中国は湾岸戦争における多国籍軍(特に米軍)の戦い方に衝撃を受け、以来、情報化に力を入れ、軍の近代化に注力してきたと言われる。
そういうことは、さまざまな媒体で言われているのだが、実際に湾岸戦争後にそれを研究し新たな戦争を論じたものとして、本書をようやく手にする機会を得た。中国の台頭で再び脚光を浴び、新書で再販されていたのである。
読み終えて、まず思うのは、もう中国に勝てる国は、少なくとも当分ないだろうということだ。アメリカも、今世紀中庸には追いつかれてしまうし、インドが中国に居並ぶのは、まだまだ先のことに思える。
なにもGDP云々でそう思うのではない。私を圧倒するのは、ここで論及する彼らの知識と、知識を涵養してきた中国4000年の歴史である。彼らは長い歴史から教訓を学ぶとともに、19世紀以来の屈辱を忘れはしない。
もうひとつ感じたのは、“超限戦”という言葉が独り歩きしているのではないか、ということだ。“超限戦”という中国独自の非道な戦い方があるようなイメージを持っている人がいそうだが、これはさまざまな限定や限界の障壁を取り払って、勝利に必要なものはすべて採用し、組み合わせ、戦う。といった概念的なものである。
つまり、21世紀の戦争はマキャベリズムそのものであるということであり、彼らはテロの戦術が国家の戦略にさえ影響を与えることを示唆し、911を予言したとして注目された。
マキャベリズムといえば、日本の政治や軍事が最も欠いている考え方のような気がする。日本は、かつてのタイ王国がそうであったように、外交でもって、生き残る術を探求するしかないのではないかと思う。
中国は、冷徹なマキャベリズムのみならず、子の代、孫の代までかかっても山を掘り崩すという執拗さ、悠長さも持っている。持久戦が苦手な日本に勝ち目はなかろう。
