米軍、中でも第82空挺師団について調べる機会があり、参考になるかと思って本書も手にした。日本人将校が米軍にいるというだけで注目されるだろうから、一時的なトピックとして出版されたものとみて、あまり期待はしなかったが。
しかし、のっけから私はこの本を読み進めることに抵抗を感じてしまった。
私は少年の時に、シルベスター・スタローン主演のアクション映画「ランボー」を観てからアメリカに、そして米軍にとてつもないあこがれを抱くようになっていた。
そして自衛隊ではなく米軍を選ぶ理由を訊かれ、以下のように説明する。
少年時代に観た映画「ランボー」に強烈な印象を受けたこと、湾岸戦争の時に金だけ払って、何もしなかった日本と違って、軍隊を送り無法者のイラク軍を駆逐し、クウェート再建に貢献したアメリカ合衆国を支持していること、自分も米軍の一員となって世界のために、民主主義のために何かをしたいことなどを説明した。
共和党を支持し、ろくに本や新聞も読まない、米国のブルーカラー層の戯言を聞いているようだ。
憲法九条を尊び、非武装中立を是とする者を、著者は「バカ」と呼ぶ。引用したようなお題目を信じて星条旗に鳥肌を立てている自分は賢いとでも思っているのか。
英語力を身に着けるため日本の高校を中退しオーストラリアの高校を卒業、渡米して米国の大学で予備士官訓練を修了・・・その行動力と努力には驚くが、私の驚きは、努力を支える芯にあるものが、あまりに稚拙であるということだ。人は映画のヒーローに憧れたくらいで、そのようになれてしまうのか。人を殺せてしまうのか。
危惧していたとおり、空挺師団についての知識はほとんど得られず、資料的にも価値のない読書となってしまった。しかも、書かれているのは兵隊、下士官時代の話で、標題にある少尉に任官してからのエピソードはほとんど書かれていない。それも残念だった。
