子供が百人一首に熱中し、小学校で古典をさわりだけ習って帰り、「源氏物語」を読みたいと言うので買い与えたものである。
もうちょっと厚みのあり、読み応えの期待できそうな現代語訳もたくさんあるが、受験を控えていたので、手軽に読めそうな本書を選んだ。
子供はあっという間に読み終え、「面白かった」と言う。
どう「面白かった」のか追体験したく、また手軽に『源氏物語』の概要を知ることもできそうなので、私も読むことにした。
粗筋や、当時の世相を知るには良い参考書だと思った。
ただ、これをもって世界最古の長編小説だと早とちりしてはまずいと感じた。平易な文章で説明するだけだから、何らの詩的感動もないし、風雅の香りもない。光源氏が何をした誰と恋をした等と、足早に出来事のみを説明し続けていくので、ややもすれば単なるプレボーイの生涯を淡々と紹介したのみの印象すら受ける。
おそらく、そのときどきに描かれる心理の綾が、和歌のやり取りなどによって文学として昇華されるのだろうから、やはり原文で読むべきなのだと思った。
子どもが、古典をしっかり読めるようになることを期待しよう。私は高校1年の時、助動詞を暗記するための替え歌をテストされるのが嫌で嫌でたまらなく、反抗心もあって古典を捨てたのだった。こんな恥ずかしい歌を歌うくらいならば、助動詞なんぞ知らずとも良い!と。苦悩を忍んで利益を取るという大人の対応ができない人間だったのである。
世界に誇る平安時代の文学を読めぬのは残念だが。
