地理講義   

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128.全国総合開発計画  新産業都市と工業整備特別地域

2014年01月17日 | ひとやすみ

高度経済成長政策
1960年、池田勇人内閣は、所得倍増計画を政策目標に掲げた。日本では1960年には米の生産過剰傾向が明確になり、低所得の農民を減らして製造業の労働者に転換するため、中小農家を切り捨てる農業基本法を制定した(1961~1999年)。
農民は農閑期の季節労働者から通年出稼ぎあるいは正社員となった。農村に戻るのは盆と正月、それに田植え・稲刈りの農繁期だけとなった。日本の高度経済成長は、農民の出稼ぎ、つまり農家の家族解体の上に成り立っていた。
日本に重工業を発展させるため、国・地方自治体は公共事業として工場用地・港湾・鉄道・道路・水道・電力などの産業基盤整備を進めた。公共事業には巨大な利権が絡むので、全国各地から有力政治家を巻き込んだ指定要求があった。池田勇人が病気引退後、佐藤栄作が、政策を引き継いだ。

新産業都市(
1962

1960年代、農村からの低賃金労働者は、北九州・阪神・中京。京浜の当時の4大工業地帯の製造業において、夜勤・休日出勤・深夜残業などを積極的に引き受ける、貴重な労働力であった。日本の高度経済成長は、農村からの低賃金労働者によって始められた。しかし製造業が発展すると国際競争が激化し、石油化学・鉄鋼業・造船業などは、大規模工場によるスケールメリットや自動化が必要となった。
国が新産業都市を指定し、公共事業による産業基盤整備の進んだ新産業都市に、鉄鋼・石油・造船・紙パルプなどの巨大工場ができた。いずれも装置産業であり、地元の雇用人数は少なかったが、工場の地方分散により、次第に周辺地域に関連工場ができて地域全体が経済発展するという論法で、拠点開発方式、といわれた。

工業整備特別地域(
1964

新産業都市には機械・自動車などの関連工場がなく、大都市市場も遠かった。進出工場は関連工場の完成を待つ経済的余裕はなかった。また、ダム・鉄道・港湾・空港・高速道路の完成は20~30年後であり、新産業都市の大半は工場進出に不適当であった。政治家の選挙地盤涵養のための新産業都市の指定であった。
利潤追求をめざす財界は、既存の工場と市場に近い、工業整備特別地域への転換を求めた。政治色の濃い新産業都市に代わり、鹿島地区、東駿河湾地区、東三河地区、播磨地区、備後地区、周南地区の6地域の産業基盤整備が進められ、重化学工業が集中した。

新産都市

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鹿島(茨城県鹿嶋市。工業整備特別地域)
鹿島灘に面する茨城県沿岸地域は半農半漁の貧困地域であったが、東京に近いので、1964年に工業整備特別地域に指定された。国費・県費がつぎ込まれ、「農工両全」をスローガンに海岸砂丘が開発された。鉄鋼・石油化学コンビナート、堀込港の工業地域、住宅団地や学校・病院の文教地域が同時につくられた。鹿嶋と神栖・波崎を合わせて、人口30万人が想定された。
コンビナート地域には住友金属(新日鉄住金)を中核に150企業が集まった。堀込港湾には石油・石炭・鉄鉱石の輸入原料が大型船で運ばれてきた。また、鉄鋼・プラスチック・機械などの工業製品が、大型トラックや船で国内外に運ばれている。
各工場は厳しい国際競争を乗り越えるため、工程の省力化や製品の高度化を進めたので、各工場の従業員は減少した。しかし、経済的に安定した住民が多く、鹿嶋市の人口が微増傾向にある。
地方からの要求で指定された新産業都市とは異なり、住友財閥系企業の集積効果を高めるための新しい重化学工業地域である。

鹿島

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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新産業都市建設促進法  [1962~2001年]
(目的)
第一条 この法律は、大都市における人口及び産業の過度の集中を防止し、並びに地域格差の是正を図るとともに、雇用の安定を図るため、産業の立地条件及び都市施設を整備することにより、その地方の開発発展の中核となるべき新産業都市の建設を促進し、もつて国土の均衡ある開発発展及び国民経済の発達に資することを目的とする。
(区域の指定の申請)
第二条  都道府県知事は、新産業都市の区域の指定を受けようとするときは、あらかじめ関係市町村長に協議するとともに、申請書に政令で定める事項を記載した書類を添付し、これを国土交通大臣に提出しなければならない。
2 前項の申請については当該都道府県の議会の議決を、同項の協議については当該市町村の議会の議決を経なければならない。
(区域の指定)
第三条  前条第一項の申請書の提出があつたときは、国土交通大臣は、当該申請書の写しを総務大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣及び経済産業大臣その他関係行政機関の長に送付するものとする。
2 国土交通大臣は、前条第一項の申請書の提出 があつた場合において、第一条の目的を達成するため必要があると認められるときは、当該区域を新産業都市の区域として指定することができる。
3 前項の指定をしようとするときは、国土交通大臣は、総務大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣及び経済産業大臣その他関係行政機関の長に協議するとともに、国土審議会の議を経なければならない。
第四条 国土交通大臣は、第二条第一項の申請がない場合において、第一条の目的を達成するため必要があると認められるときは、新産業都市の区域を指定することができる。
2 前項の指定をしようとするときは、国土交通大臣は、総務大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣及び経済産業大臣その他関係行政機関の長に協議し、かつ、関係都道府県知事の同意を得るとともに、国土審議会の議を経なければならない。
3 都道府県知事は、前項の同意をしようとするときは、あらかじめ関係市町村長に協議しなければならない。
4 第二条第二項の規定は、第二項の同意及び前項の協議について準用する。
(区域の指定の要件)
第五条 新産業都市の区域の指定(以下「区域の指定」という。)は、次の各号に掲げる要件を備えている区域で、その区域に将来相当規模の産業都市が形成される可能性を有すると認められるものについて行なわなければならない。
一 新産業都市の建設が総合的に行なわれる自然的及び社会的条件を備えていること。
二 相当規模の工場用地及び住宅用地の確保が容易であること。
三 相当量の工業用水及び水道用水の確保が容易であること。
四 道路、鉄道、港湾等による輸送が便利であり、かつ、これらの施設の整備が容易であること。
五 洪水、高潮、地盤沈下等による災害の発生のおそれが少なく、かつ、その防除が容易であること。
2 区域の指定は、国土総合開発法(昭和二十五年法律第二百五号)第七条の規定による全国総合開発計画(北海道の区域にあつては、全国総合開発計画及び北海道開発法(昭和二十五年法律第百二六号)第二条の規定による北海道総合開発計画)に適合するものでなければならない。
3 区域の指定は、産業の立地条件及び都市施設の整備並びに雇用の安定が緊急に必要である区域から順次しなければならない。
4 区域の指定は、当該区域を中心とする地域内において労働力の需給が均衡して雇用が安定するよう配慮してしなければならない。
5 区域の指定は、第九条の規定により行なう調査及びその他の政府が行なう工場立地その他に関する調査(国の補助金を受けて地方公共団体が行なう調査を含む。)の結果に基づいてしなければならない。
(建設基本方針の指示)
第六条 国土交通大臣は、第三条第二項及び第四条第一項の指定をするときは、当該新産業都市に係る新産業都市の建設に関する基本方針(以下「建設基本方針」という。)を決定し、これを関係都道府県知事に指示するものとする。
2 前項の決定をしようとするときは、国土交通大臣は、総務大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣及び経済産業大臣その他関係行政機関の長に協議するとともに、国土審議会の議を経なければならない。
3 建設基本方針として定めるべき事項は、政令で定める。
4 前条第二項及び第五項の規定は、建設基本方針の決定について準用する。
(公示)
第七条  国土交通大臣は、区域の指定をするときは、その旨及び当該区域を官報で公示しなければならない。
(区域の変更等)
第八条 国土交通大臣は、関係都道府県知事の申請に基づき、新産業都市の区域を変更し、又はその指定を解除することができる。この場合においては、第二条、第三条及び前三条の規定を準用する。
2 前項に定める場合のほか、国土交通大臣は、新産業都市の区域の一部又は全部が第五条第一項に定める区域の指定の要件を欠くに至つたと認められるとき、又は新産業都市の建設の目的が達成されたと認められるときは、当該区域を変更し、又はその指定を解除するものとする。
3 前項の区域の変更又はその指定の解除をしようとするときは、国土交通大臣は、総務大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣及び経済産業大臣その他関係行政機関の長に協議し、かつ、関係都道府県知事の意見を聴くとともに、国土審議会の議を経なければならない。
4 第五条第五項、第六条及び前条の規定は、第二項の規定による新産業都市の区域の変更又はその指定の解除について準用する。
(基礎調査) 
第九条 政府は、区域の指定及び建設基本方針の指示のため必要な基礎調査を行なわなければならない。
(建設基本計画の作成等)
第十条 区域の指定があつたときは、関係都道府県知事は、第六条第三項の規定により指示された当該新産業都市に係る建設基本方針に基づき、当該区域の属する都道府県に新産業都市建設協議会が置かれている場合においては当該新産業都市建設協議会の意見を聴いて、当該新産業都市に係る新産業都市建設基本計画(以下「建設基本計画」という。)を作成し、政令の定めるところにより、国土交通大臣に協議し、その同意を求めなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 国土交通大臣は、前項の建設基本計画が適当なものであると認められるときは、これに同意するものとする。
3 国土交通大臣は、前項の規定により建設基本計画に同意しようとするときは、国土審議会の意見を聴くとともに、総務大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣及び経済産業大臣その他関係行政機関の長に協議しなければならない。
(建設基本計画の内容)
第十一条 建設基本計画には、第一号から第四号までに掲げる事項の大綱及び第五号に掲げる事項について定めるものとする。
一 開発すべき工業の業種及びその規模等に関する工業開発の目標
二 人口の規模及び労働力の需給
三 土地利用
四 次に掲げる施設の整備
  イ 工場用地
  ロ 住宅及び住宅用地
  ハ 工業用水道
  ニ 道路、鉄道、港湾等の輸送施設
  ホ 水道及び下水道
  ヘ 教育施設及び厚生施設
  ト 職業訓練施設
  チ その他政令で定める主要な施設
五 前号に掲げる施設の整備のために必要な経費の概算
(国土審議会の調査審議等)
第十二条 国土審議会は、国土交通大臣の諮問に応じ、新産業都市の建設の促進に関する重要事項について調査審議する。
2 国土審議会は、新産業都市の建設の促進に関する重要事項について、必要があると認めるときは、国土交通大臣又は関係行政機関の長に対し、意見を申し出ることができる。
第十三条から第十五条まで削除
(新産業都市建設協議会)
第十六条 区域の指定があつたときは、当該区域の属する都道府県に、当該新産業都市に係る建設基本計画の作成及びその建設の促進に関する重要事項について調査審議するため、条例で、新産業都市建設協議会(以下「協議会」という。)を置くことができる。
2 協議会は、会長及び委員をもつて組織する。
3 会長は、都道府県知事をもつて充てる。
4 会長は、会務を総理する。会長に事故があるときは、会長があらかじめ指名する委員が、その職務を代理する。
5 委員は、次の各号に掲げる者をもつて充てる。
一 政令で定める国の地方支分部局で当該新産業都市の区域を管轄するものの長又はその指名する職員
二 関係市町村長及び関係港湾管理者の長
三 学識経験のある者のうちから都道府県知事が任命する者
6 前各項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、都道府県の条例で定める。
(施設の整備等)
第十七条 国及び地方公共団体(港務局を含む。以下第二十条において同じ。)は第十条第二項の同意を得た建設基本計画(以下「同意建設基本計画」という。)を達成するために必要な工場用地、住宅及び住宅用地、工業用水道、道路、鉄道、港湾等の輸送施設、水道及び下水道、教育施設及び厚生施設、職業訓練施設その他の施設の整備の促進に努めなければならない。
第十八条 国の行政機関の長、都道府県知事又は港湾管理者は、新産業都市の区域内の土地を、同意建設基本計画を達成するために必要な工場用地、住宅用地、工業用水道、道路、鉄道、港湾等の輸送施設、水道及び下水道、教育施設及び厚生施設並びに職業訓練施設の用に供するため、公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)、農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)その他の法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、新産業都市の建設が促進されるよう配慮するものとする。
(財政上の措置等)
第十九条  国は、新産業都市の建設に資するため必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
(地方債についての配慮)
第二十条 地方公共団体が同意建設基本計画を達成するために行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。
(資金の確保)
第二十一条 国及び地方公共団体は、同意建設基本計画に適合し、新産業都市の建設の促進に寄与すると認められる製造事業、運輸事業等の事業を営む者が、新産業都市の区域内において行う工場、事業場その他の施設の新設若しくは増設又はこれらの施設の用に供する土地の取得若しくは造成に要する経費に充てるために必要な資金の確保に努めなければならない。
(地方税の不均一課税に伴う措置)
第二十二条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第六条の規定により、政令で定める地方公共団体が、新産業都市の区域内において製造の事業の用に供する設備を新設し、又は増設した者について、その事業に係る工場用の建物若しくはその敷地である土地の取得に対する不動産取得税又はその事業に係る機械及び装置若しくはその事業に係る工場用の建物若しくはその敷地である土地に対する固定資産税に係る不均一の課税をした場合において、これらの措置が政令で定める場合に該当するものと認められるときは、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)第十四条の規定による当該地方公共団体の各年度における基準財政収入額は、同条の規定にかかわらず、当該地方公共団体の当該各年度分の減収額(固定資産税に関するこれらの措置による減収額にあつては、これらの措置がなされた最初の年度以降三箇年度におけるものに限る。)のうち総務省令で定めるところにより算定した額を同条の規定による当該地方公共団体の当該各年度(これらの措置が総務省令で定める日以後において行われたときは、当該減収額について当該各年度の翌年度)における基準財政収入額となるべき額から控除した額とする。
(関係市町村の規模の適正化等)
第二十三条 新産業都市の一体的な建設を促進するため、新産業都市の区域の一部をその区域とする市町村(以下「関係市町村」という。)は、市町村合併(関係市町村の廃置分合で市町村の数の減少を伴うものをいう。以下同じ。)によりその規模の適正化並びにその組織及び運営の合理化に資するよう配慮しなければならない。
2 都道府県知事は、関係市町村の廃置分合又は関係市町村とこれに隣接する関係市町村以外の市町村との廃置分合若しくは境界変更の処分をしようとするときは、あらかじめ総務大臣に協議しなければならない。
(人口及び産業の集中防止のための配慮)
第二十四条 国は、人口及び産業の集中の著しい大都市及びその周辺地域への人口及び産業の過度の集中を防止するため必要があるときは、大規模な工場の新設又は増設を制限することについて、特別の配慮をするものとする。
※ 以下の附則等省略


 工業整備特別地域整備促進法  [1964~2001年]
(目的)
第一条 この法律は、工業の立地条件がすぐれており、かつ、工業が比較的開発され、投資効果も高いと認められる地域について、工業の基盤となる施設その他の施設を一層整備することにより、その地域における工業の発展を促進し、もつて国土の均衡ある開発発展及び国民経済の発達に資することを目的とする。
(工業整備特別地域)
第二条 この法律で「工業整備特別地域」とは、次に掲げる地区に係る地域で国土交通大臣が定めるものをいう。
一 鹿島地区
二 東駿河湾地区
三 東三河地区
四 播磨地区
五 備後地区
六 周南地区
2 国土交通大臣は、前項の工業整備特別地域を定めようとするときは、関係県知事及び国土審議会の意見を聴かなければならない。
3 国土交通大臣は、第一項の工業整備特別地域を定めたときは、これを官報で公示しなければならない。
(整備基本計画の作成等)
第三条 関係県知事は、政令で定める国の地方支分部局で当該工業整備特別地域の区域を管轄するものの長及び関係市町村長の意見を聴いて、当該工業整備特別地域に係る工業整備特別地域整備基本計画(以下「整備基本計画」という。)を作成し、国土交通大臣に協議し、その同意を求めなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の整備基本計画は、国土総合開発法(昭和二十五年法律第二百五号)第七条の規定による全国総合開発計画の方針に適合するものでなければならない。
3 国土交通大臣は、第一項の整備基本計画が適当なものであると認められるときは、これに同意するものとする。
4 国土交通大臣は、前項の規定により整備基本計画に同意しようとするときは、国土審議会の意見を聴くとともに、総務大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣及び経済産業大臣その他関係行政機関の長に協議しなければならない。
(整備基本計画の内容)
第四条 整備基本計画には、第一号から第四号までに掲げる事項の大綱及び第五号に掲げる事項について定めるものとする。
一 整備すべき工業の業種及びその規模等に関する工業の整備の目標
二 人口の規模及び労働力特に工業に必要な労働力の需給
三 土地利用
四 次に掲げる施設の整備
  イ 工場用地
  ロ 住宅及び住宅用地
  ハ 工業用水道
  ニ 道路、鉄道、港湾等の輸送施設
  ホ 水道及び下水道
  ヘ その他政令で定める主要な施設
五 前号に掲げる施設の整備のために必要な経費の概算
2 前項の整備基本計画を定めるに当たつては、公害の防止について、適切な考慮がなされるようにしなければならない。
(国土審議会の調査審議等)
第五条 国土審議会は、国土交通大臣の諮問に応じ、工業整備特別地域の整備に関する重要事項について調査審議する。
2 国土審議会は、工業整備特別地域の整備に関する重要事項について、必要があると認めるときは、国土交通大臣又は関係行政機関の長に対し、意見を申し出ることができる。
(施設の整備等)
第六条 国及び地方公共団体(港務局を含む。以下第九条において同じ。)は、第三条第三項の同意を得た整備基本計画(以下「同意整備基本計画」という。)を達成するために必要な工場用地、住宅及び住宅用地、工業用水道、道路、鉄道、港湾等の輸送施設、水道及び下水道その他の施設の整備の促進に努めなければならない。
第七条
 国の行政機関の長、県知事又は港湾管理者は、工業整備特別地域内の土地を、同意整備基本計画を達成するために必要な工場用地、住宅用地、工業用水道、道路、鉄道、港湾等の輸送施設、水道及び下水道その他の施設の用に供するため、公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)、農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)その他の法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、工業整備特別地域の整備が促進されるよう配慮するものとする。
(財政上の措置等)
第八条 国は、工業整備特別地域の整備に資するため必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
(地方債についての配慮)
第九条 地方公共団体が同意整備基本計画を達成するために行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債(港務局の発行する債券を含む。)については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。
(資金の確保)
第十条 国及び地方公共団体は、同意整備基本計画に適合し、工業整備特別地域の整備の促進に寄与すると認められる製造事業、運輸事業等の事業を営む者が、工業整備特別地域内において行う工場、事業場その他の施設の新設若しくは増設又はこれらの施設の用に供する土地の取得若しくは造成に要する経費に充てるために必要な資金の確保に努めなければならない。
(地方税の不均一課税に伴う措置)
第十一条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第六条の規定により、政令で定める地方公共団体が、工業整備特別地域内において製造の事業の用に供する設備を新設し、又は増設した者について、その事業に係る工場用の建物若しくはその敷地である土地の取得に対する不動産取得税又はその事業に係る機械及び装置若しくはその事業に係る工場用の建物若しくはその敷地である土地に対する固定資産税に係る不均一の課税をした場合において、これらの措置が政令で定める場合に該当するものと認められるときは、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)第十四条の規定による当該地方公共団体の各年度における基準財政収入額は、同条の規定にかかわらず、当該地方公共団体の当該各年度分の減収額(固定資産税に関するこれらの措置による減収額にあつては、これらの措置がなされた最初の年度以降三箇年度におけるものに限る。)のうち総務省令で定めるところにより算定した額を同条の規定による当該地方公共団体の当該各年度(これらの措置が総務省令で定める日以後において行なわれたときは、当該減収額について当該各年度の翌年度)における基準財政収入額となるべき額から控除した額とする。
(関係市町村の規模の適正化等)
第十二条  工業整備特別地域の一体的な整備を促進するため、工業整備特別地域の一部をその区域とする市町村(以下「関係市町村」という。)は、市町村合併(関係市町村の廃置分合で市町村の数の減少を伴うものをいう。以下同じ。)によりその規模の適正化並びにその組織及び運営の合理化に資するよう配慮しなければならない。
2 県知事は、関係市町村の廃置分合又は関係市町村とこれに隣接する関係市町村以外の市町村との廃置分合若しくは境界変更の処分をしようとするときは、あらかじめ総務大臣に協議しなければならない。

(国の普通財産の譲渡)
第十三条 国は、同意整備基本計画に基づく事業の用に供するため必要があると認めるときは、その事業の執行に要する費用を負担する地方公共団体に対し、普通財産を譲渡することができる。

※ 以下の附則等省略

 


東駿河湾(静岡県。工業整備特別地域)
静岡県富士市の田子の浦港は1964年に工業整備特別地域「東駿河湾」に指定された。公共事業として堀込式港がつくられ、1968年に総工費130億円をかけて完成した。この岳南地域は江戸時代から製紙業が発達していた。 食品加工・化学・繊維・自動車・電気機械などの大企業が進出した。大半は首都圏で公害企業として、住民の反発が強まっていた企業であった。

富士市は首都圏と名古屋圏の中間にあり、船舶輸送だけではなく、国道、東名高速道路、東海道線(在来線鉄道)、東海道新幹線など、工場の立地点として優れていた。企業経営者は新産業都市よりも、富士市のように立地条件に優れた工業整備特別地域を選んだのであった。
大小の製紙工場の排水に含まれる廃棄物ヘドロにより、田子の浦港は浅くなって大型船の入港が困難になった。また、硫黄の悪臭は市民の生活を不快にした。公害の地方移転の典型とされた。

1970年代、日本各地の公害訴訟では企業側が全面敗訴した。富士市の公害企業も、訴訟による賠償金支払いと操業停止を恐れ、公害対策を急がなくてはならなかった。 
富士1

 

1970年8月には大規模抗議集会が開かれた。地元住民だけでなく全国から沿岸漁業組合など21団体の3000人が参加した。また、ヘドロ公害の原因を作ったとして富士市内の大昭和製紙、興亜工業、大興製紙、本州製紙の4つの製紙会社が告発された。裁判になれば、企業側敗訴は濃厚であった。

静岡県は、国費・県費による公共事業として、公害企業に代わり、田子の浦のヘドロ除去をした。企業は、工場の排煙・排水の浄化を進めた。

 

 

2富士 

 

 

 

 

 

 

1980年までに港湾機能は復活、公害企業は排水浄化に投資を重ね、富士市は改めて工業都市として出直した。

   
 

 



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