地理総合の研究 付2018年センター地理AB本試・追試解説 

「地理講義」の続き。「地理総合」に「2018年センター試験地理AB本試・追試の問題と解答解説」を追加。

7. 日本の養豚業 67%が飼料費  地理総合

2019-01-28 18:46:21 | 地理講義

国内養豚業の推移

昭和35年(1960年)は農業基本法制定の前年であり、米一辺倒の農業から畜産・果実・野菜などへの転換が始まった年である。飼育する豚は2~3頭、養豚業はペットを飼う感覚であった。昭和46年(1971年)に豚肉の輸入が自由化されたが、1970年前後には養豚業から脱落する農家が多く、大規模生産農家への集中が本格化した。平成25年(2013年)には1戸(1業者)が平均1,739頭を飼育する。豚肉の飼育総頭数は平成元年(1989年)に1,000万頭を越えてピークに達し、その後、減少した。

2012(平成24年)の養豚農家4,524戸のうち、2,000頭以上を飼育する農家が963戸(21.3%)である。大規模養豚農家に生産が集中する傾向が続いている。年間養豚総数2,000頭以上の大規模養豚農家が466万7千頭を飼育する。国内総飼育頭数717万6千頭の65%を占める。

日本の養豚業は儲かるか

日本の養豚業では1頭平均31,547円のコストをかけ、31,391円で販売する。赤字である。この赤字であっても、生産コストには家族労働費も含まれるから、家族で働いている限りは、赤字でも経営を続けることはできる。しかし、家族労働費も1時間当たりに換算すれば、コンビニのアルバイト費用よりもはるかに低い。養豚業は儲からないが、土地取得費用や畜舎建築にかけた費用を回収するまではやめられない現実がある。
最もコストのかさむのが飼料費である。豚にはとうもろこし・油かす・こうりゃんなどの輸入農耕飼料を与える。輸送コストや肉質を考慮すれば、残飯による養豚は不可能である。しかし、飼料が飼育コストの67%を占め、飼料が経営を左右することになる。
飼料のコストは経営規模が大きいほど下がる。飼料の原料は100%輸入である。これを豚の成長に合わせて飼料メーカーが配合して養豚農家(養豚業者)に販売する。
飼料の原料輸入価格が上昇すると、養豚業は存続できない。飼料費は大規模養豚場の方が低いから、零細養豚農家は規模拡大をめざしてきた。しかし、飼料の値上がりは養豚業者の努力の及ばないところである。このため飼料値上がりすれば、全日本配合飼料価格畜産安定基金が補填する。補填しきれないほどの大幅値上がりの場合、国と飼料メーカーが補填する。

マクロに見れば、残存輸入制限と飼料価格補填で、日本の養豚業は成り立っている。今後の完全輸入自由化や価格補填撤廃の進行によっては、日本の養豚業は大打撃を受ける恐れがある。農家の所得保障のための農業基本法(1961年)で本格化された養豚業が、現在、存続の危機にある。


 


 


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