やおい的読書記録

BL好き女が書いているごく個人的な感想文です
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82年生まれ、キム・ジヨン 感想

2019-11-03 16:21:00 | 読書
三ヶ月前くらいに買っていたんですけど、昨日ようやく読み終わりました。
もともとは絶賛放置中のツイッターで話題になってたのが読むきっかけです。書店の店頭で平積みされているのも知っていたし。
先に手に入れていたフォロワーさんが、疲れているときに読みたくないと仰っていて、読み進めていてもメンタルがやられるという感想も、わたしの周囲では聞かれた本でした。
ツイッターのフォロー関係がフェミニズム関連の話題に敏感な人が多くて、そういう反応が多かったんだとは思いますが。
そのような声を事前に聞いていたので、めっちゃ怖いなと思いながらページをめくっていきました。

実際は、主人公や周りの女性が、暴力の被害を受けるというような、具体的な描写はなかったので、少しだけホッとしたんだけど。
むしろ、直接に暴力を加えられるというより、周囲の言葉や態度が主人公を傷つけるといった描写が多くて、それにじわじわHPを削られたなという読後感でした……。

例えば、主人公のキム・ジヨン氏が幼い頃のエピソードで、長男である弟が家庭内で何かにつけ優遇されたというものがあったり、
小学校で男子に意地悪されたのを、あいつはお前のことが好きなんだから許して仲良くしてやりなさいと担任に言われたりとか。
日本にも家制度の名残はありますが、儒教の影響が強い韓国のほうが長男信仰は強いんだなと思いつつ、
しかし学校での出来事なんかは、私たちにも覚えのあるような出来事で、それが共感のもとになりつつ、
私たちはこんな幼い頃から理不尽な出来事にさらされてきたのかという絶望的な認識に至ったりもしますね。

成長して大学受験を迎えた主人公が、予備校が同じ男子に帰り道で付け回されて、父親に助けを求めたら、そのあと逆に説教された……ってエピソードが、個人的には一番理不尽さを感じました。ちゃんと世の中の人を見分けろとか無茶ぶりにも程があるぜ!!!
なんか、勘違いさせる女のほうが悪いとかよく言いますけど、その辺の男の人に人として当たり前レベルで愛想よくしてたら盛大に勘違いされてストーキングされるとか、何か前世で悪いことしたとでもいうのだろうか?????? それとも塩対応したらいいの?でもそうしたら女は愛嬌だとかまた言われるんでしょ??????どないせえっちゅうねん!!!!!!

この辺でわたしの怒りが頂点に達したので読むの一旦休んだんだけど、主人公の母がかなりパワフルな人であるところに救われた。商才を発揮したり資産運用なんかで、経済的に困らないようにしてくれてちゃんと主人公たちを進学させてくれんだよな……主人公をめちゃくちゃ激励してくれたりとか。
おかげでまた読み進める元気が出たけど、また結婚して妊娠して出産するあたりも精神力をガリガリと削られるエピソードで……。
しかも、女性が生きてたら一度や二度くらい出会ってるだろうエピソードばっかりってのがこの作品の共感を強めるポイントで、かつ、その傷つきエピソードは女性差別が根源的問題なんだ!と言語化してくれて目を覚まさせてくれるところがこの作品のすごいところですよね……。
男女の分断を助長するとかいう声も聞こえますけど、いやいや今まで可視化されてなくて共有もされてなかった問題が公に議論され始めただけだよね…今まで女性たちがモヤモヤしたり深く傷ついたりしても我慢してきた話が明るみに出始めただけだよね…という感想を持ちました。

わたしはBLが好きですけど、なんでBLにハマるかといえば、それこそこの作品で語られるような男女の不平等とか、自分が女性であることについて回る諸問題とかを、BLというファンタジーの中なら忘れられるという側面があるんですよね。純粋な愛がBLにはあるかもしれない……!!!という夢を見てしまう。その前にまあ単純に萌えるんですけど。

今現在『私たちにはことばが必要だ』も途中まで読んでいるので、それもまた書けたら感想を書きたいです。

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