華出演者を次々登場させ、その共演者の戦いを見せる狙いがあったそうだ。
1980年代初め、時代劇がブームになったあと、人気が下降し、民放ではバラエティや報道番組が増えてドラマ時代が不調になった。
2011年に里見浩太朗が『水戸黄門』終了の原因として挙げた現象は30年近く前にあった。
一方、1985年の『忠臣蔵』を初めとする大晦日の時代劇も始まっている。
161~162ページによると、『いのち』が放送された1986年にはテレ朝系列で『遠山の金さんII』の枠が現代劇になり、必殺シリーズと『暴れん坊将軍』だけになっていたらしい。
必殺は翌1987年の『剣劇人』でチャンバラを取り入れ、その後、金曜夜10時は『ニュースステーション』に明け渡され、必殺は2時間スペシャルに移った。
TBSの『水戸黄門』では83年に東野英治郎が西村晃に交代、東野時代はゲスト出演だけだった由美かおるが86年にかげろうお銀としてレギュラー入りし、87年に野村将希扮する飛猿が参加。娯楽性を高めてキープした。
1985年のテレビ小説『澪つくし』に出演した沢口靖子が87年『政宗』でいろは姫を演じた。
また、87年の『政宗』で愛姫を演じて有名になった後藤久美子が87年に『ママはアイドル』で中山美穂、三田村邦彦と共演、88年に『風少女』に出演し、同年の『痛快!ロックンロール通り』で沢口靖子と共演した。
1986年の『遠山の金さんII』は高橋英樹のシリーズであり、テレ朝『金さん』は88年に松方弘樹主演で再開している。
181ページで「バブルのような時代劇ブーム」とある。1989年の平成の初めに時代劇が民放でも復活しかけ、中村吉右衛門の『鬼平犯科帳』も始まった。しかし1990年代にバブル経済が崩壊すると時代劇スペシャルも影をひそめた。
また、この著者は大河ドラマの配役や脚本が幾度か批判されながらも、高視聴率を叩きだしたことを何度か強調している。「批判はされたが視聴率は高かった」ということで免罪にしている記述が繰り返し見受けられた。
坂本龍馬については、『竜馬がゆく』に関する部分では「竜馬」という表記で、『龍馬伝』に関する部分では「龍馬」。
これはNHK出版の『NHK大河ドラマ大全』、NHKサービスセンターの『NHK大河ドラマ50作パーフェクトガイド』でも同様である。
ところで『水戸黄門』第43部のHPの「かわら版」では「製作発表」とあり、この『大河ドラマの50年』ではテレビドラマの制作は「制作」である。
www.tbs.co.jp/mito/mito43/kawara/02.html
『大河ドラマの50年』で2010年夏の『江』制作發表についての紹介のあと、6ページで「『江』の男性出演者発表から一か月後の八月四日には、二〇一二年の大河ドラマ『平清盛』の制作が発表された」とある。
4ページによると、2010年6月28日の『江』の制作發表のとき、田渕久美子氏は「三姉妹は初めから姫なので、成り上がった篤姫とは違う」と言い、さらに「江は織田信長、豊臣秀吉、徳川家康と直接話をした数少ない女性の一人として、武将たちの本音を引っ張り出すでしょう」と語って、ドラマで江がワイドショーの突撃レポーターのようにあちこちに顔を出す脚本の理由を説明。続いて田渕氏は「戦国の女性は男性たちを巧みにてのひらに乗せ、陰で時代を動かしていたんじゃないか」と独自の歴史観を述べ「女性たちがどれほど活躍するか、楽しみにしてほしい」と語ったらしい。
鈴木嘉一氏は2011年10月5日読売新聞朝刊でも「時代劇 民放撤退で窮地」という記事を書いていて、これは紙面で確認できた。
さらに読売電子版の2011年12月5日付のQ&Aのコーナーで「TBSの『水戸黄門』が終了すると、テレビ時代劇はどうなるの?」という質問に対し答を示している。この「質問」は特定の読者から来た物ではなく、新聞社で「世間で多くの人が疑問に思っている話題の一つ」として用意したもののようだ。
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