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少し古い統計になるが、2017年の世界の映画製作本数は9,618本で、5,559本だった2005年と比較してほぼ毎年本数を増やしている。世界一の映画大国であるインドの本数の伸びが大きく全体を牽引している。

世界事典 - 映画製作本数ランキング
https://theworldict.com/rankings/produced-movies/

これだけ本数が増えると、映画評論家の方々は観るだけで多くの時間が割かれてしまい大変だと思う。さらに長くてつまらない映画というのは評論家の方にとっては苦痛になるのではないだろうか。
ということで上映時間の長い映画を紹介していく。

2023年4月時点で世界最長の映画は、スウェーデンのエリカ・マグヌッソン (Erika Magnusson) とダニエル・アンダーソン (Daniel Andersson) による 「Logistics」 (2012) という映画で、上映時間は51,420分に及ぶ。これは約36日 (857時間) に相当する。

Logistics (film) 
https://en.wikipedia.org/wiki/Logistics_(film)

(翻訳)
2008年、エリカ・マグヌッソンとダニエル・アンダーソンは、現代の電子機器がどこから来たのかを自問自答しました。そこで、歩数計の生産サイクルを逆時系列で追いかけ、最終的な販売からその起源と製造まで遡っていくことを思いつきました。旅のルートは、ストックホルムから始まり、インシェーン、ヨーテボリ、ブレーマーハーフェン、ロッテルダム、アルヘシラス、マラガを経て、深センの宝安の製造元で終了しました。
このプロジェクトは、製品を購入したストックホルムの店舗から製造された中国の工場までの製造ルートを追いながら、工場への移動中や工場でのロケをリアルタイムで撮影しました。
51,420分の本作は、2012年12月1日から2013年1月6日までウプサラ市立図書館、ストックホルムのThe House of Cultureで上映され、2014年のFringe Film Festival Shenzhenで世界初公開、ネット配信されました。

Logistics Art Project
https://logisticsartproject.com/

 

72分に短縮されたバージョンがYouTubeにあるので、これを倍速かつ飛ばし飛ばしでの鑑賞がちょうどよさそうだ。

同じくスウェーデンから、アンデシュ・ヴェドベリ (Anders Weberg) による 「Ambiancé」 も720時間というとんでもない長い映画の予定だったが、公開はされなかった。

Ambiancé
https://en.wikipedia.org/wiki/Ambianc%C3%A9

(翻訳)
この映画の上映時間は720時間と予想され、当初は2020年12月31日に公開予定だった。この映画の最初の上映が完了すると、ヴェドベリは映画全体の唯一存在するコピーを破棄し、これは「存在しない映画で最も長いもの」と語った。 また彼はこれを最後の映画と明かしたことがある。
ヴェドベリは古い名画の再創造に対する抗議としてAmbiancéを制作したと述べている。
2016年の時点で、ヴェドベリは400時間の映像を完成させたと主張しており、公開日までに映画を完成させるためには、毎週7〜8時間の生映像を撮影しなければならないと述べていた。ヴェドベリは本作の予告編を2本公開しており、その1本目は2014年に公開され72分の長さである。2016年に公開した2本目の予告編は439分で、ノーカットのシングル・テイクで構成されている。彼は2018年に72時間の予告編を公開すると述べていたが、実現することはなかった。
Ambiancéは2020年12月31日に上映される予定であったが、これは実現しなかった。
2021年1月3日、ヴェドベリは自身のTwitterと映画の公式サイトに「C'est fini」(フランス語で「完成した」という意味)というフレーズを投稿した。このフレーズは、Ambiancéを完成させた後に監督を辞めたウェーバーグに関連して、映画の予告編の説明で使われていた。ウェーバーグ自身のウェブサイトでは、この映画をフィルモグラフィーに掲載しており、上映時間は43,200分、合計するとちょうど30日であるとしている。

ということで本作品は"未遂"に終わった感じだが、この2本目の予告編がYouTubeにある。少しだけ雰囲気を確認すれば充分だろう。

この2作品は監督であっても繰り返し観るということはないのではないだろうか。

さて上記2作品は実験映画 (experimental films) であり、顧客を対象にしたものというよりは、一部分だけが見られることが想定されている。
通常の映画 (cinematic films) の中で最長の映画は、バングラデシュのアシュラフ・シシル (Ashraf Shishir) による 「Amra Ekta Cinema Banabo」 (2019) という映画で、上映時間は1,265分で約21時間だ。

Amra Ekta Cinema Banabo
https://en.wikipedia.org/wiki/Amra_Ekta_Cinema_Banabo

(翻訳)
Amra Ekta Cinema Banabo (訳 We will make a film、副題The Innocence) は2019年5月16日に検閲委員会の前で上映され、5月19日にバングラデシュ映画検閲委員会から検閲証明書を受け取った。 バングラデシュ映画アーカイブにアーカイブされている。 2019年12月20日にバングラデシュでリリースされた。
この映画は、愛、夢、政治、革命、バングラデシュ解放戦争の余波に基づいており、欺瞞に満ちた展開、地域性のねじれ、人々の闘争と願望が特徴である。
2009年1月、パブナ県イシュワルディ・ウパジラのループール村にて主要撮影が開始された。全編はパドマ川とハーディンゲ橋を囲むイシュワルディと隣接する村で撮影された。撮影は9年間以上にわたり、4,000人のアーティストが参加した。

これも予告編 (4分) がYouTubeにある。セリフにOzu (小津安二郎) やKurosawa (黒澤明) の名前が出てくるのは誇らしい。

監督のアシュラフ・シシルは1983年生まれの映画監督・脚本家だ。2014年に監督したGariwalaは22カ国・65の国際映画祭で上映され、24の国際賞を獲得している。バングラデシュ国立映画賞も受賞しているが、最優秀短編映画賞というのが興味深い。次は世界最長映画を狙ったのだろうか。

これらの最長映画は現時点のもので、やろうと思えばいくらでも長い映画をつくることは可能だ。しかしSNSで短い動画が視聴され、かつ倍速で再生される時代に長い映画は敬遠されるだろう。
重要なのは映画としての面白さであり、時間を忘れるような作品であれば歓迎 (ただし限度あり) だ。

 



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