内分泌代謝内科 備忘録

内分泌代謝内科臨床に関する論文のまとめ

2022/01/03

2022-01-03 09:01:54 | 日記
糖尿病ケトアシドーシスの合併症


9.治療は輸液とインスリン注射.低血糖と電解質異常に注意.小児では脳浮腫にも注意.

・糖尿病ケトアシドーシスの治療については,米国糖尿病学会と英国糖尿病学会がそれぞれにガイドラインを作成・公表している(BMJ 2019; 365: 1114-1128).どちらがより優れているかは分かっていないが,私は英国糖尿病学会のガイドラインhttp://www.diabetologists-abcd.org.uk/JBDS/JBDS_IP_DKA_Adults_Revised.pdfをアレンジして利用している(11. 糖尿病ケトアシドーシスの治療で概略を示す).

・糖尿病ケトアシドーシスの治療に関連する合併症として多いのは,低カリウム血症(高カリウム血症),低血糖,高Cl性代謝性アシドーシスである(Diabet Med 2016: 33: 269-270, J Diabetes Sci Technol 2018; 12: 39-46, Endocr Pract 2019; pmid: 30657360).

・糖尿病ケトアシドーシスの重篤な合併症としては脳浮腫もある(Diabetes Care 1990; 13: 22-33, Neurocrit Care 2005; 2: 55-58).


10.脳浮腫は疑ったら即治療!

・小児の糖尿病ケトアシドーシスにおいて脳浮腫を合併する頻度は 0.7-1.0%である.5歳以下,高度な脱水(BUN高値),診断時低CO2血症は高リスクである(NEJM 2001; 344: 264-269, Diabetes 2014; 15: 271-276).

・HCO3 投与,過剰な輸液,輸液開始1時間以内のインスリン治療も脳浮腫のリスクと関連づけられている(Diabetes 2014; 15: 271-276, Arch Dis Child 2001; 85: 16-22, Diabetologia 2006; 49: 2002-2009).

・脳浮腫は一般に小児で認めるが,28歳までの若い成人での報告もある(Diabetes Care 1990; 13: 22-33, NEJM 2018; 378: 2275-2287).

・脳浮腫は治療開始後12時間以内に起こることがほとんどで, 24時間以降に起こることは稀である(Pediatr Diabetes 2014; 15: 154-179).

・脳浮腫を疑う症状としては,頭痛,嘔吐,徐脈,血圧上昇,呼吸障害(酸素飽和度低下),不穏,不機嫌,興奮,脳神経の障害(特に III, IV, VI)がある(Pediatr Diabetes 2014; 15: 154-179, BMJ 2019; 365: 1114-1128).

・通常,脳浮腫の除外は眼底検査(乳頭浮腫がないことを確認する)によって行う.画像検査(CT, MRI) のために治療が遅れてはならない.

・国際小児糖尿病学会(International Society for Pediatric and Adolescent Diabetes) のガイドラインでは,脳浮腫を疑ったら直ちに治療が開始されなければならないとされている.輸液速度を 1/3 に減速し,
0.5-1.0 g/kgのマンニトールを10-15分かけて投与する.初回投与で反応を認めない場合は,30-120分以内に2回目のマンニトール投与を行う.2回目のマンニトールの投与の代わりに,2.5-5 mL/kg の3%食塩水を10-15分かけて投与しても良いかもしれない.しかし,高張食塩水の投与の安全性については十分な検討はなされていない(Pediatr Diabetes 2014; 15: 154-179).

・脳浮腫治療中は上体を30°に挙上し,注意深く観察する.呼吸障害に備えて挿管の準備を行っておくこと.

・患者の状態が安定したら,脳出血と脳血管塞栓症を除外するために画像検査を検討する.