『プロトレイルランナーに学ぶやり遂げる技術』(鏑木毅 実務教育出版)
私が最もリスペクトしているアスリート鏑木毅氏。新刊が出れば、やはり手にしたくなる。
これが好きな作家の文学作品なら、急がなくても良いのだが、トレイルランニング後進国である日本では、この手の本は数年で陳腐化するおそれがある。
そして、私がまさに今、体力的・年齢的に、ピークとなるであろう数年間を迎えている。
情報戦でも積極的でありたいと思うのである。
と、過大な期待を抱いてしまったが、本書はトレイルランニングにおけるサクセスストーリーを軸にした自己啓発本だった。
トレイルランニング界のレジェンドにして現役のプロトレイルランナー鏑木毅氏。影響力は大きい。人気もかなりのものだろう。
注目するのはファンだけではない。商機と捉える向きも多いに違いない。昨年くらいから、様々なメーカーが商業主義的に氏を担ぎ上げている気がするのだ。
本書は面白く読めたが、既出のエピソードが多く、ネタの尽きかけた状態で書かされているように感じた。
それでも備忘録として抜粋しておきたい部分は少なくなかった。特に私には重要と思えた幾つかを引用しておく。
ストレッチして従来の臨界点を超えるには、二つのやり方があります。
一つは、今日1回トライして「できた」と満足して終わるのではなく、40センチを41センチ、42センチ・・・と無理なく時間をかけて上げていって、その状態が当たり前になるようにする方法です。
もう一つは、「今日は臨界点を超えるんだ」と決めて、一気に引き上げる方法です。(中略)
無理なくストレスを上げるときと、無理してストレスを一気に上げるときの二つのパターンを併用することが大切です。(第1章 本番までにできることはすべてやる)
本番で最高の状態に持っていくためには、高揚感と平常心のあいだを行ったり来たりしながら、精神的な波をうまく乗りこなす必要があります。(第2章 集中力を極限まで高める)
「もう後がない」「ここで自分は死ぬんだ」という強い気持ちがないと、160キロものレースは戦えません。(中略)決して暗くならずに、前向きに死ぬこと。それが限界を超えて最後まで走り抜く力を生み出します。(第2章 集中力を極限まで高める)
練習中も「ここが痛い」「痛みが全然とれない」といつも愚痴を言っているのですが、僕の妻は達観していて、「どうせレースでは泣くような思いをするのだから、別に痛くてもいいじゃない」とよく言われます。それを聞くと「そうだよな」と思えるから不思議です。
だから、レース前に不安なところがあったとしても、「どうせ本番ではボロボロになるし、まあいいか」と考えると割り切れるのです。(第2章 集中力を極限まで高める)
誰かに勝とうとか、そういう余計なことを考えた瞬間、どこかで無理をする自分が出てきます。そこで体力を消耗したり、心が疲れてしまうと、負の影響が出ます。経験的に、相手を意識したときは負けると僕は思っています。(第3章 つねに考えながら走る)
本番に至るまでの準備期間では、あらゆる「欲望」を動員して、モチベーションを高めるようにしています。(中略)自分をかき立てるスイッチをできるだけたくさん持っておく。(第3章 つねに考えながら走る)
最後まで気持ちを切らさずに我慢できた。100%を超えて、110%の力を出し切った。そういう感覚が得られるかどうかが大事です。(第4章 自分の限界を超える)
泣きたくなるような限界状況にぶつかっても、「これがふつうだ」「こんなのへっちゃらだ」と思えるためには、準備段階から限界に近いところまで負荷をかけて、メンタルを鍛えておかなければいけません。(第4章 自分の限界を超える)
意識を失うほど苦しい局面では、「鏑木毅なら、ここは歩かない。走るはずだ」と自分で自分に言い聞かせる。(中略)これは自分へのプライドです。(中略)それは「他人からこう見られたい」という願望であると同時に、「自分はこうでなければならない」という強烈な自意識です。(第4章 自分の限界を超える)
メンタルの場合、練習で鍛えられる部分はごく一部で、どれだけ厳しいレースを経験してきたか、本番の場数が決定的に物を言うということです。(中略)心を鍛えるには、真剣勝負の場が必要です。修羅場をくぐることでしか、自分の心をバージョンアップさせることはできません。(第5章 結果を次につなげる)
眠さをこらえて残業して、仕事が終わってから深夜に階段の昇り降りで身体を追い込んでいるのは、UTMB のトレーニングとして最適なのではないかと、自分の都合のいいように解釈したわけです。(第5章 結果を次につなげる)
悔しさからプラスのエネルギーだけを取り出して、自分の中にギューッと圧縮して溜め込んでおく。特定の誰かとは切り離して、悔しかったという思いだけを忘れずに覚えておく。(第5章 結果を次につなげる)
私が最もリスペクトしているアスリート鏑木毅氏。新刊が出れば、やはり手にしたくなる。
これが好きな作家の文学作品なら、急がなくても良いのだが、トレイルランニング後進国である日本では、この手の本は数年で陳腐化するおそれがある。
そして、私がまさに今、体力的・年齢的に、ピークとなるであろう数年間を迎えている。
情報戦でも積極的でありたいと思うのである。
と、過大な期待を抱いてしまったが、本書はトレイルランニングにおけるサクセスストーリーを軸にした自己啓発本だった。
トレイルランニング界のレジェンドにして現役のプロトレイルランナー鏑木毅氏。影響力は大きい。人気もかなりのものだろう。
注目するのはファンだけではない。商機と捉える向きも多いに違いない。昨年くらいから、様々なメーカーが商業主義的に氏を担ぎ上げている気がするのだ。
本書は面白く読めたが、既出のエピソードが多く、ネタの尽きかけた状態で書かされているように感じた。
それでも備忘録として抜粋しておきたい部分は少なくなかった。特に私には重要と思えた幾つかを引用しておく。
ストレッチして従来の臨界点を超えるには、二つのやり方があります。
一つは、今日1回トライして「できた」と満足して終わるのではなく、40センチを41センチ、42センチ・・・と無理なく時間をかけて上げていって、その状態が当たり前になるようにする方法です。
もう一つは、「今日は臨界点を超えるんだ」と決めて、一気に引き上げる方法です。(中略)
無理なくストレスを上げるときと、無理してストレスを一気に上げるときの二つのパターンを併用することが大切です。(第1章 本番までにできることはすべてやる)
本番で最高の状態に持っていくためには、高揚感と平常心のあいだを行ったり来たりしながら、精神的な波をうまく乗りこなす必要があります。(第2章 集中力を極限まで高める)
「もう後がない」「ここで自分は死ぬんだ」という強い気持ちがないと、160キロものレースは戦えません。(中略)決して暗くならずに、前向きに死ぬこと。それが限界を超えて最後まで走り抜く力を生み出します。(第2章 集中力を極限まで高める)
練習中も「ここが痛い」「痛みが全然とれない」といつも愚痴を言っているのですが、僕の妻は達観していて、「どうせレースでは泣くような思いをするのだから、別に痛くてもいいじゃない」とよく言われます。それを聞くと「そうだよな」と思えるから不思議です。
だから、レース前に不安なところがあったとしても、「どうせ本番ではボロボロになるし、まあいいか」と考えると割り切れるのです。(第2章 集中力を極限まで高める)
誰かに勝とうとか、そういう余計なことを考えた瞬間、どこかで無理をする自分が出てきます。そこで体力を消耗したり、心が疲れてしまうと、負の影響が出ます。経験的に、相手を意識したときは負けると僕は思っています。(第3章 つねに考えながら走る)
本番に至るまでの準備期間では、あらゆる「欲望」を動員して、モチベーションを高めるようにしています。(中略)自分をかき立てるスイッチをできるだけたくさん持っておく。(第3章 つねに考えながら走る)
最後まで気持ちを切らさずに我慢できた。100%を超えて、110%の力を出し切った。そういう感覚が得られるかどうかが大事です。(第4章 自分の限界を超える)
泣きたくなるような限界状況にぶつかっても、「これがふつうだ」「こんなのへっちゃらだ」と思えるためには、準備段階から限界に近いところまで負荷をかけて、メンタルを鍛えておかなければいけません。(第4章 自分の限界を超える)
意識を失うほど苦しい局面では、「鏑木毅なら、ここは歩かない。走るはずだ」と自分で自分に言い聞かせる。(中略)これは自分へのプライドです。(中略)それは「他人からこう見られたい」という願望であると同時に、「自分はこうでなければならない」という強烈な自意識です。(第4章 自分の限界を超える)
メンタルの場合、練習で鍛えられる部分はごく一部で、どれだけ厳しいレースを経験してきたか、本番の場数が決定的に物を言うということです。(中略)心を鍛えるには、真剣勝負の場が必要です。修羅場をくぐることでしか、自分の心をバージョンアップさせることはできません。(第5章 結果を次につなげる)
眠さをこらえて残業して、仕事が終わってから深夜に階段の昇り降りで身体を追い込んでいるのは、UTMB のトレーニングとして最適なのではないかと、自分の都合のいいように解釈したわけです。(第5章 結果を次につなげる)
悔しさからプラスのエネルギーだけを取り出して、自分の中にギューッと圧縮して溜め込んでおく。特定の誰かとは切り離して、悔しかったという思いだけを忘れずに覚えておく。(第5章 結果を次につなげる)