地理講義   

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14.日本の米  昭和14年米穀搗精等制限令

2010年12月31日 | 地理講義
米穀搗精等制限令(昭和14年勅令第789号)            1939年11月25日施行。昭和21年4月1日失効
第1条 
国家総動員法(昭和13年勅令第317号ニ於テ南洋群島ニ於テ依ル場合ヲ含ム以下同ジ)第8条ノ規定ニ基ク米穀ノ搗精若ハ酒類及麦酒ノ製造ノ制限又ハ同法第9条ノ規定ニ基ク小麦其ノ他ノ米穀以外ノ穀物及穀粉ノ輸出ノ制限ハ本令ノ定ムル所ニ依ル
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前項ニ於テ酒類及麦酒トハ内地ニ在リテハ酒造税法ノ適用ヲ受クル酒類及麦酒税法ノ適用ヲ受クル麦酒、朝鮮ニ在リテハ酒税令ノ適用ヲ受クル酒類ニシテ朝鮮総督ノ指定スルモノ、樺太ニ在リテハ樺太庁長官ノ指定スルモノ、南洋群島ニ在リテハ南洋庁長官ノ指定スルモノヲ謂フ
第2条 
業務ニ関シ米穀ノ搗精ヲ為ス者ハ玄米ノ重量ニ対スル搗上リ米ノ重量ノ割合ガ農林省令ノ定ムル割合ヲ下ラザル限度ニ於テ米穀ノ搗精ヲ為スベシ但シ農林省令ノ定ムル特別ノ事由ニ因リ地方長官ノ許可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第3条 
酒類又ハ麦酒ヲ製造スル者ハ其ノ製造石数ニ関シ大蔵省令ノ定ムル限度ヲ超エテ酒類又ハ麦酒ヲ製造スルコトヲ得ズ但シ大蔵省令ノ定ムル特別ノ事由ニ因リ大蔵大臣ノ許可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
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大蔵大臣ハ大蔵省令ノ定ムル所ニ依リ前項但書ノ規定ニ依ル事務ノ一部ヲ税務監督局長又ハ税務署長ヲシテ取扱ハシムルコトヲ得
第4条 
農林大臣必要アリト認ムルトキハ小麦其ノ他ノ米穀以外ノ穀物及穀粉ノ輸出ヲ制限スルコトヲ得
第5条 
大蔵大臣、農林大臣、地方長官、税務監督局長又ハ税務署長必要アリト認ムルトキハ国家総動員法第31条ノ規定ニ依リ第2条乃至前条ノ規定ニ依ル制限ニ関シ必要ナル報告ヲ徴シ又ハ当該官吏ヲシテ事務所、営業所、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨検シ業務ノ状況若ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ヲ検査セシムルコトヲ得
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前項ノ規定ニ依リ当該官吏ヲシテ臨検検査セシムル場合ニ於テハ其ノ身分ヲ示ス証票ヲ携帯セシムベシ
第6条 
本令中大蔵大臣又ハ農林大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮総督、台湾ニ在リテハ台湾総督、樺太ニ在リテハ樺太庁長官、南洋群島ニ在リテハ南洋庁長官トシ地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、台湾ニ在リテハ州知事又ハ庁長、樺太ニ在リテハ樺太庁長官、南洋群島ニ在リテハ南洋庁長官トシ税務監督局長又ハ税務署長トアルハ樺太ニ在リテハ樺太庁支庁長、南洋群島ニ在リテハ南洋庁支庁長トス
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本令中大蔵省令又ハ農林省令トアルハ朝鮮又ハ台湾ニ在リテハ総督府令、樺太又ハ南洋群島ニ在リテハ庁令トス
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酒類及麦酒ノ製造ノ制限ニ関スル規定ハ台湾ニハ之ヲ適用セズ
附則
本令ハ内地ニ在リテハ昭和14年12月1日ヨリ、朝鮮、台湾、樺太及南洋群島ニ在リテハ昭和14年12月11日ヨリ之ヲ施行ス但シ酒類及麦酒ノ製造ノ制限ニ関スル規定ノ施行期日ハ別ニ之ヲ定ム
昭和14年11月25日公布、12月1日施行。
昭和18年勅令第823号により改正[上の条文は改正前]
昭和21年4月1日失効
                       (以上、米穀搗精等制限令)
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【解説】

米穀搗精等制限令(昭和14年)は食糧管理法(昭和17年)以前の食糧統制

米穀搗精等制限令 第2条
農林省は玄米を精米する時、重量が減少すので、精米後に94パーセントの重量を維持するように、省令で定めた。精米94%とは、いわゆる7分つきの白米のことである。
7分つきの玄米食の利点として次のことをあげた。
①10割精白米と比較すると、7分づき米は、量的減少が少ない。7分つき米は、米不足の対策になる。
②7分つき玄米には栄養分が残り、健康によい。

しかしながら、老人・子どもには7分つき米の欠点として、消化不良による腹痛が増えた。7分つき米そのものも、味が悪かった。折角の白米をまずくして食べることになった。
そこで、市民あるいは庶民の対策として、7分つき米をガラスビンに入れて、箸の反対側で強くつついたり、ビンを勢いよく振り回し、米粒を強くすりあわせたりした。その結果として、わずかに7分つき米は減少したが、おいしい上白精米をつくり、食べることができた。政府のねらいは外れた。



米穀搗精等制限令 第3条
酒を大量につくると米が不足するので、大蔵省の許可が必要になった。

現在のような酒米やビール用の大麦は存在しなかったから、酒によって食糧としての米・麦は不足したかもしれない。しかし、酒飲みは飯を食わずに酒を飲むだろうから、米・大麦の不足には、それほどの影響はないだろう。

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この米穀搗精等制限令(昭和14年)は、前年の国家総動員令の家庭版である。政府が各家庭の台所事情にも口を出す前例になった。昭和17年の食糧管理法施行のテストケースであった。

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