重症筋無力症(指定難病11)のページを更新
- 末梢神経 と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が 自己抗体 により破壊される自己免疫疾患です。全身の筋力低下、 易疲労性 が出現し、特に眼瞼下垂、 複視 などの眼の症状をおこしやすいことが特徴です(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型とよんでいます)。 嚥下 が上手く出来なくなる場合もあります。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともあります。
- 【原因】
- 神経筋接合部の筋肉側(信号の受け手)に存在するいくつかの分子に対して自己抗体が産生され、神経から筋肉に信号が伝わらなくなるために筋力低下が起こります。自己抗体の標的として最も頻度の高いのがアセチルコリン受容体で全体の85%程度、次に筋 特異的 受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)で全体の数%と考えられています。残りの数%(全体の10%未満)の患者では、どちらも陽性になりません。自己免疫疾患としての標的分子が約90%の患者で明らかになったことになります。しかし、なぜこのような自己抗体が患者体内で作られてるのかは、いまだによくわかっていません。一方、抗アセチルコリン受容体抗体を持つ患者さんの約75%に胸腺の異常(胸腺過形成、胸 腺腫 )が合併することより、胸腺異常の関与が疑われています。
- 【症状】
- 筋力低下と易疲労性がこの疾患の症状です。この二つの症状は、骨格筋であればどこにでもあらわれるわけですが、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状がおこりやすいことが特徴です。一方、発語や 嚥下障害 などの症状が目立つ患者さんもいますし、四肢筋力低下が強い患者さんもいます。症状が悪化すると、呼吸筋麻痺により呼吸ができなくなることもあり、そのような状態をクリーゼと呼びます。
- 【治療法】
- 対症療法と根治的な 免疫療法 があります。対症療法として使われるのは、コリンエステラーゼ阻害薬といって、神経から筋肉への信号伝達を増強する薬剤です。ただ、これはあくまでも、一時的な対症療法と考えるべきです。治療の基本は免疫療法で、この病気の原因である抗体の産生を抑制したり、取り除く治療になります。抗体の産生を抑制するものには、ステロイド、免疫抑制薬があり、ステロイドは飲み薬としても点滴としても使われています。そのほかには、抗体を取り除く血漿浄化療法、大量の抗体を静脈内投与する免疫グロブリン静注療法、補体C5を特異的に阻害するモノクローナル抗体製剤があり、患者さんの症状や状態に応じて、治療方法が選択されています。これらは、体内の抗体を区別なく除去したり、抗体の作用を 非特異的 に押さえたりする治療で、疾患特異的な治療ではありません。ステロイドを大量に長期間飲み続けると副作用などのために生活の質が落ちてしまいますので、治療初期にはある程度の量を使っても、維持量は少量にとどめることが推奨されています。
<出典:難病情報センター>
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