地理講義   

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閑話休題  フィンランドの学力が急低下(PISA=OECD学習到達度調査から)

2013年12月13日 | ひとやすみ

2013年12月3日、OECDは世界65カ国(地域)の15歳51万人以上が参加した2012年の学習到達度調査(PISA)の結果を発表した。左下は数学の平均点である。

学力

 世界の全受験者の平均点を500点とする。
数学の学力が向上したのは、
1位 中国(実は上海)
2位 シンガポール
3位 香港(中国)
4位 台湾
5位 韓国
6位 マカオ(図にはない。前回棄権)
7位 日本
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7位の日本までが平均点上昇。全部アジアである。
日本の理想とするフィンランドとデンマークは急低下した。
日本にはフィンランドを教育の理想とする考える教育関係者が多いが、理想とするのはよしとしても、モデルとして真似をすることは妥当だろうか。
教育の理想的モデルは、そんな簡単に見つかるものだろうか。
今回のOECD学力調査で、得点の高いのは、詰め込み教育と学歴最優先の国である。学歴のモノ言う社会では、学力が向上する。
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日本の、ゆとり教育は推進者が文部科学省をやめて消滅した。
保守主義者は、学力得点競争を激化して、いじめの時間をなくすことを求めている。教師に「ゆとりの時間」を与えると日教組の再建集会ばかりしているので、多種多様な研修を課すことを考えている。

もし、成績即得点とみなす学力観が最も正しければ、
1.授業はひたすら反復訓練をし、理解は別として、運動神経で学力点を上げる。これには公文式が適している。
2.学校運営の障害となっているモンスターママを、教育ママに仕立て直すことが重要課題である。骨抜きされた、教育委員にするとよかろう。
3.政府文部科学省は、公文式反復学習に適した教材を、教科書として検定合格とする。
4.地方教育委員会は、教師の反復学習研修会を頻繁に開催し、公文式学習に習熟させる。


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前回第1位のフィンランドは学力が急低下した。
フィンランドの教室の主役は子どもである。主役とは何か分からないが、とにかく主役である。
フィンランドの小学校教師は修士号を取得している。日本のような分数計算のできない教師を撲滅するため、フィンランドでは大学教育に6年をかけている。多分大学1年が小学校1年生、大学2年が小学校2年生ということで、6年をかけているのだろう。
フィンランドは未来を担う子供たちに投資し、私立中学校は存在せず、すべて「公教育」である。

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フィンランドでは高度な福祉が実現でき、子どもは自分の将来に何の不安もなくなった。将来のための学習意欲を失った。競争社会を離脱したため、学力点数を上げる必要がなくなった。勉学への努力が不要になれば、学力点数の低下は、当然の結果であろう。
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イギリスでは少数の子どもの得点は高いが、多数は低い。
イギリスでは伝統的に貧しくて成績の低い者は、責任転嫁する。
「運がなかった」「先生の教え方が悪い」「親が貧乏だから」と。
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アメリカの平均値は著しく低い。アメリカの自由教育を否定し、厳格な中国教育を実践しているエール大学エイミー・チュア教授の体験記「タイガーママ」がベストセラーになっている。
「親が豊かになると子供が甘やかされてダメになる。私は娘に斜陽の道を歩んでほしくなかった」。
まさに「斜陽」という言葉が今の先進国の政治経済にあてはまる。チュア教授は欧米諸国の自由教育は子供の自主性を尊重する余り、将来の社会を損なうとして、子どもといくつかの約束をした。中国をモデルとした約束である。

① 友達宅でのお泊まり禁止。
② 学校劇には参加しない。
③ テレビゲーム・電話ゲームの禁止。
④ すべての科目で「優」を取る。
⑤ 体操と演劇以外はクラスで1番になる、etc.

アメリカと中国の子どもの成績を比較して、チュア教授は
「一人っ子政策の中国で子供は4人の祖父母と2人の両親から甘やかされる。その一方で、過度の学習を強いられている」
「アジア式教育は子供に厳しくて選択の自由がない。逆に欧米式では子供は大切にされすぎて選択肢が多すぎる」
「誰でもやればできる。だから、反復学習で成績が上がるのは当り前」
と強調した。
また、この考えが、アジア各国の学力向上の原動力になっている。
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アジアの教育について、チュア教授のコメントは
中国、韓国、台湾、シンガポールには植民地化された負の歴史を一掃しようというナショナリズムの高揚がある。
日本は衰退著しい欧米の自由教育からは距離を置いて、アジアと学力競争をしている。しかし、日本は同質性を重視するアジアで優位に立つより、欧米の多様性と創造性を重視する教育に目を向けるべきだろう。
日本はどんな社会を目指すのか。金融資産の不労所得で豊かさを享受できる社会か、知的創造性を持つ若者が未来を切り開く社会か、勉学と勤労の価値を重んじる社会なのか。

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PISAは義務教育修了時の学力をはかる1つの尺度に過ぎない。
国の平均得点を上げるためならば、成績下位者に公文式数学を徹底的に反復学習させればよい。ブタを空に飛ばす努力だが、PISAではブタが空を飛ぶような高得点を期待できる。
PISAの結果に一喜一憂する結果は、ブタに空を飛ばすような教育である。自由とか教養のような金銭的価値のない文化が否定される国の教育に変貌するであろう。
どの国の権力者も、すべての人間が楽しく暮らすより、国家のために奉仕し、犠牲になるような国民を理想とするものである。教育も、権力者の思うままに動かしたいものである。それが権力者の特質である。
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数学、読解力(国語)、科学(理科)の得点が上位の国・地域

2012年PISAの結果はアジアが上位を独占(△はアップ、▼はダウン、筆者作成)

 

 


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