『悲しき南回帰線』の下巻を探すため講談社学術文庫の棚を見ていて目についた。まったく予定外だったが、興味を持った。ウェーバーが社会主義をどのように批判するのか。しかもWWⅠ末期、オーストリア将校団を前にした講演である。純粋に面白そうだと感じたし、対象が軍人だから、噛み砕いて語られているはずで、その点にも期待した(読書不足ないまは“学術的”なものに免疫を失っているから)。
ウェーバーの著作は長らく食わず嫌いで手が出なかった。そんな私には最適な、ウェーバーとの出会いだったと思う。
全編に漂うのは、心情左翼的な、割り切れなさである。これを称して解説者は“心情倫理”的に社会主義にシンパシーを感じていたウェーバーは、“責任倫理”の上でそれに反対を唱えたと云う。割り切れなさが匂う所以であろう。
しかし社会主義が官僚制を強化し云々という主張に反対はせぬとしても、その言わんとするのは『社会主義』批判というより『ドイツ社会民主党』批判である。これをしてすべての“革命”を否認するのは早計であろう。
サンディカリズムを警戒して将校団に講演する時代の緊迫感、それは社会科学の書としてよりは、ひとつの歴史として面白いと感じた。
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